金太郎
昔 、足あし柄がら山やまの洞穴どうけつに、金太郎きんたろうという男おとこの子こが、お母かあさんと二人ふたりで住すんでいました。
金太郎きんたろうは、とても力ちからの強つよい子こ供どもでした。毎まい日にち、山やまの動物どうぶつたちを集あつめて、相撲すもうを取とり [1] ました。金太郎きんたろうは、たちまち、しかも猪いのししも投なげ飛とばしました。
「ようし、今こん度どは、おいらが相あい手てだ。」熊くまが勢いきおいよく、金きん太た郎ろうに組くみつき [2] ました。はっけよいのこった、はっけよいのこった [3] 、どっちも強 つよくて、なかなか勝負 しょうぶがつきません 。それでも、えいっ!というかけ声ごえといっしょに、金きん太た郎ろうは、熊くまを高々たかだかと持もち上あげ、あっという間まに投なげ飛とばしてしまいました。
「金太郎きんたろうの勝かち!」「まいった、まいった。もう金きん太た郎ろうに勝かてるものはいないよ。」熊くまが、お尻しりを擦こすりながら言いいました。相す撲もうが終おわると、金きん太た郎ろうは、お母かあさんに作つくってもらったおいしい山やまの料りょう理りを、みんなにも分わけてあげました。
金きん太た郎ろうは、動物どうぶつたちを連つれて、山やまの中なかを歩あるき回まわりました。木き登のぼり名めい人じんの猿さるには、木き登のぼり方かたを教おしえてもらいました。足あしの速はやい鹿しかには、山やま道みちの走はしり方かたを教おしえてもらいました。優やさしくて力ちから持もちの金太郎きんたろうは、動物どうぶつたちの人にん気き物ものです。雨あめの時ときは、動物どうぶつたちと洞穴どうけつで遊あそびました。金きん太た郎ろうは、木きや草くさの蔓かずらで、いろんな玩具おもちゃを作つくり、動物どうぶつたちにあげました。
山やまでは、おいしい食たべ物ものがたくさん取とれました。あけび採とり [4] やきのこ採とり [5] は、鹿しかと狐きつねが手て伝つだいました。山やま芋掘いもほりは、猿さると兎うさぎが手伝てつだいました。木きの実みや栗くりの実みを落おとすのは、栗鼠りすの仕し事ごとです。熊くまは、それをせっせと洞穴どうけつへ運はこびます。金 きん太 た郎 ろうの住 すむ洞 どう穴 けつには、冬 ふゆになっても食 たべられる物 ものが山やまのように積 つんでありました 。こうして、長ながい月つき日ひが過すぎ、また春はるがやってきました。
ある日ひ、金太郎きんたろうは、熊くまに跨またがり、動物どうぶつちを引ひき連つれ、向むこうの山やまへ出でかけました。しばらく行いくと、深ふかい谷たにの上うえに出でました。「弱よわったなあ。これじゃ、向むこうの山やまへ行いけないや。」皆みながっかりして、顔かおを見み合あわせました。「大だい丈じょう夫ぶ。おらに任まかせろ。」金太郎きんたろうは、傍そばに生はえている大たい木ぼくを力ちからいっぱい押おしました。木きはメリメリと傾かたむき、谷たにの上うえへごろんと倒たおれました。
「なんて、力ちからの強つよい子こだ。」誰だれかが言いいました。金きん太た郎ろうが振ふり向むくと、侍さむらいが立たっていました。「どうだ、わしの家け来らいにならないか。」これを聞きかれた金きん太た郎ろうは、大おお喜よろこび。やがて、都みやこに行いった金きん太た郎ろうは、「坂さか田たの金きん時じ」というりっぱな侍さむらいになりました。
[1] 「相撲を取る」,摔跤,相扑。
[2] 「組み付く」,动词。揪在一起,扭成一团,搂住,抱住。
[3] 「はっけよいのこった」,干吧,加油!
[4] 「あけび採り」,名词。采通草。
[5] 「きのこ採り」,名词。采蘑菇。
金太郎
从 前,在足柄山的山洞里,住着一个叫金太郎的男孩子,他和母亲两人相依为命。
金太郎是一个力大无比的孩子,每天都会召集山里的动物们进行摔跤比赛。不大工夫,金太郎就把鹿和野猪扔出了摔跤场。
“好啊!这次轮到我啦!”熊士气高昂地抱住了金太郎。来!来吧!来吧!熊和金太郎都十分强壮,势均力敌,难分胜负。尽管如此,金太郎还是“嗨”地一声,把熊高高地举起,扔出了摔跤场外。
“金太郎赢了!”“完了!完了!以后再也没有能战胜金太郎的啦。”熊一边摸着屁股一边说。摔跤比赛结束后,金太郎把母亲做的香喷喷的山野饭菜分给大家吃。
金太郎领着动物们在山里四处游逛。他们向爬树高手猴子学习爬树的技巧,向跑步健将小鹿学习走山路的秘诀。性情和善、力大无比的金太郎非常受动物们的喜欢。下雨了,他就与动物们就在山洞里嬉戏。金太郎还用木头和藤蔓做成各种玩具,供动物们玩耍。
在山里,它们采集了很多美味可口的食物。鹿和狐狸帮忙采通草、拾磨菇;猴子和兔子帮忙挖山药;小松鼠负责摇落树上的树籽和栗子;而大熊则勤快地把食物运进洞穴……即使到了冬天,金太郎住的山洞里,食物也堆积如山。就这样,日子一天天地过去,又迎来了生意盎然的春天。
有一天,金太郎骑着大熊,带领动物们向对面的山上走去。走了一会儿,它们来到了一个深谷。“这可不好办啦!这么深,我们可过不去。”大家都在犯愁,互相对视,不知所措。“没关系。看我的吧!”金太郎说着就把身边的一棵大树用力一推,只见那大树“吱吱嘎嘎”地向对面的山谷倒下。
忽然,他们听到有人说:“这孩子,真是个大力士啊!”金太郎回头一看,只见一个武士站在那儿。“怎么样?你愿意当我的随从吗?”武士问道。听此请求,金太郎十分高兴。后来,金太郎去了京城,成了一个优秀的武士,后人称他为“坂田金时”。
语法详解
(1)なかなか+動詞未然形+ない
表示“怎么也不……”“很难……”的意思。
* タクシーがなかなかつかまらない。
怎么也打不着出租车。
* この問題は難しくてなかなかできません。
这道题太难,怎么也不会。
* 一時間待ちましたが、なかなか帰ってこないので、家へ帰ることにしました。
等了一个多小时,可还是没有回来,所以我决定回家了。
(2)用言連体形/体言の+ようだ
「ようだ」是比况助动词,其连用形为「ように」、连体形「ような」、中顿形「ようで」。表示比喻、例举、委婉的、不确切的判断和推测。相当于“好像……一样”“如同……一般”“犹如……”
* 暖かくてまるで春のようです。(比喻)
暖和得就像春天一样。
* 彼女のような優しい女性と結婚したい。(例举)想和她那样温柔的女孩子结婚。
* 彼はあまり好かれていないようです。(委婉的)他好像不大受欢迎。
* 電車が遅れているところを見ると、何か事故があったようだ。(不确切的判断)
从电车晚点的情况来看,好像是发生了什么事故。
小知识
坂田金時
平安後期の武士。幼名、金太郎。金太郎が祭られている金時神社に記されたものによると、相模足柄山に生まれ、母に孝行する元気で優しい子供に育った。源頼光と出会い、その力量を認められて家来となり、頼光四天王の一人となる。酒呑童子を神変奇特酒を使って退治した。現在の金太郎伝説が完成したのは江戸期であり、浄瑠璃や歌舞伎を通して頼光四天王の怪力童子のイメージが定着していった。鉞担いで熊の背に乗り、菱形の腹掛けを着けた元気な少年像として、五月人形のモデルとなった。この姿から、かつて日本各地で乳幼児に着用させた菱形の腹掛けもまた「金太郎」と呼ぶ。
坂田金时
平安后期的武士。幼名金太郎。据供奉金太郎的金时神社记载,金太郎出生在相模的足柄山,是一个孝顺母亲、健康善良的孩子。后遇见源赖光,源赖光十分欣赏他的力量,遂将其收为门下,成为赖光四天王之一。他用神变奇特酒打败了酒吞童子。现在的金太郎传说成形于江户时期,净琉璃和歌舞伎使金太郎以赖光四天王中怪力童子的形象得以定型。金太郎身穿菱形肚兜,背着大斧头,骑在熊背上的形象成为五月人偶的模型。因此,日本各地婴儿所穿的菱形肚兜也叫“金太郎”。