例えば、先住民族の資源主権、文化や伝統を守る権利を求める運動がそうである。これらの民族自治を認める闘いは、経済的利害というより、各民族の伝統的な共同社会と尊厳の防衛を目的としており、「民族のアイデンティティーのための闘い」とも言うべきである。グローバル化とは、発展途上国の諸民族から見れば「派兵なき侵略」であり、その反発が民族意識の覚醒をもたらしているのである。イスラム原理主義はその代表であろう。したがって、民族紛争とは「文明の衝突」という色彩が極めて強いと考える。
(B)グローバル化以前から民族紛争は存在した。例えばバレスチナ問題である。「パレスチナ人」という民族概念も、ユダヤ人国家イスラエル誕生で土地を追われ、難民となった人々の共通の運命をてこに形成されたのであり、それ以前のバレスチナでは多数派であるイスラム教徒と、少数派であるキリスト教徒やユダヤ教徒が、宗教や民族の違いにかかわらず、共存して暮らしていたのである。宗教や文化の違いが民族紛争を生んだのであはない。
昨今、世界で反発している民族紛争についてみても、市場経済のグローバル化が、市場競争力のない途上国の農業や現地産業を崩壊させ、「貧富の差」を拡大していることから起こっており、単に言語、文化の差異、あるいは「キリスト教」対「イスラム教」といった宗教の違いから起こっているfのではない。
1、АとBは何について論じているのか。
①グローバル化の功罪
②民族のアイデンティティー
③民族紛争の原因
④文明の衝突
2、Aは「グローバル化」について、どのように考えているか。
①ヒト・モノ・カネや情報が国際的に移動すること
②国や民族の違いが解消され、人類共同体へと向かうこと
③市場経済と欧米の価値観の世界化が進むこと
④政治的・経済的・文化的に世界の一体化が進むこと
3、AとBの意見について、正しく述べているのはどれか。
①AもBも、民族紛争とグローバル化は無関係だと考えている。
②AもBも、人々は文化や宗教の違いがあっても共存できると考えている。
③AもBも、民族紛争に「文明の衝突」という側面があることを認めている。
④Aは「文明の衝突」を、Bは「貧富の差の拡大」を民族紛争の主因と考えている。