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生か死か

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:生か死かブイの中では、小林少年が、声をかぎりに叫んでいました。鉄のかんおけと思ったのは鉄のブイだったのです。「助けてくれ
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生か死か


ブイの中では、小林少年が、声をかぎりに叫んでいました。鉄のかんおけと思ったのは鉄のブイだったのです。
「助けてくれええ……、息がつまりそうだ。はやく、ここから出してくれええ……。」
もう声がでません。目がくらんで、気をうしないそうになってきました。大きな声をだし、手足を動かしたので、いっそう、息ぐるしくなったのです。心臓は、おそろしいはやさで、おどっています。
たらたらと、口の中へ汗が流れこみました。なんだか、ぬるぬるした汗です。いや、へんなにおいがします。血のにおいです。手でふいてみると、べっとりと、ねばっこいものがつきました。汗がこんなに流れるはずはありません。鼻血が出たのです。いつまでもとまりません。気味のわるいほど流れだしてくるのです。
耳の中で、セミでも鳴いているようなやかましい音がして、頭のしんが、ジーンとしびれてきました。
×    ×    ×
「おい、やっぱりそうだぜ。あのブイの中から、みょうな音が聞こえてくる。荷あげ場までおりて、ようすを見ようじゃないか。」
「うん、それじゃ、そばへいって、よくしらべてみよう。」
ふたりの労働者は、坂になった荷あげ場の水ぎわへ、おりていきました。ブイは、ちょうど、その水ぎわに流れついていたのです。
岸から手をのばせば、ブイにとどくので、労働者のひとりが、ブイの外がわを、コンコンと、たたいてみました。
すると、中から、おなじように、たたきかえす音が聞こえたではありませんか?
「おうい、ブイの中に、人間がはいっているのかあ?」
もうひとりが、大きな声でどなりました。
すると、ブイの中から、なにか、子どもの泣いているような、かすかな声が聞こえてくるような気がしました。
「やっぱりそうらしい。鉄板でかこまれているので、よく聞こえないが、たしかに人間がはいっている。どうすればいいだろう?」
「道具がなくちゃあ、どうにもできない、工場までいって、だれか、よんでこようか。」
「うん、それがいいな。じゃあ、おまえ、いってくれるか。」
「よし、ひとっぱしり、いってくる。ここに待っててくれよ。」
ひとりが、そういって、うしろに見える工場のほうに、かけだしていきました。
×    ×    ×
ブイの中では、小林君は、もう息もたえだえに、ぐったりとなっていました。
外からコンコンと、たたいているようです。こちらもコンコンと、たたきかえしました。
かすかに、人の声がしたようです。とうとうだれかが、ブイをみつけてくれたのでしょうか。
「助けてくれえええ……、ブイをこわして、出してくれえええ……。」
さいごの力をふりしぼって、どなりました。
すると、また、鼻から、おびただしい血が、たらたらと流れだすのです。
もうだめだと思いました。このがんじょうなブイが、急にこわせるものではありません。それまで生きていられそうもないのです。もう、頭が、ボーッとかすんで、なにがなんだか、わからなくなってきました。
恐ろしい夢を見ているような気持です。妖人ゴングの、牙をむきだした恐ろしい顔が、やみの中から、グーッと近づいてきて、目の前いっぱいにひろがり、ゲラゲラと笑うのです。
そうかとおもうと、なつかしい明智先生が、にこにこしながら、助けにきてくれる姿が見えます。
「先生!」と叫んで、とびつこうとすると、明智探偵の姿は、スーッと、むこうへ、とおざかっていくのです。
×    ×    ×
そのとき、川岸へ、さっきの労働者が、もうひとりの男をつれて、かけつけてきました。
「この人が、ブイのひらきかたを知っているというんだ。」
「そうか、それはよかった。すぐにあけてみてください。どうも、中に人間がはいっているらしいんです。」
男は、まるく巻いた縄を持っていました。そのはしを輪にしてブイに巻きつけると、ふたりの労働者に、岸の方へ、力いっぱい、ひっぱっているようにたのんで、じぶんは、大きなスパナを手にして、ブイのそばによると、鉄板をしめつけてあるびょうを、はずしにかかりました。
そして、一つびょうがとれたかとおもうと、つぎのびょうです。二分、三分、五分……時間は、みるみるすぎさっていきます。
ああ、小林君は、どうしているのでしょう。もう、息がたえてしまったのではないでしょうか。
やっと、八つのびょうがとれました。あとはハンマーで、ブイのふたをはずせばよいのです。
ガーン、ガーンと恐ろしい音がしました。ブイのふたに、すきまができました。
「しっかり、縄をひっぱっているんだよ。いいかい。」
男はそういっておいて、両手をふたのすきまにかけると、力まかせに、むこうへはねのけました。そして、ブイの中をのぞいたかと思うと、
「あっ、人間だっ。男か女かわからない、へんなやつが、ぐったりしている。死んでいるのかもしれない。」
そう叫んで小林君のからだを、ブイの中から、荷あげ場にひきだしました。ふたりの労働者も縄をはなして、そこへ近よってきます。
「あっ、顔が血だらけだ。殺されたんだろうか。」
「こりゃおかしいぞ。女の服をきているが、頭は男のようだ。それに、これは、まだ子どもらしいぜ。むごたらしいことをしたもんだな。」
「いや、まて、まだ死んじゃいない。みゃくがある。この血も、どうやら鼻血らしいぜ。」
ブイのふたをひらいた男が、小林君の上にしゃがみこんで、持っていたタオルで、顔の血をふきとりました。
「ただ、気をうしなっているばかりだ。こうすれば、いまに、息をふきかえすよ。」
男はこんなことになれているとみえて、小林君の両手をつかむと、一、二、一、二、と、あげたり、さげたりして、人工呼吸をほどこすのでした。
そのあいだに、労働者のひとりが近くの交番へ、このことをしらせましたので、まもなく警官がかけつけてきました。
「あっ、目をひらいたぞ。しっかりしろ。もうだいじょうぶだ。」
人工呼吸をやっていた男が、叫びました。
小林君は、荷あげ場のコンクリートの上に、あおむけに寝かされたまま、ぼんやりと、あたりを見まわしています。
「おい、気がついたか。きみは、いったい、どこのだれだ。どうして、ブイの中にはいっていたのだ。だれかに、とじこめられたのか。」
警官が、小林君の顔の上にしゃがんで、大声でどなりました。
小林君は、しばらくは口をもぐもぐやるばかりで、ものをいう力もないようにみえましたが、やっと、かすかな声をだしました。
「ぼく、明智探偵の助手の小林です。」
「えっ、明智探偵の? それじゃあ、きみは、あの小林少年か?」
警官はびっくりしたように、聞きかえしました。小林少年のことは、よく知っていたのです。
「それじゃあ、だれかにブイの中へ、とじこめられたんだね。あいてはだれだ?」
「妖人ゴングです。」
「えっ、妖人ゴングだって?」
警官の顔色が、さっとかわりました。そして、おもわず立ちあがると、怪物がそのへんに、かくれてでもいるように、キョロキョロと、あたりを見まわすのでした。
もうそのころは、七時にちかくなっていましたので、川岸の人どおりが多くなり、荷あげ場は、みるみる黒山の人だかりになってきました。
「くわしいことは、あとで話します。ぼくを明智探偵事務所へ送ってください。」
小林君は起きあがりながら、警官にたのむのでした。
警官は交番に帰って、本署にこのことをしらせ、明智探偵にも連絡したうえ、小林君をタクシーにのせて、麹町アパートの探偵事務所へ送りとどけました。
事務所についたころには、小林君はすっかり元気をとりもどしていました。そして、出むかえた明智探偵をみると、
「先生っ!」と叫んで、いきなりとびついていって、その胸にだきつくのでした。
「よかった、よかった。きみがぶじに帰ったのは、なによりうれしいよ。とんだめにあったそうだね。」
明智探偵はそういって、しずかに小林少年の背中を、なでてやりました。
「ぼく、もう死ぬかと思いました。先生におめにかかれないかと思いました。」
小林君は、なつかしそうに明智探偵の顔を見あげて、涙ぐむのでした。
こうして、小林少年は、あやうい命を助かりました。花崎マユミさんは、小林君が身がわりをつとめたのですからぶじですし、弟の俊一君も、野上少年とチンピラ隊によって助けだされ、妖人ゴングのたくらみは、すべてむだにおわってしまいました。
しかし、こんなことで、あきらめるような怪物ではありません。やがて第二の攻撃が、はじまるのです。妖人ゴングとは、そもそも何者でしょう? かれは、いったい、なんのために、マユミさんや俊一君をねらうのでしょう?
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