夢の中で私は、大学を卒業できるか焦っている。1年留年した5年生の冬。難しい科目なのに試験の準備をしないまま眠ってしまい、夜中に目が覚めて、途方に暮れている。これでは卒業できない、決まったはずの就職もダメになる――と。
私の就職活動は20年以上前、「未曾有」の今と比べるべくもないが、プラザ合意後の円高不況で「焼け跡のクギを拾う」厳しさと言われた。就職先を決めていく友人の話に焦り、応募した会社からの電話をアパートで一人待っていると、自分だけが社会から取り残されていくような不安に襲われた。
だが、今更見た悪夢は、その春、社会のスタートラインに立った期待と不安、やる気にあふれた自分も思い出させてくれた。
今回の不況で、内定を取り消された学生は先月までに1215人と急上昇。理不尽な企業の仕打ちは「未曾有」「100年に1度」で片づけられない。増え続ける数字の後ろにある、若者たちの眠れぬ夜を思う。
(松本正「悪夢ではすまない」2009年02月07日付け毎日新聞「憂楽帳」による)
1、「焼け跡のクギを拾う」厳しさとは何を意味するか、最も適当なものを一つ選びなさい。
①①円でも節約しなければならない厳しさ。
②火事が起こった後、なにも残っていない厳しさ。
③景気が悪くて誰もが自分のことばかり考える厳しさ。
④景気回復の予想がつかない厳しさ。
2、「理不尽な企業の仕打ち」とは何を意味するのか。
①入社してもいないのに仕事をさせる企業の不当な行為。
②入社しても給料を払わない企業の不当な行為。
③採用しておきながら、入社を取り消す企業の不当な行為。
④採用しておきながら、入社を延期する企業の不当な行為。
3、次のうち、筆者の考えに最も近いものを一つ選びなさい。
①内定を取り消された学生がかなりいるが、未曾有の不況の中だから仕方がない。
②内定を取り消された学生に対して、企業側は責任を感じるべきだ。
③プラザ合意後の円高不況も乗り越えたのだから、今回の不況も何とか克服できるだろう。
④今回の不況は、プラザ合意後の円高不況とは比べものにならないほど深刻なので、若者たちの就職が心配でならない。