[白文]5.執圭鞠躬如也、如不勝、上如揖、下如授、勃如戦色、足縮縮如有循也、享礼有容色、私覿愉愉如也。
[書き下し文]圭(けい)を執るときは、鞠躬如(きつきゅうじょ)として勝えざる(たえざる)が如し。上ぐること、揖(ゆう)するが如くし、下すこと、授くるが如くす。勃如(ぼつじょ)として戦色あり。足、縮縮如(しゅくしゅくじょ)として循う(したがう)ことあり。享礼(きょうれい)には容色あり。私覿(してき)には愉愉如(ゆゆじょ)たり。
[口語訳]主君の命を受けた使者が持つ圭(玉のついたシャクジョウ)を受け取る時には、身体を丸くかがめてその圭の重さに耐えられないように見える。圭を持ち上げる時には、他人に優雅に挨拶するかのように、圭を下に降ろす時には、他人にものを授けるように丁寧にする。顔色を生き生きとして、緊張感を感じさせるように引き締まっている。足の運びはつま先を持ち上げるようにして、ゆっくりとすり足で進んでいる。君主の贈り物を相手に捧げる享の儀礼になると、先生は顔色に感情をお示しになられる。私的な会談になれば、先生は非常に機嫌が良くて愉快な様子である。
[解説]孔子が君主の使者として他国に使いをする時の具体的な礼制について表現した章で、孔子は君主を象徴する圭を非常に大切に謹厳に取り扱っていた。その時々の状況や礼節に合わせて、孔子は顔色に感情を込めたり恭しくへりくだったりしており、緊張すべき場面とリラックスする場面での態度の使い分けがとても適切であった。