ずっと前の96年の春、私は自分の未来の予想図を心に刻んで、地元大連にある料理専門学校に足を踏み入れました。あこがれの中国の料理鉄人の技を目指して、専門学校に入ったのです。包丁とうでが一つになったその技は、言うまでもなくすばらしいものでした。学校に入った私は、うきうき、わくわく、どきどき・・・・。言葉では表現できない気持ちでした。
しずかな環境に包まれた校舎はあざやかな緑に彩られていました。そのしずかな校舎で、さまざまな感動の物語があったのです。その中でも最も心に残っていることは、常識なんかまったく知らない私が、料理の実習の時、油の温度が270度に上がるまで放っておいて、油に火がついてしまったことです。沸騰している油に火がついて、命にかかわった時、先生が自分の安全なんか考えずに「危ない!」と叫ぶと同時に炎のなべを持ち上げました。270度もする油が先生の手にこぼれ、ジュージュー音が鳴っていました。何もできない私はそのままよこに立っていることしかできませんでした。外に出た先生はそれっきり帰って来ませんでした。先生は手にひどいやけどをしていました。見舞いに行った時、生徒のためなら・・・と言ってくれた先生は誰よりもえらく感じました。
学校を卒業した後も、学校で起きた事を振り返ってみると、心がしびれてきます。仕事を始めた後もその事が自分の気持ちに拍車をかけてくれました。たったの二年間だったけど、その二年間は自分にとって、とても思い出深い二年間でした。仕事中つらい時も楽しい時も専門学校に行っていた頃の事を思い出すと勇気がわいて来て、がんばろうと思えます。それが私の一番思い出が残る場所です。
教師より
自分の身の危険も顧みず、教え子をかばった先生。瞬時の判断が必要ですから、心からの思いがなければできなかったと思います。良い先生に恵まれましたね。