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名探偵の奥の手

时间: 2023-09-15    进入日语论坛
核心提示:名探偵の奥の手マユミさんと俊一君は、しかたがないので、縁がわに腰かけている明智の上半身を、ほそびきでぐるぐると巻きつけま
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名探偵の奥の手


マユミさんと俊一君は、しかたがないので、縁がわに腰かけている明智の上半身を、ほそびきでぐるぐると巻きつけました。
ゴングは、ピストルをかまえながら、そのそばにより、ほんとうにしばってあるかどうかをたしかめ、ほそびきの結びめを、いっそうかたく締めつけるのでした。
「明智先生、きのどくだが、おれの勝ちだね。マユミと俊一は、おれがつれていくよ。いなかじいさんに手をひかれた、いなか者のきょうだいだ。だれもあやしむものはない。さあ、ふたりとも、こっちへきなさい。」
ゴングのいなかじいさんは、急にやさしい顔になって、ふたりの手をとろうとしました。
すると、そのとき、みょうなことが起こったのです。
クックックックッ……というような、へんな音が聞こえてきました。おやっと思って耳をすますと、その音は、からだをしばられて、うつむいているしらひげの口から、もれているようです。
その音が、だんだん大きくなってきました。明智の老人が、首をあげました。おかしくてたまらないという顔つきです。笑いをかみころしていたのです。それが、とうとう爆発しました。
「ワハハハハ……、きみのほうに奥の手があれば、ぼくのほうにだって、いろいろ奥の手があるんだよ。小林君。かつらを取って、見せてやりたまえ。」
それを聞くと、いなかむすめのマユミさんが、両手を頭にあげて、女のかつらを、スッポリとぬいでみせました。女の子だとばかり思っていたのが、じつは、男の子の変装だったのです。
「ハハハハ……。どうだね、また、いっぱい食ったね。小林君は、このあいだ、マユミさんに変装して、きみにひどいめにあったばかりだ。おなじトリックに、二度もかかるなんて、ゴングも、もうろくしたもんだね。
それから、この子ども、俊一君じゃないよ。俊一君によく似た子どもをさがしだして、ここへつれてきたのさ。ハハハハ……。どうだね、せっかく、ぼくをしばっても、マユミさんと俊一君がにせものでは、なんにもならなかったね。
いや、そればかりじゃない。ぼくの奥の手は、まだあるんだよ。ほら、見てごらん。ぼくは、縄ぬけの名人だからね。」
しらひげの老人は、そういって、すっくと立ちあがったかとおもうと、しばられていた両手を、ヌッとつきだしてみせました。ほそびきは胴体に、ぐるぐる巻きになっていますが、両手がぬけてしまったのですから、もうなんの不自由もありません。
勝ちほこっていたゴングのいなかじいさんは、このふいうちに、あっけにとられて、ピストルを持つ手も、だらりとたれたまま、ぼんやりつっ立っていました。
きびんな小林少年が、それを見のがすはずはありません。女の寝まきをきた小林君のからだが、ちゅうにおどりました。
「あっ、ちくしょう!」
いなかじいさんが、どなったときには、もうピストルは、小林君の手ににぎられていました。ふいをうって、ピストルをうばい取ってしまったのです。
小林君は、そのピストルをかまえて、ゴングにねらいをさだめました。こんどは、ゴングじいさんのほうが、両手をあげる番でした。
しかし、ゴングもさるものです。いちじはおどろいたようですが、たちまち、気力をとりもどして、にやにや笑いだしました。
「ウフフフ……、で、どうしようというのだね。ピストルをうつのかね。だが、きみには、うてないのだよ。うてば、おれが死ぬんだからね。きみたちは、人ごろしなんか、できっこないよ。では、ピストルでおどかして、おれをしばろうとでも、いうのかね。ところが、それもだめだよ。おれは、しばられないからね。おれはもう、このうちに用事はないから、おいとまをするばかりだ。それじゃあ、あばよ。」
ゴングのじいさんは、相手がピストルをうつはずはないとたかをくくって、いけがきのしおり戸のほうへ、ゆうゆうと歩いていくのでした。
「待ちたまえ!」
明智探偵が、自信にみちた、おもおもしい声で呼びかけました。ゴングじいさんは、思わず立ちどまって、こちらをふりむきます。
「きみ、あれが聞こえないかね。ほら、だんだん、近づいてくるじゃないか。ぼくのほんとうの奥の手というのは、これなんだよ。」
明智は、にこにこ笑っていました。
ゴングじいさんの顔が、まっさおになりました。いけがきのむこうから聞こえてくる音が、恐ろしい意味をもっていたからです。
それは、自動車の音でした。いけがきのむこうに、その黒いボディが見えたかとおもうと、キーンというブレーキの音がして、しおり戸の前に自動車がとまり、そのドアがひらいて、三人の警官が、手に手にピストルを持って、とびだしてくるのが見えました。
立ちすくんだゴングじいさんのうしろから、明智の声がひびきます。
「わかったかね。きみはもう、のがれられないのだ。無電をそなえつけるひまがなかったので、伝書バトでまにあわせたのだ。さっき、きみが裏のほうへまわっているすきに、ぼくは、伝書バトを飛ばした。近くの町の警察署でかっている伝書バトだよ。
ハトは十分間で警察へ飛んでいった。ハトの足には、ゴングがきたという手紙をいれた通信筒がつけてあった。そこで、警官の出動となったのだよ。ぼくは、いろんなことをいって、きみをひきとめ、この自動車がくるのを待っていたのさ。」
三人の警官は、もう、しおり戸をあけてはいってきました。
ああ、妖人ゴングは、とうとう、つかまってしまうのでしょうか。
しかし、相手は魔法つかいのような怪物です。まだ、どんな奥の手が残っていないともかぎりません。なんだか心配です。胸がドキドキしてきます。
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