何偉明の日本見聞録ブログ
上海生まれ。2000年に来日。2005年に1級建築士の資格を取得。同年、横浜にデザイン事務所を設立いたしました。趣味は陶芸や日本伝統建築物見物。当ブログでは、日本での日常生活や文化体験などを2か国語でお届けいたします。
No.520 五重の塔の秘密
2013年4月6日(土)奈良旅行①
先週、法隆寺の五重の塔を見てきた。何偉明の日本見聞録ブログ
上海生まれ。2000年に来日。2005年に1級建築士の資格を取得。同年、横浜にデザイン事務所を設立いたしました。趣味は陶芸や日本伝統建築物見物。当ブログでは、日本での日常生活や文化体験などを2か国語でお届けいたします。
No.520 五重の塔の秘密
中国にいたころから、日本の古い建物に興味があったが、日本の五重の塔の不思議な構造を知ってからというもの、いつか法隆寺を訪れて実物を見てみたいと思っていた。法隆寺は、7世紀に建てられた世界最古の木造建築として有名だ。年に、日本で初めて世界文化遺産に登録されている。五重の塔は、法隆寺西院の中門を入って、すぐ左側にあり、これもまた世界最古の木造塔だ。高さは32.55mある。その昔、境内に入ることができない庶民が、離れた場所からでも参拝できるように、このような高さに設計されたそうだ。当時としては、さながら現代の超高層ビルといったところだったのだろう。
実は、地震の多い日本で、歴史上、五重の塔や三重の塔が倒れたという記録はほとんどない。調べてみると、日本の五重の塔は、特殊な構造をしていることが分かった。五重の塔が倒れない秘密は、どうやらこのことに関連しているらしい。
その秘密はこうだ。
外観から見ると、五重の塔は一見5階建てに見える。しかし、実際は5つの建物を下から1つずつ重ね上げた構造になっている。ちょうど「おわん」をひっくり返して、5つ積み重ねたようなイメージだ。建物には、普通の建築にある柱は見られず、ただ1本の心柱が上から下まで通っているだけだ。わたしは、初め当然これが建物全体を支えていると思っていた。だが、そうではなかった。なんとも信じがたい話だが、心柱は5つの層どれとも結合しておらず、心柱と各層の構造の組み立て部分には、すき間さえ空いているというのだ。
では、五重の塔はどのように組み立てられているのか。実は柱や梁、軸部は、ほとんど釘を使わず、凸状の突起が凹状の穴に差し込まれている。しかも、接合部分には心柱同様、わずかなすき聞が空いている。
五重の塔全体にはこのような接合部分が1,000か所ほどあり、地震の際、このすき間と木が持つ独特のしなりが、地震のエネルギーを軽減する役割を果たしている。また、それだけでなく、5つの層が重なっていることで、地震のエネルギーが下から上へ伝わりにくく、建物がゆっくり揺れるような仕組みになっている。もっとも、大きな地震が起きれば、バランスを崩して塔全体が倒壊するおそれがある。しかし、心配は無用だ。大きな揺れで飛び出しそうになる各層が、心柱に当たることによって押し戻され、塔が一方に倒れないようになっているのだ。
法隆寺の五重の塔にはまだまだ解明されていない謎が多い。ただ今回、五重の塔を間近に見ることで、日本建築のすばらしさと奥深さを再確認した。このプログを通して、大勢の人に、伝統文化や伝統技術のすばらしさを伝えていきたいと思う。なぜなら伝統技術は後世に継承してこそ意味があるからだ。小さな活動かもしれないが、このようにして、先人たちの知恵や技術が受け継がれることを祈っている。
この記事へのコメント
1.Huameiさんより 2013年4月8日 22:07
何偉明さん、こんばんは!「五重の塔の秘密」読みました。1300年以上も昔に、こんな合理的な建築物があったなんて驚きました。わたしもいつか見に行きたいです。
2.何偉明さんより 2013年4月9日 17:54
>Huameiさん、お久しぶりです。日本は、地震が多い国だから、このような技術が発達してきたんですね。現代においても、日本では建物を設計する段階から、「耐震基準」が設けられていて、建物が倒壊しないように、さまざまな装置が開発されているんですよ。
3.Taroさんより 2013年4月12日 15:15
昔の技術と思いきや、なんと東京スカイツリーにも応用して使われている技術らしいですね。こうやって、後世に受け継いでいきたいものです。
新出語彙2
うまれ(生まれ) [名] 出生
けんちくし(建築士) [名] 建筑师
ブログ [名] 博客
かいめい(何偉明) [专] 何伟明
けんぶんろく(見聞録) [名] 见闻录
けんぶん(見聞) [名·サ变他] 见闻
せかいぶんかいさん(世界文化遺産) [名] 世界文化遗产
さいいん(西院) [专] (法隆寺)西院
ちゅうもん(中門) [名] 中门
とう(塔) [名] 塔
けいだい(境内) [名] (神社、庙宇的)院内、院落
しょみん(庶民) [名] 平民、庶民
さんはいする(参拝~) [名·サ变自] 参拜
さながら [副] 相当于、宛如、如同
さんじゅうのとう(三重の塔) [名] 三重塔
どうやら [副] 多半、大概
がいかん(外観) [名] 外观
いっけん(一見) [副] 乍一看、相看
ひっくりかえす(ひっくり返す) [动1自] 倒扣、翻过来;弄倒、推翻
つみかさねる(積み重ねる) [动2他] 累积起来、摞起来
しんばしら(心柱) [名] 中心柱
だが [连] 可是、但是
そう(属) [名] 屋、屠虫
けつごうする(結合~) [名·サ变自他] 结合
くみたて(組み立て) [名] 结合、构成、结构
ぶぶん(部分) [名] 部分
すきま(すき間) [名] 缝隙
はり(梁) [名] 梁
じく(軸) [名] 轴
くぎ(釘) [名] 钉子
とつ(凸) [名] 凸
とっき(突起) [名·サ变自] 突起、隆起
おう(凹) [名] 凹
さしこむ(差し込む) [动1他自] 插入、扎进、绞痛
せつごう(接合) [名·サ变他] 接合、连接
しなり [名] 柔韧性
けいげんする(軽減~) [名·サ变自他] 减轻
かさなる(重なる) [动1自] 重叠
ゆれる(揺れる) [动2自] 揺晃、揺摆
むよう(無用) [名·形2] 没必要、无需
おしもどす(押し戻す) [动1他] 推回去
なぞ(謎) [名] 谜
ただ [连] 但是、可是
まぢか(間近) [名形2] 临近、接近、眼前
なぜなら [连] 因为、原因是
こうせい(後世) [名] 后代、后世、将来
けいしょうする(継承~) [名·サ变他] 继承
せんじん(先人) [名] 前人、先辈
ちえ(知恵) [名] 智慧
だんかい(段階) [名] 阶段、步骤
きじゅん(基準) [名] 基准
おうようする(応用~) [名·サ变他] 应用、运用
こんばんは 晚上好
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