このような事情は、ヒトにおいてより一層顕著に認められる。ヒトは他の類人猿と比べて生まれつきの行動の仕組みが少ない。このために、チンパンジーの子供とヒトの子供とを双生児のように育ててみると、初めの数ヶ月間は、むしろヒトの子供のほうが知的にも劣っているという印象を与えるほどなのである。( ウ )
更にヒトの場合には、それぞれの個体が自らの直接の経験に基づいて知識を集積するばかりでなく、他の個体の経験を言語などを媒介にして利用することもできる。つまり、学習が社会的な性格を持つに至っている。ヒトの個体の生存や種族維持は、それぞれの個体ごとの経験に基づく知識にばかりでなく、文化という形で集積された他の個体の経験を摂取しうることにも依存している、とさえ言ってもよいであろう。( エ )
1、「こうして集積された知識がなければ、ヒトはいかにも無力な動物なのである」という一文は、ア~エのどこに入るか。
①ア
②イ
③ウ
④エ
2、「学習が社会的な性格を持つに至っている」とあるが、それはどのようなことか。
①自ら経験した様々な出来事を、記憶にとどめておくこと。
②いろいろなものを、便利な道具として生活に利用できること。
③自らの生命ばかりでなく、他人の生命も大切にすること。
④他人の得たいろいろな経験を、自らのものにできること。
3、「ヒト」と「サル」の仲間について、正しく述べているものはどれか。
①「ヒト」と「サル」の仲間も外界についての知識を身につけねば生きていけない。
②「ヒト」と「サル」の仲間の方が生まれつきの身体能力が勝っている。
③「ヒト」と「サル」の仲間の方が生まれつきの知的能力が勝っている。
④「サル」の仲間は「ヒト」と違って言語を使ったコミュニケーションはできない。