[書き下し文]子張、徳を崇くし(たかくし)惑いを弁ずることを問う。子曰く、忠信に主しみて(したしみて)義に徒る(うつる)は、徳を崇くするなり。これを愛するときはその生を欲し、これを悪む(にくむ)ときはその死を欲す。既にその生を欲して、またその死を欲するは、これ惑いなり。
[口語訳]子張が、『徳を崇敬して、惑いを弁ずる』という言葉の意味を質問した。先生がお答えになられた。『忠義と誠実がある人間と交流して、正義に近づくことが徳を敬うことである。愛する時にはその人の生存を願い、憎悪するときにはその人の死を願うものがある。このように、かつてはその人の生を願って、その後にその人の死を願うというのが惑いなのである。』。
[解説]『徳を崇敬して、惑いを弁ずる』という古来から伝わる諺の意味を子張に問われた孔子は、愛欲と憎悪の二律背反(アンビバレンス)について言及して見事に分かりやすく解説している。