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一枚邮票-下(3)

时间: 2021-09-10    进入日语论坛
核心提示: 以上私は、私の所謂証拠なるものを、残らず列挙した。鋭敏なる読者は、私のこれから述べようとする所を、大方は推察せられたで
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 以上私は、私の所謂証拠なるものを、残らず列挙した。鋭敏なる読者は、私のこれから述べようとする所を、大方は推察せられたであろう。それらの人々には蛇足(だそく)であるかも知れないが、私は()(かく)結論まで陳述せねばならぬ。
 その日帰宅した時には、私はまだ何の意見も持っていなかった。右に述べた三つの点についても、別段深く考えて居った訳ではない。此処には読者の注意を喚起する為に、(わざ)と明瞭に記述したまでであって、私が当日その場で、これ丈けのことを考えたのではないが、翌日、翌々日と毎朝の新聞によって、私が尊敬する博士その人が嫌疑者として引致(いんち)されたことを知り、黒田刑事の探偵苦心談なるものを読むに至って、私は、この陳述の冒頭に述べた様な常識判断から、黒田氏の探偵にどこか間違った点があるに相違ないと信じ、当日目撃した所の種々の点を考え合せ、尚お残った疑点については、本日博士邸を訪問して、種々留守居の人々に聞合せた結果、遂に事件の真相を掴み得た次第である。
 そこで、左に順序を追って、私の推理の跡を記して見ることにする。
 前に申した様に、出発点は、PL商会の受取切符である。事件の前日、恐らく前夜深更に、急行列車の窓から落されたであろう所のこの切符が、何故、五六貫目もある重い石塊の下敷になっていたか。というのが、第一の着眼点であった。これは、前夜PL商会の切符を落して行った所の列車が通過した後、何者かが、その石塊を其処に持って来たと判断する外はない。――汽車の線路から、或は、石塊を積載して通過した無蓋(むがい)貨車の上から、転落したのではないことは其の位置によって明かである。――では、何処からこの石を持って来たか、可成重いものだから遠方である筈はない。さしずめ、博士邸の裏に、下水を築く為に置いてある、沢山の石塊の内の一つだということは、楔形(くさびがた)(けず)られたその恰好から丈けでも明かである。
 つまり、前夜深更から、その朝轢死が発見されるまでの間に、博士邸から轢死のあった個所まで、その石を運んだものがあるのだ。とすれば、その足跡が残っている筈である。前夜は雨も小降りになって、夜半(よなか)頃にはやんで居ったのだから、足跡の流れた筈はない。ところが足跡というものは、賢明なる黒田氏が調査せられた通り、その朝現場に居合せた者のそれの外は「犯人の足跡」唯一つあるのみである。茲に於て、石を運んだものは「犯人」その人でなければならぬことになる。この変テコな結論に達した私は、如何にして「犯人」が石を運ぶということに可能性を与えるべきかに苦しんだ。そして、其処に如何にも巧妙なトリックの(ろう)せられて居ることを発見して、一驚(いっきょう)(きっ)したのである。
 人間を抱いて歩いた足跡と、石を抱いて歩いた足跡、それは熟練なる探偵の眼をくらますに十分な程、似通っているに相違ない。私はこの驚くべきトリックに気附いたのである。即ち博士に殺人の嫌疑を掛けようと望む何者かが、博士の靴を穿いて、夫人のからだの代りに、石塊を抱いて、線路まで足跡をつけたと、斯様に考える外に解釈の下しようがないのである。そこで、この(にく)むべきトリックの製作者が、例の足跡を残したとするならば、彼の轢死した当人、即ち博士夫人はどうして線路まで行ったか、その足跡が一つ不足することになる。以上の推理の当然にして唯一の帰結として、私は遺憾ながら博士夫人その人が、夫を呪う恐るべき悪魔であったことを、確認せざるを得ないのである。戦慄すべき、犯罪の天才、私は嫉妬に狂った、而かも肺結核という――()れは寧ろ患者の頭脳を病的にまで明晰(めいせき)にする(かたむき)のある所の――不治の(やまい)(かか)った、一人の暗い女を想像した。(すべ)てが、暗黒である。凡てが、陰湿である。その暗黒と陰湿の中に、眼(ばか)物凄(ものすご)く光る青白い女の幻想、幾十日幾百日の幻想、その幻想の実現、私は思わずもゾッとしたのである。

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