日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 星新一 » 正文

最高の悪事

时间: 2017-12-30    进入日语论坛
核心提示:「ボス、このところ、なんだか元気がありませんね。心配です。どうかなさったのですか」 子分のひとりが言った。ボスと呼ばれた
(单词翻译:双击或拖选)
「ボス、このところ、なんだか元気がありませんね。心配です。どうかなさったのですか」
 子分のひとりが言った。ボスと呼ばれたのは、中年の男。すごみのある顔つきで、鋭い目をしている。ある犯罪組織の首領なのだ。
 しかし、このごろずっと、その肩書きにふさわしくなく、豪華な机にむかってじっとしている日が多い。子分が事情を聞きたくなるのも、もっともだ。ボスは答えた。
「からだのぐあいは、なんともない。わたしはある問題について、考えつづけているのだ」
「これは、驚きました。ボスが物思いにふけるとは……」
 子分がふしぎがるのも当然。このボス、若いころから、なにかというと無茶な暴力をふるって名をあげ、顔を売り、強引な実行力でなわばりをひろげ、今日の大きな犯罪組織を作りあげたのだ。思慮ぶかいとか、センチメンタルとは、およそかけはなれた性格の主。
 ボスは言う。
「なにも、変な顔をすることはない。つぎの計画を、ねっているのだ」
「そうでしたか。安心しました。ボスがそんなに熱心に考えているのですから、きっと大仕事なんでしょうね」
「そうだ。しかし、ただの大仕事では、面白くない。回想してみると、わたしはこれまで、悪事悪徳の限りをつくしてきた。しかし、まだやってない悪があるのではないかと、思えてきたのだ」
「ははあ……」
「それをやりたいのだ。なにか、あっというような、ものすごく派手で、悪の歴史に残るようなやつをだ……」
 悪の魅力にとりつかれたような感じだ。たいていのことをやりつくした悪党のボスとなると、そんな心境になるのかもしれない。大物への尊敬の念のこもった口調で、子分は指を折って数えながら言った。
「傷害、恐喝、強盗のたぐいは、われわれ何度もやりましたね」
「とっくのむかしにやったし、何回となくやり、いずれも成功した。なわばり争いにからんで、殺人もやった。また、保険金を取るための、放火もやった。詐欺などは、数えきれないほどだ」
 ぶっそうな言葉がぽんぽん出るが、それを話すボスの顔にはあきあきしたという表情がある。悪事の中毒症状で、まともなことでは満足できないわけであろう。
 子分は思いつくまま、数えあげた。
「文書偽造もやりましたし、麻薬の密売は現在もつづいて、大きな収入源となっている。贈賄もやったし、脱税はしょっちゅうだ。となると、困りましたな、まだ、しのこしている犯罪の種類となると……」
「選挙運動の買収も大がかりにやったし、外国人のスパイの手先にもなった。だが、まだやってない悪事があるような、気がしてならない。うんと非道徳的で、刺激的で、人間性を大きくはずれたようなやつだ。悪魔というものが存在し、それを教えてくれるなら、魂を売り渡していいような気持ちだ。考えてみてくれ」
「はあ……」
 しかし、悪への才能も情熱もはるかに劣る子分たちに、そんなことの思いつけるわけがなかった。ボスひとり、腕を組んで考えつづけることになる。
 しかし、やがてボスは、うれしさにみちた声で叫んだ。
「あった。やっと思いついたぞ」
「本当ですか。それはよかったですね。われわれはボスのためなら、いかなることでも命をかけて働きます。みなが今日あるのは、ボスのおかげなのですから。命令して下さい。どんな仕事なのですか」
 身を乗り出す子分たちを制し、ボスは言った。目には狂的な光がこもり、口もとには楽しげな笑いがただよっている。
「まあ、そうあわてるな。これまでにやったことのない、最初にして最高の悪だ。だから、慎重に計画の打ち合わせをやらなければならない」
「で、どうしましょう」
「あすの夕方、町はずれの、いつもの倉庫に集まってくれ。組織の者の全員を、呼び集めるのだ。情報のもれないよう、気をつけてやってくれ」
「はい。かり集めます。逃げ腰になるやつがいても、おどかしてでも連れてきます……」
 翌日の夕方になった。子分たちは指示された場所に、ひそかに集まった。しかし、時刻がすぎても、ボスはなかなか姿を見せない。
「どうしたのだろう。だれかが密告し、ボスがつかまったのだろうか」
「われわれのなかに、そんなやつはいないさ。もうすぐ現れるだろう」
「しかし、こんどは、どんな悪事なのだろうか。きっと、われわれの予想もしたことのない大計画であることは、まちがいない」
 緊張と期待にふるえながら、小声で話しあって待っていると、そとで声がした。
「警察の者だ。まわりは完全に包囲したぞ。みな、おとなしく出てくるのだ。抵抗してもむだだぞ」
 のぞいてみると、警官がとりまいている。とても逃げられそうにない。また、たよりにするボスが、いないのだ。言う通りに、せざるをえない。みな逮捕されてしまった。
 警察の留置場に押し込められていると、あとからボスもほうりこまれた。それを迎えて子分たちは口々に聞く。
「どうして、こんなことになったのでしょう。あの倉庫に集合したのを、ほかに、だれかが知っているはずはない。それに、まだなにもしていないのだから、逮捕される理由もないはずなのに」
 ふしぎがる子分たちに、ボスは笑いながら言った。
「じつは、わたしが密告したのだ。わたしが警察へ自首し、子分たちの悪事のすべてを知っていて、証拠も持っている、証人にもなりますと言ったのだ」
「それで、われわれがつかまったというのですか。あんまりだ。ひどい……」
 子分たちは泣き、うらみごとを言い、絶望的な声をあげた。ボスはにやにやしながら言う。
「わたしの思いついた、最大の悪というのは、なんだったと思う。これがそうだ。つまり、わたしを信頼しきっている連中を、なさけ容赦もなく裏切って見捨てるという行為だ。こんなに非人間的で、刺激的な悪はない……」
 子分たちは、こみあげる怒りを押さえきれずに言った。
「こうなったら、腹の虫がおさまらない。ここで、みなであなたを、なぶり殺しにしてしまう。あとがどうなろうと知るものか。さあ、覚悟しなさい」
 だが、ボスはさほどあわてずに答える。
「まあ、待て。いまのは冗談だ……」
「冗談にも、ほどがあります。これで、みんな刑務所に送られれば、それで終りじゃないですか」
「いやいや、最高の悪事というのは、それからはじまるのだ。まだやってない悪事に、集団脱獄の残っているのに気がついたのだ。それを、やろうというわけだ。しかも、どうせやるのだから、大きくやろう。刑務所に入っている悪人を、みんな逃がしてしまおうじゃないか。こんなすごい犯罪はないぞ。われわれなら、できるはずだ」
 子分たちはため息をつきながら、敬服の目で言う。
「なるほど。さすがは、われわれのボスだ……」
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%