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巨人の顔

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:巨人の顔外の廊下はまっ暗です。悪人たちは、みんな寝てしまったのか、なんの物音も、聞こえてきません。小林君は、しばらく、耳
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巨人の顔


外の廊下はまっ暗です。悪人たちは、みんな寝てしまったのか、なんの物音も、聞こえてきません。
小林君は、しばらく、耳をすまして、じっとしていましたが、もうだいじょうぶと思ったのか、半ズボンのポケットから、万年筆型の懐中電灯をとりだして、それで足もとを照らしながら、音をたてないように、廊下を歩いていきました。廊下は白っぽい壁です。
じきに、まがり角があって、それから、廊下が左右にわかれていました。右のほうは、ゆうべ、トランクからだされた部屋のあるほうです。小林君は、そちらへいかないで、左にまがりました。
すこしいくと、大きな白っぽいとびらにつきあたりました。その扉には錠がかかっていて、そこからさきへはいけません。小林君はしかたがないので、あとにもどろうとしました。
そのときです。二メートル四方もある、その大扉から、とつぜん、とほうもないものが浮きだしてきたではありませんか。
巨人の顔です。ギラギラ光った巨大な目が、こちらをグッとにらみつけています。一メートルもある大きな口が、グワッとひらいて、白い牙があらわれました。そして……、
「ウワン、ウワン、ウワン、ウワン……。」
あのゴングの声です。ドラを鳴らすような、ものすごいひびきです。
小林君は、いきなり逃げだしました。ところが、廊下を走っていくと、また、目の前に、あの顔が、ボーッとあらわれてきたではありませんか。そして、巨大な口を、みにくくゆがめて、「ウワン、ウワン、ウワン……。」と笑うのです。
窓のない家には、ばけものがすんでいたのです。しかも、巨大な顔ばかりで、からだのないばけものです。
小林君は、無我夢中でじぶんの部屋に逃げもどり、ピッタリとドアをしめて、中から、とってをおさえていました。さすがの小林君も、このとほうもないばけものには、すっかりおびえてしまったのです。
まもなく、廊下に足音が聞こえてきました。だれか、やってくるのです。ドアのとってが、外からグーッとまわされました。
小林君は、いっしょうけんめいに、とってをにぎっていましたが、外の力のほうが強くて、とうとう、パッと、ドアがひらきました。
「きさま、女ににあわない、だいたんなやつだなっ。……ひょっとすると……。」
とびこんできて、やにわに、どなりつけたのは、あのいやらしい怪物ゴングでした。
かれは何を思ったのか、ツカツカと、小林君のそばによると、ランランと光る目で、じっと、その顔をにらみつけていましたが、ヒョイと手をのばしたかと思うと、小林君の頭の毛をつかんで、いきなり、かつらを、めくりとってしまいました。
すると、マユミさんにばけた女のかつらの下から、小林君の少年の頭が、あらわれたのです。
「きさま、にせものだなっ。やっぱり思ったとおりだ。男の子が女に変装していたんだ。きさま、なにものだっ? あっ、わかったぞ。小林だな、明智の弟子のチンピラ探偵だなっ。ちくしょう! おれを、まんまといっぱいくわせやがった。」
ゴングは、いまいましそうに、どなりつけたあとで、あごに手をあてて、ちょっと考えていましたが、なにか決心したらしく、ぶきみに笑って、
「ようし、このお礼には、いいことがある。おれは人を殺すのがきらいだから、殺しはしないが、きさまを、おもしろいものの中へいれてやる。運がわるければ、そのまま死んでしまうのだ。だが、そんなことは、おれの知ったことじゃない。おれが手をかけて殺すのじゃないのだからな。ウフフフ……、こいつは、うまいおもいつきだぞ。ウフフフ……。」
ゴングが笑うと、どこからともなく、あのぶきみな音が、ウワン、ウワン、ウワン……と、聞こえてくるのでした。
ああ、ゴングのおもいつきとは、いったいどんなことなのでしょう。殺すのではないけれども、運がわるければ、死ぬかもしれないとは、なんという恐ろしいたくらみでしょう。
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