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 こんどは、少年たんていだんが、ルビーのカブトムシをさがす番でした。
五月二十五日午後三時二十分、一本スギのてっぺんからはいれ。おそろしい番人に注意せよ。
という手紙のとおりに、小林だんちょうとユウ子ちゃんと、木村くんと井上くんと、ノロちゃんの五人が、世田谷区の一本スギの原っぱへやって来ました。
 木のぼりのめいじんのノロちゃんが、高いスギの木のてっぺんへのぼりましたが、はいるあななんて、どこにもありません。ノロちゃんは、しばらく、あたりを見まわしていましたが、なにを思ったのか、原っぱに長くよこたわっているスギの木のかげをゆびさしながら、さけびました。
「あそこだよ。あそこに、入口があるんだよ。」
 それを聞くと、小林だんちょうも、はっとそこへ気がつきました。
「ああ、そうだ。てっぺんというのは、スギの木のてっぺんのかげのところなんだ。」
 ノロちゃんが木からおりるのをまって、みんなで、スギの木のかげのさきっぽまで行ってみました。
 そのへんには、たけの高い草がしげっています。小林くんは、この草の中へふみこんでいってさがしていましたが、やがて、
「あっ、ここにほらあながある。ここが、入口にちがいないよ。」
と、みんなをよびあつめました。それは、さしわたし六十センチぐらいのせまいあなでした。
 中はまっくらですから、井上くんと木村くんが、よういのかいちゅうでんとうをつけ、井上くんがさきになって、あなの中へはいこんでいきました。
 せまいところは三メートルほどで終り、にわかにあながひろくなって、下の方へ、石だんがついています。もうたって歩けるのです。
 石だんをおりると、しょうめんに、大きな鉄のとびらがしまっています。まほうはかせの手紙には、「おそろしい番人に注意せよ。」と書いてありました。きっと、そのおそろしいやつが、とびらのむこうにまちかまえているのだろうと思うと、みんな、むねがどきどきしてきました。
 でも、ここまで来て、ひきかえすわけにはいきません。
 井上くんは、とびらのとってをつかんでおしてみました。
 すると、かぎもかけてないらしく、鉄のとびらは、キイッとぶきみな音をたてて、むこうへひらきました。
 かいちゅうでんとうで、その中をてらしてみましたが、なんにもありません。ただ、まっくらなほらあなが、ずっとおくの方へつづいているばかりです。
 五人は、井上くんをさきにたてて、おずおずとそのくらやみの中へはいっていきました。
 おくびょうもののノロちゃんは、ぶるぶるふるえながら、小林だんちょうについていきました。それに、ユウ子ちゃんは、女の子ですから、まもってやらなければなりません。小林くんは、両手で、ノロちゃんとユウ子ちゃんの手をひいて、すすんでいきます。すこし行くと、ほらあなのまがりかどへ来ました。
 そこをひょいとまがると、みんなは「あっ。」といったまま、たちすくんでしまいました。すぐ目の前に、とほうもなく大きなばけものがうずくまっていたからです。そのかおはきいろで、まっ黒なふといしまがついていました。せんめんきほどの大きな目が、やみの中で光っていました。
 ステッキをたばにしたような、ふといひげのはえた大きな口、その口から二本の白いきばが、にゅっとつき出ています。トラを百ばいも大きくしたようなばけものです。そのおそろしいかおが、ほらあないっぱいになって、あごが、じめんについているのです。
 どこからか、なまぐさい、強い風がふきつけてきました。
「うへへへへ……。かわいい子どもたちが来たな。おいしそうなごちそうだ。いま、たべてやるからな。うへへへへ……。」
 おばけのトラが、そんなことをいって、ぶきみにわらいました。その声が、ほらあなにこだまして、なんともいえないおそろしさです。
 そして、おばけは、二メートルもあるような大きな口をがっとひらきました。
 五人は、にげようとしても、じしゃくでひきつけられたように、どうしてもにげることができません。そして、いつのまにか、おばけのトラの口の前まですいよせられ、つぎつぎと、口の中へのまれてしまいました。
 口の中には、まっかな大きなしたがうごめいていました。
 五人は、そのしたの上にころがったまま、気をうしなったようになっていました。
 それにしても、地のそこに、どうしてこんな大きなばけものがすんでいるのでしょう。ばけものにたべられた子どもたちは、これから、いったいどうなるのでしょうか。
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