2003 2級 読解、文法
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1,2,3,4から最も
適当なものを一つ選びなさい。
子どもを持ったことのある人なら、三歳の子どもが電話に興味を持つことをご存じだと思う。会話がとてもおもしろい時期である。話しかければ返事をしてくれる電話に夢中にならないはずがない。言葉の発達と共に、うちの電話機は子どものおもちゃとなっていった。
初めのうちは、ジジババからの電話の途中で少し話をして喜んでいるだけであったが、
(注1)
そのうち掛かってくる電話にも出たがるようになった。(中略)
①
次に彼は、番号を押して自分で電話を掛けることに興味を覚えたようである。ジジババの家と、うちの子と話をするのを楽しみにしてくれる叔母にかぎって掛けさせることにして、この二軒の電話番号を#01と#02の短縮番号にしてあげた。彼はほとんど毎日
(注2)
どちらかに電話をした。
②
「ぼくのなまえはあおきいくまです」「四さいになったらおおさわようちえんにいくんだよ」とか、「今日ねおにくとおやさいいっぱいたべたの。あとね、えーとね……」
などなど、彼のおしゃべりにつき合っている叔母もたいへんだなと横で聞いていて思いつつ、好きにさせておいた。
③
「またおでんわしてねっていってた」「ごはんをいっぱいたべてねっていってたよ」「お
ばさんはひとりですんでいてさびしいんだって。ぼくとおはなしするのがたのしみだって。
ぼくにあいたいって」
久しぶりに叔母に会う機会があった。
「いつも子どもが長々と電話してすみません」
「あーらやだ。何言ってんのよ、ちっとも電話してくんないじゃない。子どもは元気?」
(注3) (注4) ④
彼は毎日この叔母と電話で話をしていたのではなかったか。その夜、#02に電話してみた。見知らぬ人が電話を取った。
(注5)
「あなたがお父様ですか。いつもお坊ちゃまからかわいいお電話をいただいております。
いつかご挨拶をと思っておりましたが、遅くなって申しわけございません。私は、××と
申すものです。いつもこの時間になるとお電話がこないかと心待ちにしております。最近はそれはもう毎日のようにお電話をくださいますので一日電話がこないと風邪でもひいたのではないか、もしや事故にでもあったんじゃないかとかやきもきしてしまうのですよ。
⑤ (注6)
今まで眠れない日がおおございましたのに、電話の向こうで“バイバイ”って言ってくれ
(注7)
た日はぐっすりと眠れるようになりました。
主人をおととしガンで亡くしがっくりきていたところに、頼みだった息子夫婦も半年
(注8) (注9)
前に交通事故で亡くなりましてね、孫も一緒だったんです。生きていればもうじき四歳に
⑥
なるはずでした。幼稚園もきまっていましたのにねえ。そんな時にお宅のお坊ちゃまからお電話をいただきまして、初めは死んだはずの孫からかと思いました。一回だけの幸運な
⑦
間違い電話のつもりでいたら何度もくるようになりまして、最初は、たどたどしかったの
(注10)
に今ではもう立派にお話もできるようになって……。もしご迷惑でありませんでしたら、時々はお坊ちゃまのお声をお聞かせ願えませんでしょうか」
こんな話を聞いてしまったらいやとは言えないだろう。叔母の家の電話番号を短縮番号
に入力する時のミスだったようだ。新たに本当の叔母の番号を#03にいれた。そして彼は今でも#02に電話をしているようである。
(青木晴彦 「電話」『第11回NTTふれあいトーク大賞100選』による)
(注1) ジジババ:おじいさんとおばあさん
(注2) 短縮番号にする:簡単にかけられるように電話番号を短い数字にして電話機に
セットする
(注3) あーらやだ:少しおどろいた時に使う女性の言い方
(注4) 電話してくんない:電話してくれない
(注5) 見知らぬ人:ぜんぜん知らない人
(注6) やきもきする:心配する
(注7) おおございました:「多かった」のていねいな言い方
(注8) ガン:病気の名前
(注9) がっくりくる:急に元気がなくなる
(注10)たどたどしい:話し方がおさないようす
問1 ①「出たがるようになった」とあるが、何をしたがるようになったのか。
1 電話での大人の会話に自分も参加すること
2 電話番号を押して、自分から電話をかけること
3 大人が電話で話している間、外に遊びに行くこと
4 相手とつながっていない電話をおもちゃにして遊ぶこと
問2 ②「どちらかに電話をした」とあるが、筆者(親)は子どもがだれと話していると
思っていたか。
1 おばさんが見知らぬ人
2 おじいさんかおばあさん
3 おじいさんかおばあさんかおばさん
4 おじいさんかおばあさんか見知らぬ人
問3 ③「好きにさせておいた」とあるが、だれがだれに何をさせておいたのか。
1 母が子どもを友達と遊ばせておいた。
2 叔母が子どもに電話で話させておいた。
3 親が子どもに電話をかけさせておいた。
4 ジジババが子どもを自由にさせておいた。
問4 ④「子どもは元気?」とあるが、なぜこのように言ったのか。
1 子どもから全然電話がかかってこないから
2 親とはよく会うが子どもとは全然会わないから
3 子どもからときどきしか電話がかかってこないから
4 親とはよく会うが子どもとはときどきしか会わないから
問5 ⑤「事故にでもあったんじゃないか」とあるが、この人は、だれが事故にあったと
考えたのか。
1 この人の孫
2 この人の息子夫婦
3 電話をかける子どもの親
4 電話をかけてくる子ども
問6 ⑥「孫も一緒だった」とあるが、どういう意味か。
1 主人と同じ病気で亡くなった。
2 ともだちと同じ幼稚園に入った。
3 おばあさんと一緒に電話で話した。
4 息子夫婦と一緒に交通事故にあった。
問7 ⑦?幸運な間違い電話?とあるが、なぜ?幸運?なのか。
1 めったにかかったこないから
2 孫のような子どもの声が聞けたから
3 ちょうど待っていた電話だったから
4 自分から電話をかけなくてもいいから
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1,2,3,4から一つ選びなさい。
(1) ついこの前、近くのお店に買い物に行った時のこと。
私がお店を出ようとすると、前に電動三輪車に乗ったおじいさんがいた。私は急
(注1)
いでいたので、そのおじいさんを追い越して、先に自動ドアの前に立った。ドアが開くと、「ありがとう」という声が聞こえた。驚いて振り返ると、うれしそうに笑
① (注2)
顔でお礼を言うおじいさんがいた。あっと思った私は、おじいさんが通り過ぎるのを待った。
私はおじいさんに、とても申し訳ない気がした。お礼を言われるまで、おじいさ
②
んにとって自動ドアを通ることが大変だなんて、少しも気付かなかった。結果として親切な行動となったが、それは偶然のことで、親切な気持ちではなかったのだから。
私には何ともないことでも、苦労する人がいるのだと、実感した出来事だった。
その人の立場にならなければ、なかなか分からないことだけれど、今度こんな状況に出合ったら、すぐに気が付くようにしたい。そして、今度はお礼を言われても、それにこたえられるような、気持ちからの行動にしたい。
(2001年1月4日付朝日新聞による)
(注1) 電動三輪車:歩くのが困難な人のために作られた、電気で動く乗り物
(注2) 振り返る:後ろを見る
問1 おじいさんはなぜ①「ありがとね」と言ったのか。
1 動かなくなった電動三輪車を押してくれると思ったから
2 自分のために電動三輪車を運んでくれると思ったから
3 自分に合わせてゆっくり歩いてくれたと思ったから
4 自分のために自動ドアを開けてくれたと思ったから
問2 筆者はなぜ②「おじいさんに、とても申し訳ない気がした」のか。
1 おじいさんが他の人と間違えて筆者にお礼を言ったから
2 親切な気持ちからしたのではないのに、ありがとうと言われたから
3 お礼を言われたのに、おじいさんが自動ドアを通るのを助けてあげなかったから
4 おじいさんが自動ドアを通るのが大変だと気付かず、ドアを閉めてしまったから
問3 筆者はこれからどうしようと思っているか。
1 お礼を言われたから、今度ははっきり返事をしたい
2 相手のことを考えて、自分から人を助ける行動をしたい
3 困っているところを助けられたら、必ずお礼を言うようにしたい
4 自分には何ともないことでも、他の人がいやがることはしないようにしたい
(2) 首都圏在住で4~9歳の子を持つお母さん500人を対象に実態調査をしたとこ
(注1)(注2) (注3)
ろ、子どもだちは年平均4.6回風邪をひき、10回以上をひく子が1割以上いることがわかった。
「今の子どもは、あなたの子どものころと比べて、風邪をひきやすくなったと感じるか」という問いに対して半数以上が「今の子どもの方がひきやすい」と答え、原因として「外で遊ばなくなったから」「食生活の変化」「体力の減退」などを挙げた。
子どもが風邪をひいた時の夫の対応は、「協力的だ」が6割を超えた。夫に協力し
(注4)
てほしいこととしては「早く帰宅して」「他の子どもの世話をして」「自分の身の回りのことは自分でして」という回答が多く、「看病してほしい」というのは1割ほど。父親には、看病する能力をあまり期待していないようだ。
(『サイアス』2000年3月号による)
(注1) 首都圏:東京とその周辺の地域
(注2) 在住:そこに住んでいること
(注3) 実態:実際の状態
(注4) 対応:ここでは、それに対する態度のこと
問1 今の子どもの風邪をひく回数について、正しいものはどれか。
1 1年に1回風邪をひく。
2 1年に6回風邪をひく。
3 1年に10回程度風邪をひく。
4 1年に4~5回程度風邪をひく。
問2 母親は、今の子どもについてどう思っているか。
1 風邪をひいたときでも外で遊びたがる。
2 自分の身の回りのことは自分でできる。
3 母親が子どもだったころより体力がある。
4 母親が子どもだったころより風邪をひきやすい。
問3 子どもが風邪をひいたとき、多くの母親は、夫にどうしてほしいと考えているか。
1 自分自身のことは自分でしてほしい。
2 家族のために料理や家事をしてほしい。
3 風邪をひいた子どもの世話をしてほしい。
4 子どものことは心配しないで仕事をしてほしい。
(3) 日本人はだれがほんとうの責任者なのかわかりにくい、と言われている。
①
日本人と会議をすると、すぐに「それは本社と相談して」と言われるからだ。そ
の場で決めてくれない。会議に出ている社員ばかりではない。社員でさえ、いや日本の首相でさえ、その場で一人で決めることはできないである。まわりの一人々と相談して、全員の了解を取って、初めて決定できる。日本人はそれに時間をかける。
(注)
このことは、よく外国人から批判の対象になってきた。しかし、私はその批判に対して二つのことを言いたい。
第一に、これは日本のことだけではないということだ。実はどこの国にもあること
②
である。大統領でも首相でも、何でも一人で決めていたら大変なことになる。まわりと相談するのは当然のことだ。ただ日本のやり方はそれが徹底していて、ほかの国よりきびしいだけなのである。
第二に、そのおかげで日本人はまとまって次の行動ができるのである。つまり、決定には時間がかかるが、( ③ )。
したがって、「本社と相談しまして......」決して悪いことではないのだ。
(注) 了解:承認
問1 ①「日本人はだれがほんとうの責任者なのかわかりにくい」のはなぜか。
1 首相以外はものごとを一人で決められないから
2 ものごとを決定するとき、全員の了解が必要だから
3 ものごとを決定するとき、外国人の批判をさけているから
4 ものごとを決定するとき、責任者はいつも本社にいるから
問2 ②「これ」は何を指しているか。
1 ものごとを会議の場だけで決定しないこと
2 会議に出ている人々で相談して決定すること
3 大統領や首相にものごとの決定権があること
4 首相の決定について外国から批判があること
問3 ( ③ )に入るものはどれか。
1 そのために、決定の後から反対があるのだ
2 その後で、責任者を決めることができるのだ
3 その後は、反対者もなく計画が進められるのだ
4 それまでは責任者は一人で計画が進められるのだ
問題Ⅰ
1、① 2、③ 3、③ 4、① 5、④ 6、④ 7、②
問題Ⅱ
(1)8、④ 9、② 10、②
(2)11、④ 12、④ 13、①
(3)14、② 15、① 16、③