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破戒21-7

时间: 2017-06-03    进入日语论坛
核心提示:       (七) 高等四年の生徒は教室に居残つて、日頃慕つて居る教師の為に相談の会を開いた。未(ま)だ初心(うぶ)で
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        (七)
 
 高等四年の生徒は教室に居残つて、日頃慕つて居る教師の為に相談の会を開いた。未(ま)だ初心(うぶ)で、複雑(こみい)つた社会(よのなか)のことは一向解らないものばかりの集合(あつまり)ではあるが、流石(さすが)正直なは少年の心、鋭い神経に丑松の心情(こゝろもち)を汲取つて、何とかして引止める工夫をしたいと考へたのである。黙つて視て居る時では無い、一同揃つて校長のところへ歎願に行かう、と斯う十六ばかりの級長が言出した。賛成の声が起る。
『さあ、行かざあ。』
 と農夫の子らしい生徒が叫んだ。
 相談は一決した。例の掃除をする為に、当番のものだけを残して置いて、少年の群は一緒に教室を出た。其中には省吾も交つて居た。丁度校長は校長室の倚子(いす)に倚凭(よりかゝ)つて、文平を相手に話して居るところで、そこへ高等四年の生徒が揃つて顕(あらは)れた時は、直に一同の言はうとすることを看て取つたのである。
『諸君は何か用が有るんですか。』
 と、しかし、校長は何気ない様子を装(つくろ)ひ乍(なが)ら尋ねた。
 級長は卓子(テーブル)の前に進んだ。校長も、文平も、凝(きつ)と鋭い眸をこの生徒の顔面(おもて)に注いだ。省吾なぞから見ると、ずつと夙慧(ませ)た少年で、言ふことは了然(はつきり)好く解る。
『実は、御願ひがあつて上りました。』と前置をして、級長は一同の心情(こゝろもち)を表白(いひあらは)した。何卒(どうか)して彼の教員を引留めて呉れるやうに。仮令(たとへ)穢多であらうと、其様(そん)なことは厭(いと)はん。現に生徒として新平民の子も居る。教師としての新平民に何の不都合があらう。是はもう生徒一同の心からの願ひである。頼む。斯う述べて、級長は頭を下げた。
『校長先生、御願ひでごはす。』
 と一同声を揃へて、各自(てんで)に頭を下げるのであつた。
 其時校長は倚子を離れた。立つて一同の顔を見渡し乍ら、『むゝ、諸君の言ふことは好く解りました。其程熱心に諸君が引留めたいといふ考へなら、そりやあもう我輩だつて出来るだけのことは尽します。しかし物には順序がある。頼みに来るなら、頼みに来るで、相当の手続を踏んで――総代を立てるとか、願書を差出すとかして、規則正しくやつて来るのが礼です。左様どうも諸君のやうに、大勢一緒に押掛けて来て、さあ引留めて呉れなんて――何といふ無作法な行動(やりかた)でせう。』と言はれて、級長は何か弁解(いひわけ)を為(し)ようとしたが、軈(やが)て涙ぐんで黙つて了つた。
『まあ、御聞きなさい。』と校長は卓子(テーブル)の上にある書面(かきつけ)を拡(ひろ)げて見せ乍ら、『是通り瀬川先生からは進退伺が出て居ます。是(これ)は一応郡視学の方へ廻さなければなりませんし、町の学務委員にも見せなければなりません。仮令(たとひ)我輩が瀬川先生を救ひたいと思つて、単独(ひとり)で焦心(あせ)つて見たところで、町の方で聞いて呉れなければ仕方が無いぢや有ませんか。』と言つて、すこし声を和げて、『然し、我輩一人の力で、奈何(どう)是(これ)を処置するといふ訳にもいかんのですから、そこを諸君も好く考へて下さい。彼様(あゝ)いふ良い教師を失ふといふことは、諸君ばかりぢやない、我輩も残念に思ふ。諸君の言ふことは好く解りました。兎に角、今日は是で帰つて、学課を怠らないやうにして下さい。諸君が斯ういふことに喙(くちばし)を容(い)れないでも、無論学校の方で悪いやうには取計ひません――諸君は勉強が第一です。』
 文平は腕組をして聞いて居た。手持無沙汰に帰つて行く生徒の後姿を見送つて、冷かに笑つて、軈て校長は戸を閉めて了つた。
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