[書き下し文]子曰く、先進の礼楽(れいがく)に於けるや野人なり、後進の礼楽に於けるや君子なり。如し(もし)これを用うれば、則ち吾は先進に従わん。
[口語訳]先生がおっしゃった。『弟子達の中の先輩は、礼制と音楽に対して野蛮人のようである。後輩は、礼制と音楽に対して立派な君子のようである。しかし、もし実際に活用するのであれば、私は先輩たちのほうに従うだろう。』
[解説]ここでいう先輩格の弟子とは、子路・子貢・顔淵・閔子騫・宰我などであり、後輩格の弟子とは、子游・子夏・曾子・子張・タン台滅明などである。孔子は、先輩格が得意とする『政治的実践』と後輩格が熱中する『礼楽的研究』において、実際に信念を持って素早く行動する政治的実践のほうを重視した。机上の学問も必要だが、教養主義に傾斜し過ぎると実行力や決断力に陰りが出てきて、何事も有意義な行動が出来なくなってしまう。もう一つの解釈としては、晩年の孔子が、儒学教団を起こした初期に自分を師事してくれた先輩格の弟子たちを好意的に懐古したという考え方もある。