[書き下し文]子、子夏に謂いて曰く、女(なんじ)、君子の儒と為れ、小人の儒と為る無かれ。
[口語訳]先生が子夏におっしゃられた。『お前は君子のような器量と礼節のある学者になりなさい。小人のような偏狭で落ち着きのない学者になってはいけない。』
[解説]『儒』とは儒学者、儒教の徒のことであり、ここでは子夏に対して孔子が理想とする儒学者の姿が述べられている。孔子は、有徳の士大夫となるための儒学教育に心血を注いだ人物であり、貴族的な鷹揚さと礼儀作法を身に付けた儒者になることを弟子に勧めている。反対に、枝葉末節に過度にこだわるような小人の学者を非難しており、孔子が目指す儒者というのが『大局を見通すビジョンを見た学者(為政者)』であることが分かる部分である。現代の専門家のように特定分野を深く追究していくような学問体系は孔子の時代にはなかったので、孔子の想定している儒学者は、細部を丹念に分析する科学者ではなく実践的な学者のことだと考えることができる。