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名探偵明智小五郎_猎奇的后果_江户川乱步_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:名探偵明智小五郎右の出来事の翌日、明智小五郎あけちこごろうは警視庁に馴染の波越なみこし警部(当時彼は捜査課の重要地位につ
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名探偵明智小五郎


右の出来事の翌日、 明智小五郎 あけちこごろう は警視庁に馴染の 波越 なみこし 警部(当時彼は捜査課の重要地位についていた)を訪ねて、人を避けた一室に対談していた。
これは偶然の一致である。明智小五郎は何も「美人片手事件」に特別の興味を持っていた訳ではない。当時世を騒がせていたもっと別な事件について、彼自身その捜査の主役を演じていたものだから、自然捜査課を訪れることもあったのだ。殊に波越警部とは「 蜘蛛男 くもおとこ 」以来のなじみ故、お互に遠慮のない話もはずむのである。
そこへ、取次役の巡査が這入って来て、鬼警部の前に、恐る恐る一葉の名刺を差出した。
「××科学雑誌社長、品川四郎、ホオ、妙な人が尋ねて来たな。話でも聞かせろというのかな」
「裏に用件が書いてございます」
巡査が云った。
「大滝にて発見された婦人片腕事件につき是非是非御話し申上げ たく 。フン、例の片腕事件だ。何かあるかも知れんね。明智さん」
「その人、知っているの?」
「ウン、面識はある。親しい程ではないんだが。一度逢って見よう」
「じゃ、僕は遠慮しようか」
「イヤ、イヤ、却っていてくれる方がいいよ。又、君の智慧を借りることがないとも限らぬ。ハハハハ」
とこれは鬼警部のてれ隠しである。彼は明智小五郎を 畏敬 いけい しながらも、刑事上りの老練家として、素人探偵の助力をたよることを、日頃から、いささか 不面目 ふめんもく に感じているのだ。
やがて巡査の案内で読者諸君に馴染の品川四郎が這入って来た。さも科学屋さんらしく、黒の上衣に しま のズボンの固くるしい服装だ。一応挨拶がすむと、彼は早速用件にとりかかった。
「実は行方不明の女があるのです。もう五日程になります。イヤ、女ばかりではありません、その婦人の亭主も、女よりも一日二日早く、どこかへ姿を消してしまったのです。青木愛之助といって私の友人なのですが、今朝の新聞を見るまでは、大したこととも思っていませんでした。青木という男はひどく気まぐれで、それに本宅は名古屋だものですから、黙って帰ってしまったのかも知れない位に考えて、実はまだ警察へもお届けしていない始末です。
ところが昨日、問合わせてあった名古屋の実家から、まだ帰らぬという返事を受けとる、その 今朝 こんちょう 、例の新聞記事です。どうも飛んだことが起ったのではないかと非常に心を痛めている次第です。と申しますのは、新聞に出ている、女の指にはまっているという指環ですが、あれがその、今云う青木の妻の芳江のものとそっくりなのです。で、若しやと思いまして、私その指環をよく見覚えているものですから、実物を一度拝見したくて、御伺いした訳なんですが」
「そうでしたか。よくお訪ね下さいました。早速御目にかけましょう」
耳よりな話に、警部は已に犯罪の手掛りを掴んだかの如く喜んで、自らそれを保管してある一室へ行って、一巡査に瓶詰めの片腕を持たせて帰って来た。
覆いの 白布 しろぬの をのけると、瓶の中に、防腐液につけた、不気味なものが指を上にして、生えた様に立っていた。
「ごらんなさい。この指環です」
品川は机の上に置かれた瓶に顔をよせて、暫く眺めていたが、防腐液が濁っていて、ハッキリ分らぬので、警部に断って、瓶を窓際に持って行き、蓋を取って、暫くの間綿密に検べていたが、見極めがついたのか、元の席に戻ると、やや蒼ざめた顔をして、
「やっぱりそうでした。間違いなく青木芳江の腕です」
と低い低い声で云った。
「見違いはありますまいね」
波越氏も真剣な調子である。
「決して。この特殊の彫刻は、青木君の好みで、態々彫らせたものですから、芳江以外の人がはめている筈はないのです」
品川氏はそう云って、又瓶の置いてある所へ立って行って、入念に検査していたが、やがて、深い溜息と共に、瓶の 白布 はくふ を元の様にかぶせて、
「恐ろしいことだ。恐ろしいことだ」
と独言を云った。その調子が何かしら意味ありげに聞えたので、警部は逃さず、
「思当ることでもおありなのですか」
と尋ねた。
「あるのです。実はそれも御話しする積りで伺ったのですが、余り変なことなので、私の言葉を信じて頂けるかどうかをあやぶむのです」
「兎も角伺いましょう。無論犯人についてでしょうね」
「そうです。突然申上げると、こいつ気でも違ったのか、夢でも見ているのかと、御疑いなさるか存じませんが、この事件の裏には、恐らく私と寸分違わない、誰が見ても私と同じな、もう一人の私が糸を操っていると信ずべき理由があるのです」
「何ですって、おっしゃる意味がよく分りませんが」
警部が変な顔をして聞き返した。 そば に聞いていた明智小五郎も、この異様な話に興味を覚えたのか、品川四郎の顔を穴のあく程見つめている。
「イヤ、御分りがないのは 御尤 ごもっと もです。私だって、最初は自分の頭がどうかしたのかと疑った程です。併し、私はもう半年もの間、その、私と寸分違わない怪物の為に悩まされているのです。私だけではありません。今申上げた青木君もこのことはよく知っているのです。実を云いますと、もう長い間、私は、こんなことが起りゃしないか、起りゃしないかと、ビクビクものでいました。その私と同じ顔の男が、ひどい悪党であることがよく分っているものですから。今度の事件だって、そいつの深い企らみです。殺されたのは私の友人の細君、イヤ細君ばかりじゃない、青木君自身だって、今頃は生きているか死んでいるか分ったものではありません。両人共私と関係の深い人です。その下手人が私と寸分違わない男だとすると、どういう事になりましょう。さしずめ疑われるのはこの私です。ね、この私です。私はそれが恐ろしいのです。で、よく事情をお話して、悪人の せん を越して、私自身はこの事件に何の関係もないということを、ハッキリ申上げて置く為に、急いで伺った様な訳なのです」
「伺いましょう。出来るだけ詳しく話して見て下さい。ここにいるのは、御承知かも知れませんが有名な民間探偵の明智小五郎氏です。御話の様な事件には、明智君もきっと興味を持たれることと思いますから」
品川氏は明智と聞いて、チラとその方を見て、一寸赤面した。何故か分らない。明智の優れた才能を知っていて、この思いがけぬ邂逅を喜んだのかも知れない。
彼は長い物語を始めた。それは凡て読者の知っていることだから、ここには省略するが、場末の活動小屋で見た怪写真のこと、新聞の写真に顔を並べた二人の品川四郎のこと、赤い部屋の驚くべき対面のこと、そのもう一人の品川が青木の細君と道ならぬ関係を結んでいたらしいこと、青木がその為に非常に悩んでいたこと、一週間ばかり前(それが青木の顔を見た最後なのだが)彼が夜更けに突然訪ねて来て、
「君は確かに品川君だろうね。生きているんだね」
と妙なことを口走ったまま、ポイとどこかへ立去ってしまったこと、間もなく細君の芳江が行方不明になったこと、その時青木の住所の附近で、品川と芳江とが肩を並べて歩いているのを見かけたものがあること、 とう 、等、等を詳細に物語り、そういう訳だから、この両人の行方不明事件の裏には、あの怪物がいるに ちがい ない。しかも、その恐ろしい罪を本物の品川四郎に転嫁しようと企らんでいるに相違ないと結論したのである。
この奇怪千万な物語が、波越氏を、又明智小五郎をも、打ったことは たしか である。波越氏の如きは、赤ら顔を、一層上気させて、熱心に聞入っていた。
物語を終って、聞手が事情を呑込んだと見ると、品川氏はホッと安堵の体で、「いつでも必要な時には呼び出して下さる様に」と言葉を残して いとま を告げて立去った。
「小説みたいな話だ。 双生児 ふたご でなくて、そんな寸分違わぬ男がいるなんて信じられん様な気がするがね」
波越氏は、品川の言葉に従って手配を運んだものかどうかと迷っている様子だ。
「非常に面白い。信じる信じないは別として、これは馬鹿に面白い事件らしいよ」
明智はいたずらっ子みたいな表情をして云った。
「面白いには面白いが」
「イヤ、僕の云うのは、君の意味とは違うのだよ。今の男は少くとも手品にかけては、玄人も及ばぬ手腕を持っているということだ」
「な、何だって」
明智が変なことを云い出したので、波越氏はちょっと 面食 めんくら った形である。
「マア、その腕の浸けてある瓶を検べて見るがいい。君は話に夢中になって、あの男の挙動を注意しなかった様だが、あいつ大変な奴だよ」
波越氏はそれを聞くと、ハッとした様に立上って、窓際に近づき、瓶の覆いの 白布 はくふ を取りのけて見た。同時に「アッ」という叫声。瓶の底に、一本の指が切離されて、フワフワと漂っている。
「指環が、指環が」警部はあいた口がふさがらぬ。
「実にうまい手品師じゃないか。指環の彫刻を検べると見せかけて、すばやく指を切って、指環だけ抜取ってしまったのだ。 大切 だいじ な証拠を抜取ってしまったのだ。指に食入っているので切らなければ抜けなかったのだよ」
「それを君は」警部は真赤になって呶鳴った。「知りながら黙っていたのか」
「ウン、あんまり見事な腕前に見とれてね、だが、安心し給え、指環はここにある」明智はそう云って、チョッキのポケットから白金の細い指環を出して見せた。
「いつの間に?」
「あの男を戸口へ見送りに立つ時さ。あいつ、まさかここにもう一人手品使いがいるとは知らなかったろう」
「アア、又君の 酔狂 すいきょう か。それはいいが、肝腎のあいつを逃がしてしまったじゃないか。指環よりも、あいつの方が大切だ、証拠 湮滅 いんめつ にやって来るからは、あいつこそ犯人かも知れない」
「僕はそうは思わぬ。指環のなくなったことはすぐ知れるのだ。それを顔をさらして盗みに来る奴が真犯人だろうか。まさかそんな無茶をする奴はあるまい。多分部下のものだよ。今騒ぎ立てたら、大物が逃げてしまう。マア、慌てなくてもいい。こいつはひどく面白そうだから、僕も一肌脱ぐよ。イヤ、あいつを追っかけるのは止し給え。この位の犯人になると、黙っていても向うから接近して来るものだよ。現に今の仕草だって、見方によれば我々に対する挑戦じゃないか」
如何 いか にも犯人が警察に戦いを挑んだのは事実であった。だが、その外の点では、流石の明智も飛んだ思違いをしていたのだ。それ程犯人のやり方がずば抜けていたのだ。明智の思違いは間もなく分る時が来た。そんな議論をしている に、三十分程無駄な時間が過ぎた。そこへさい前の取次巡査が、変な顔をして、又名刺を持って来た。
「品川四郎」今度のは科学雑誌社長の肩書がない。
「今の男じゃないか」
「そうの様です」
「そうの様ですって、顔を見れば分るじゃないか」
「エエ、併し……」
巡査は何故か妙な顔をして、答えかねている。
「兎も角、ここへ引っ張って来たまえ。逃がしちゃいかんよ」
警部は厳しい調子で命じた。
待つ程もなく、品川四郎がドアの所に現われた。取次巡査はそのうしろに、逃がすまいとがんばっている。
「何かお忘れものでも」警部は いて笑顔を作って云った。
「エ?」品川氏はどぎもを抜かれた形だ。
「君は三十分程前に、指環を抜取って帰ったばかりじゃありませんか。途中で指環を落したとでもいう訳ですか」
「エ、僕が三十分程前に、ここへ来ましたって。この僕が?」品川氏は何が何だか分らぬ様子であったが、間もなく部屋の空気や警部の表情から、ある恐ろしい事実を察して、サッと顔色を失い、その場へ棒立ちになってしまった。
「あいつだ、あいつに せん を越されたのだ」
品川氏は空ろな眼で一つ所を見つめたまま、ぶつぶつと呟いていたが、やがて気を取直して、
「よく見て下さい。この僕でしたか、こんな服装をしていましたか」
云われて見ると、同じ黒の上衣、同じ縞ズボンではあったが、 地質 じしつ や縞柄が違っていた。真に夢の様な出来事である。あまりのことに主客とも一座しんと静まり返ってしまった。
「すると、あいつ、何から何まで本当のことを云ったのだな。僕達を 瞞着 まんちゃく する夢物語ではなかったのだな」
流石の明智小五郎も、この想像の外の奇怪事に、思わず席を立って、 真蒼 まっさお になって叫んだ。彼は嘗つてこの様な痛烈な侮辱を こうむ った経験を持たなかったのである。
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