[書き下し文]子曰く、已んぬるかな(やんぬるかな)。吾未だ能くその過ちを見て内に自ら訟むる(せむる)者を見ざるなり。
[口語訳]先生が言われた。『この世も最早ここまでか。私はまだ自分の過ちを認め、内面で自分を責めることができる人物を見たことがない。』
[解説]春秋末期に風俗が乱れ、自分の利益や出世ばかりを追い求める人材が栄耀栄華をほしいままにしだしてしまった。そういった憂うべき天下の窮状を見て、孔子は嘆息し「やんぬるかな(もうこの世はおしまいだ)」と言葉にしてしまったのである。自分自身の過失や責任を認めることなく、罪悪感を痛感する良心を失ってしまった人間ばかりになると、社会が混乱し仁の思いやりが摩滅いってしまうということを憂慮した部分である。