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鉄のかんおけ

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:鉄のかんおけ窓のないふしぎな部屋で、ゴングのために、変装を見やぶられた小林少年は、あれからどうなったのでしょう。そのとき
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鉄のかんおけ


窓のないふしぎな部屋で、ゴングのために、変装を見やぶられた小林少年は、あれからどうなったのでしょう。
そのとき、ゴングは、小林少年の腕をまくると、どこからか注射針をとりだして、チクリとさしこみ、てばやく、なにかの薬を注射しました。すると、小林君は、くらくらとめまいがして、あたりがまっ暗になり、なにもわからなくなってしまいました。
それから、どれほど時間がたったのでしょうか。小林君は、ガクンと、恐ろしい力で、頭をなぐられたような気がして、目をさましました。しかし、あたりはまっ暗で、いま、どこにいるのか、さっぱりけんとうがつきません。
ゆらゆらとゆれています。めまいのせいかと思いましたが、そうではなくて、部屋ぜんたいが大地震のように、たえまなく、ゆれているのです。
心臓が、ドキドキしてきました。なんだか、おさえつけられるような、息ぐるしさです。あたりをさぐろうとしましたが、手をのばしきらないうちに、かたい、つめたい壁にさわりました。それじゃあ、部屋のすみにいるのかしらと、べつの方角へ手をのばすと、そこにも、かたい壁があります。あわてて、四方八方をさぐってみましたが、どこもみんな、かたい壁です。コンクリートではありません。鉄の壁です。
なんだか、大きな水道の鉄管の中へ、とじこめられているような気がしました。しかし、その鉄管は横になっているのではなくて、たてに立っているのです。そして、ゆらゆらと地震のようにゆれているのです。
小林君は、床にさわってみました。床も、つめたい壁です。手をのばして、頭の上をさぐってみました。てんじょうも鉄の板です。つまり、鉄でできたかんおけのようなものの中に、とじこめられていることがわかりました。
でも、この鉄のかんおけは、どうして、こんなにゆれているのでしょう。地の底に、うずめられたのではありません。まさか、空中をただよっているのでもないでしょう。すると? ああ、わかりました。水の上をただよっているのです。このゆれかたは、船のゆれるのと、そっくりです。
小林君は、トランクにいれられて、隅田川になげこまれたことを思いだしました。あの窓の、一つもないみょうな部屋は、きっと、隅田川の底にあったのです。妖人ゴングのすみかは、川の底にあったのです。なんという、うまいかくれがでしょう。
そこから、この鉄のかんおけにいれて、ほうりだされたのにちがいありません。鉄のかんおけの中には空気がはいっていますから、水の上に浮きあがって、川を流れているのでしょう。
ゴングは、「きさまが生きるか死ぬかは、運にまかせるのだ。」といいました。そうです。運がわるければ、死んでしまうのです。だれかがこの鉄のかんおけをみつけて、助けてくれなければ、小林君は死んでしまうのです。うえ死にするまえに、空気の中の酸素がなくなって、死んでしまうのです。
小林君は、そこまで考えると、あわてて、鉄のかんおけの内がわを、さぐりまわりました。どこかにふたがあって、ひらくようになっているだろうと思ったからです。
しかし、どこにも、ひらくようなところはありません。みんな鉄のびょうで、しっかり、とめてあって、小林君の力では、どうすることもできないのです。
そのうちに、だんだん、息ぐるしくなってきました。胸がドキドキして、耳がジーンとなりだし頭がいたくなってきました。空気の中の酸素が、すくなくなったからです。
一度息をするたびに、酸素がへって、炭酸たんさんガスがふえてくるのです。それを思うと小林君は、気が気ではありません。いまに、鉄のかんおけの中は、炭酸ガスばかりになって、死んでしまうのです。ああ、どうすればいいのでしょう。助けをもとめようにも、あつい鉄の板でかこまれているのですから、声が、外までとどくはずはないのです。
からだじゅうに、つめたい汗がにじみだしてきました。心臓はいよいよドキドキとおどりだし、息がくるしくなってきました。酸素が、すこししか残っていないのです。
もう、だまっているわけにはいきません。声が、外まで聞こえないとわかっていても、助けをもとめないではいられません。
「助けてくれえええ……。」
小林君は、せいいっぱいの声で叫びました。声だけではたりないので、手と足を、めちゃくちゃに動かして、鉄の板をけったり、たたいたりしました。
×    ×    ×
そのとき、隅田川と東京港のさかいめの造船工場のある川岸で、ふたりの労働者が、岸の近くに流れついた赤いブイを、ふしぎそうに見つめていました。朝の六時ごろのことです。
「へんだなあ、ブイがこんなところへ流れてくるなんて。きっと、おきのほうにつないであったのが、くさりがきれて、流れてきたんだね。」
「だが、あのブイは、波もないのに、いやに動くじゃないか。大きな魚が、下からひっぱっているのかもしれないぜ。」
ふたりの労働者は、気味わるそうに顔を見あわせました。赤くぬったブイは、魚つりのうきを何千倍にもしたようなものです。ですから、このブイをひっぱっている魚も、クジラのように大きなやつかもしれません。まさか、隅田川へクジラがはいってくるはずはないのですが、それにしても、こんな大きな鉄のブイを動かしているのは、どんな魚だろうと、うす気味わるくなってくるのでした。
「おやっ、へんな音が聞こえるぜ。どっかで、コンコンと、なにかたたいているような音が。」
「そうだな。まだ工場は仕事をはじめていないのに、いったい、なにをたたいているんだろう?」
「おい、この音は、あのブイの中から聞こえてくるようだぜ。見たまえ、ブイがヒョコヒョコ動くのと、あの音と、調子があっているじゃないか。」
「いやだぜ、ブイの中に、なにか動物でもはいっているのかな。」
「ばかをいっちゃいけない。ブイの中に動物なんか、はいれるわけがないじゃないか。」
「おやっ! ますますへんだぞ。かすかに人間の声が聞こえてくる。遠くのほうで、子どもが泣いているような声だ。」
「いまごろ、このへんに、子どもなんか、いやしない。やっぱりブイの中かな?」
「だが、ブイの中に、人間がはいっているなんて、聞いたこともないね。」
話しているうちに、ブイは、ヒョコヒョコとゆれながら、岸とすれすれのところまでただよってきました。
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