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白いライオン

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:白いライオンチンピラについていってみますと、さいしょはいってきたときに通った、あき地のまん中にある白いライオンのまわりに
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白いライオン


チンピラについていってみますと、さいしょはいってきたときに通った、あき地のまん中にある白いライオンのまわりに、三人のチンピラ隊員が、集まっていました。
「ここだよ。このライオンの中に、だれかいるらしいんだよ。ほら、聞いてごらん。」
チンピラのことばに、耳をすましますと、石膏のライオンの中から、コツコツと、みょうな音が聞こえてきます。だれかがくつで、ライオンのからだの内がわを、けりつづけているような音です。
野上君は懐中電灯をつけて、四角い石膏の台と、ライオンのからだとのすきまをしらべながら、グルッと、ひとまわりしてみました。
すると、すこし、すきまの広いところがありましたので、そこに口をつけるようにして、
「だれだ? この中にいるのはだれだ? 俊一君じゃないのか?」
と呼びかけました。
「ううん……。」
中から、かすかに人間のうめき声がもれてきます。俊一君は、さるぐつわをはめられていました。ですから、ものがいえないのでしょう。ただ、うなるほかはないのでしょう。
「よしっ、みんなで力をあわせて、このライオンのからだのこちらがわを、持ちあげてみよう。」
チンピラ隊員が、ぜんぶ野上君のそばに集まってきました。そして、台とライオンとのすきまに、手をかけて、一、二、三のかけ声で、力まかせに持ちあげました。
すると、うすい石膏とみえて、どうにか持ちあがるのです。ライオンのからだが横にかたむいて、二十センチほどのすきまができました。
そのすきまから、懐中電灯を照らしてみますと、中にひとりの少年がころがっていました。さるぐつわをはめられ、手足をしばられています。たしかに、花崎俊一君です。
チンピラのひとりが、どこからか、てごろな棒ぎれを持ってきて、持ちあげたすきまの、つっかい棒にしました。しかし、それでは、まだせまくて、俊一君を、外へひきだすことができません。
「もうすこし、長い棒がいいよ。」
だれかがいいますと、またべつのチンピラが長い棒を拾ってきました。じつに、すばしっこいものです。
みんなが力をあわせて、うんとこしょと、高く持ちあげておいて、その長い棒をささえにしました。そして、そのすきまから、やっとのことで、俊一君をひっぱりだすことができたのです。
みんなで、俊一君の手足のなわをとき、さるぐつわをはずしました。
「俊一君、ぼくだよ。野上だよ。ここにいるのは、少年探偵団のチンピラ別働隊の子どもたちだ。だいじょうぶかい? けがはしなかったかい?」
「うん、だいじょうぶだよ。きみたちみんなで、助けてくれたんだね。ありがとう。」
縄をとかれた俊一君は、起きあがって、みんなにお礼をいうのでした。
「あっ、いいことがある。ちょっと、そのつっかい棒をとらないで、待っててくれよ。」
チンピラのひとりが、そういったかと思うと、野上君の懐中電灯をひったくるようにして、どこかへ、かけだしていきました。
野上君は、俊一少年に、悪者の自動車を追跡したこと、チンピラ隊のひとりが白いライオンに気づいて、みんなで助けだしたことなどを話してきかせました。
やがてさっきのチンピラが、なにか大きなものを、こわきにかかえて帰ってきました。野上君が懐中電灯をうけとって、照らしてみますと、それは学生服をきた少年でした。あの小道具部屋にあった少年人形でした。
「こんなもの持ってきて、どうするつもりだい。」
「わからないのかい? 頭がわるいなあ。俊一さんのかわりに、この人形を、ライオンの中にいれておくのさ。やっぱり、手足をしばって、さるぐつわをはめておくほうがいいや。そうすれば、こんど、悪者がのぞきにきたとき、ほんとの俊一さんだと思って安心するよ。でも、よくみると、人形なので、おったまげるというわけさ。ウフフフフ……、なんと、うまいかんがえじゃないか。ねえ!」
このチンピラのとんちに、みんな、ウフ、ウフ、笑いだしてしまいました。そして、人形の手足をしばり、さるぐつわをはめて、ライオンのからだの中に、おしこむのでした。
「ほらね、そっくりだろう。さるぐつわで口がかくれてるから、ちょっと、人形とは気がつかないよ。悪者が、おったまげる顔を見てやりてえな。」
それから、つっかい棒をはずして、ライオンをもとのとおりにすると、みんなは、俊一君をかこむようにして、撮影所の外にでました。もうあたりはまっ暗です。そのまっ暗な中からヌーッと、かげぼうしのようなものが、あらわれました。
「みんな、うまくやったね。子どもを、とりもどしたのかい?」
「だれだっ?」
野上君が、俊一君を、うしろにかばって、どなりつけました。
「おれだよ。おまえたちを自動車に乗せてやった運転手だよ。」
「ああ、そうか、だれかと思って、びっくりした。俊一君は、石膏のライオンの中にいれられていたんだよ。それを、ぼくたちが助けだしたのさ。」
「そりゃ、よかったな。さあ、もう一度、おれの自動車に乗りな。どこへでも送ってやるよ。」
こうして、花崎俊一君は、ぶじに家にもどることができたのです。しかし、それで、この事件がおしまいになるはずはありません。俊一少年のゆくてには、まだまだ、恐ろしいできごとが待ちかまえているのです。
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