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人面瘡 八(4)

时间: 2023-12-18    进入日语论坛
核心提示:「ああ、そう、それではあなたはお母さんにお詫わびしなければいけませんよ。松代さん」「はい」「あなたは貞二君のそばについて
(单词翻译:双击或拖选)

「ああ、そう、それではあなたはお母さんにお詫わびしなければいけませんよ。松代さ

ん」

「はい」

「あなたは貞二君のそばについていてあげてください。警部さん」

「はあ」

「われわれはもう失礼しようじゃありませんか。あなたのご用はもう終ったようですよ」

「ああ、そう、じゃ……」

 ふたりが障子の外へ出たとき、

「お母さん……お母さん……」

 と、貞二君が子供のように泣きわめくのが聞えた。

 お柳さまはその夜しずかに息をひきとったが、おそらくそれは大往生だったことだろ

う。

 金田一耕助と磯川警部のふたりは、お柳さまの初七日をすませてから薬師の湯をたつこ

とになったが、その間ふたりは貞二君や松代と、しんみりと話しあう機会をもった。

「貞二君、君は松代君と結婚するんだろう」

「はあ、そうしたいと思っております」

「いつ……?」

「できるだけ早くしたいと思っておりますが……」

「そのほうがいいね。お母さんの一周忌を待とうなんて考えないほうがいいんじゃない

か。そのほうが故人の遺志にそうというもんだ」

「はあ、わたしもそう思っております。できたらことしのうちにも式を挙げたいと思って

いるんですが……」

「ああ、それがいいね。そのほうがお母さんも安心なさるだろう」

「ときに、松代さん」

 しばらく沈黙がつづいたのちに金田一耕助が口を出した。

「はあ……」

「あなたのあの腋わきの下のおできですがねえ」

「はあ……?」

 と、松代の顔にはちょっと怯えたような色が光り、それから頰を真っ赤にそめてうつむ

いた。

「それ、いちどしかるべきお医者さんに診てもらったらどうかと思うんです。なんなら磯

川警部さんにO大のT先生でも紹介しておもらいになったら……」

「先生」

 と、貞二君が真剣の色を眼にうかべて、

「金田一先生はあのおできについて、なにかお心当りが……?」

「はあ、ちょっと考えてることがあるんですが……」

「金田一先生、それはどういう……あなたになにかお考えがおありでしたら、ここで貞二

君や松代さんにいってやってくれませんか」

「いやね、警部さん」

 と、金田一耕助はいくらか羞はじらいの色をうかべて、

「これはぼくの妄想かもしれないんです。しかし、いちおうたしかめてみる価値はあると

思うんですよ。松代さん」

「はあ……」

「あなた、小さい時分から由紀ちゃんにたいして一種の罪業感をもっていられた。絶えず

妹さんにすまない、すまないと思いつづけてこられたということですが、なにかあなた由

紀ちゃんにたいして罪の自覚がおありですか。由紀ちゃんにたいしてすまないことをした

というような……」

「さあ、それがいっこうに……ただ、あたしは長女にうまれたものですから、なにかと両

親に可愛がられてきましたから……」

「しかし、それじゃ、ご両親は由紀ちゃんをとくにうとんじてこられたんですか」

「いいえ、べつにそんなことは……」

「それじゃ、そんなことあなたの罪業感の理由にはなりませんね。ねえ、警部さん」

「はあ」

「これはあくまでわたしの妄想なんですが、松代さんが罪業感をいだきつづけてこられた

のは、由紀ちゃんじゃなく、もうひとりの妹さんじゃないかと思うんですよ」

「まあ!」

 と、松代はおどろいて眼を見張り、

「だって、先生、あたしには由紀子よりほかに妹はいないんですけれど……」

「いいえ、あなたのその腋の下に顔を出している妹さんですね」

「あっ!」

 と、叫んで磯川警部は松代の顔を視なおしたが、すぐなにかに思いあたったらしく、

「ふうむ!」

 と、ふとい鼻息を鼻からもらした。

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