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『ケンブリッジ見聞録』33

时间: 2016-04-14    进入日语论坛
核心提示:Apple Day秋も深まったある日曜日、ケンブリッジの植物園でApple Dayという催し物があるというので行ってみることにした。当日は
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Apple Day
 
秋も深まったある日曜日、ケンブリッジの植物園でApple Dayという催し物があるというので行ってみることにした。当日は林檎の
 
展示の他、林檎や林檎酒(apple cider)などの試食、即売会があるという。副題はACelebration ofApples。皆で林檎の収穫を喜び
 
合い、林檎を褒め称えようというのであろう。
 
英国では林檎の木が多い。ちょうど日本の柿や桜のようなものだろうか。夏の終わりと共に、民家の庭先、公園、野原などでたわわ
 
に実をつけている林檎の木を見ることができる。「林檎の木(Apple Tree)」というと、桂冠詩人(poet laureate)ワーズワースの作
 
品を連想するが、林檎が文化としても人々の生活に密着しているのがよくわかる。
 
英国の林檎はたいてい小ぶりで、ちょっと小腹が空いたときに食べるにはもってこいである。手軽な食べ物としてバナナも人気だが
 
、持ち歩くのには林檎が丈夫でいい。道を歩きながら、本を読みながら、おしゃべりをしながら、授業の合間に、かばんやポケット
 
から林檎を取り出して、がりがりと齧る。かばんを開けるとペーパーバックと林檎が一つごろりと入っていたりする。
 
そこら辺になっている林檎の実は、袋をかけたりせずに勝手に育っているので、当然ご面相は悪い。赤くなるのは日の当たるところ
 
だけで、影になった部分は黄色いままである。魔女が白雪姫に毒林檎を食べさせるときに、「赤くなっているところをお食べ」と勧
 
めたのもうなずける。枝に阻まれたものはいびつに育ち、燦燦と日の当たる所になったものは鳥についばまれている。
 
店先で売っている林檎もご面相は悪い。日本の富士や陸奥のような蜜入りの大きな林檎などお目にかかったことがない。調理用と銘
 
打ったものもある。最近日本では甘い林檎が人気で、酸っぱい紅玉などは不人気で手に入りにい。こちらの林檎の酸味は健在で、焼
 
き林檎などおいしく出来上がる。
 
ところでケンブリッジの町外れにグランチェスターというピクニックに最適な広大な草っぱらがあって、知る人ぞ知るといった感じ
 
のティールームがある。
 
そこは敷地内に林檎の木がたくさん植わっていて、それぞれの木の下に適当に置いてあるテーブルと椅子でくつろいで、自家製のお
 
いしいジュースを飲むというのが売りである。林檎園の裏手はケム川に面していて、通り抜ける人々もいる。学生風の若者が本を片
 
手に木の下を抜けていく。ふと、枝に手を伸ばして林檎の実をなんの躊躇もなくすっともぎ取り、そのまま齧りながら歩いていった
 
。おお、カッコイイ!しかし林檎園の木から失敬するなど、とてもできるものではない。
 
その光景が目に焼き付いていたので、ついこの間田舎道の端になっている林檎の木を発見して、早速もいで食べてみた。…渋い。こ
 
んなに秋が深まるまで収穫もされずに残っている林檎はおいしくないに決まっている。
 
さて、Apple Dayである。
 
朝起きると快晴。早速でかけることにする。植物園の開園は午前10時からである。少し出遅れて11時少し前に到着すると、入り口に
 
10人ほどの人が待っている。入りきれないほど行列しているのだろうか?近づいていってみると、まだ門が開いていないようだ。
 
日曜日は開園が遅いのだろうか?
 
時計が11時を示す頃に門が開き、人々に紛れて中に入っていく。Apple Dayに参加するには、1£余計に払う。通常の入場券にApple 
 
Dayと文字の入ったスタンプを押してもらって中に入る。Celebrationといっても静かなものである。即売会を目当てに袋やダンボー
 
ル箱を持参している人もいる。
 
案内を頼りに進むと、行き着いた先はテニスコートほどの広さのテントである。そこで即売会をやっている。すでに林檎が入ってい
 
るらしいスーパーの袋をぶら下げた男性が、中身を見せながら入り口の人に何か聞いている。男性は指差された方向にある隣の建物
 
に消えていった。
 
チケットを見せて中に入る。林檎ジュース、林檎酒の試飲と即売が2個所。木で作った林檎の置物の実演販売。カードの展示即売、
 
林檎を使ったケーキやパイの即売、そして幾種類もの林檎の試食即売である。
 
試食の林檎は皮をむいていない。レモンを輪切りにしたような形状の金属の型があって、それを林檎の上からえいっ!と力任せに押
 
しあてておろすと、あら不思議、林檎の芯が取り除かれて8つに割れた試食用林檎の出来上がりである。係りの人ももしゃもしゃと
 
食べながら、林檎をガンガン8つに割っては紙皿の上において行く。
 
英国の林檎というとコックス(COX)という種類がポピュラーなようだが、他にもいろいろあるものである。料理用と生食(?)用
 
とそれぞれ10種類ほど出ていたが、生食用を片っ端から食べ、そのうちの2種類を選んで買うことにする。一袋50p(約120円
 
)ぐらいである。安い。それから林檎のお菓子を数種類買うことにする。これも安い。ちょっと大き目のケーキでも1£ちょっとで
 
ある。ペニーさんにもお土産に小さいアップルパイを買う。
 
隣の建物では林檎の展示をやっているらしい。中に入っておどろいた。テーブルの上に色とりどりの林檎が並んでいる。1つの種類
 
につき2個ずつ展示してあって、それぞれに説明がついている。林檎といっても赤いものだけでなく、青いもの、黄色いもの、色の
 
濃いもの薄いもの、大きさも形も色も様々である。さっきの男性はこれを持ち込んでいたのか。おそらく自分の家で獲れた林檎を持
 
ちよったものなのだ。実に壮観である。
 
コの字型に並んだテーブルの内側には係りの人たち(おそらく植物園の会員)が図鑑を片手に説明したり質問に答えたりしている。
 
説明するほうもされる側も熱心に楽しそうである。さらに林檎を持参してくる人もいて、林檎を手にとりながら「ほうほう!」と感
 
心したり、自慢げにニコニコしたり、これは好きな人にはたまらなく胸踊る行事なのだ。
 
なるほどなるほどと思いながら、壁にかけてある時計をふと見やると11時ちょっと過ぎである。1時間ずれている。…はっ!。そう
 
いえば夏時間が終わって冬時間に戻るのはこの日だったのだ。眠っている間に時間が戻っていたのだ。道理で時間を過ぎても門が開
 
かなかったはずである。
 
さて、林檎をすっかり堪能して、屋外に出る。手には先ほど買った林檎が2袋、林檎ジュース、林檎のケーキが幾つか入った袋をぶ
 
ら下げて、園内をブラブラと歩く。小腹が空いてくるがこれ以上林檎関係のものを食べる気はしない。
 
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