これが(注1)並大抵(なみたいてい)の音ではない。どういう仕掛けになっているのか、頭の上から噛みつくようにものすごい音でなり続ける。
私たちは①総立ちになった。
「火事だ!」
かなりの高層マンションだが、友人の部屋は3階である。いざとなったら飛び降りても命だけはなんとかなると思ったが、お年寄りもいることだし、そうとなったら早いとこ非常段階へ出たほうがいい。
②友人は玄関へ走った。
ドアを細目にあけて廊下をうかがっが、火の手も煙も見えない。隣の部屋、向かいの部屋のドアが開いて、不安そうな顔がのぞく。
「おなかの大きい(注2)嫁がいるんですが、大丈夫でしょうか」
と、お(注3)姑(しゅうとめ)さんらしいかたのオロオロ声は、大きなベルの音で、やっと聞こえるほどである。
友人が、右代表かたちで段階をかけおりて、管理人室へとんでいった。
ベルがやんで、友人がもどってきた。
子どものいたずらだったという。
両親が共働きで、それも夜遅い。その子どもは小学校2年の男の子だそうだが、次から次へと新しいいたずらを教えては、管理人を困らせていたという。
エレベーターに乗り、各階のボタンを全部押してとびおりる。乗った人は、用のない階にゆっくり停まってゆくエレベーターにいらいらする。
今までにもずいぶん(注4)手こずったが、とうとう非常ベルになったということらしい。
都会の、四角いコンクリート?ジャングルのなかでは、テレビも怪獣のおもちゃも、遊び相手としては物足りなかったのどろうか。
(注1)並大抵:普通の程度
(注2)おなかの大きい嫁:おなかに赤ちゃんがいる息子の妻
(注3)姑:夫の母親
(注4)手こずる:困らされる
「問い」下線①「総立ちになった」のはばぜか。
1 音が普通の大きさではなったから
2 音が頭の上から聞こえたから
3 火事になったから
4 火事かと思ったから
「問い」下線②「友人は玄関へ走った」とあるが、どうしてか。
1 玄関から逃げようと思ったから
2 ドアの外の様子を見ようと思ったから
3 玄関を開けたほうが安全だと思ったから
4 隣の人に知らせようと思ったから
「問い」筆者がこの子どもに対して持っている気持ちとして、最も適当なものはどれか。
1 ひどいいたずらをする悪い子どもだ
2 もっとおもしろいおもちゃを買ってあげたい
3 マンションで育てるのはよくない
4 相手をしてくれる人がほしいんじゃないどろうか