日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 星新一 » 正文

ネチラタ事件

时间: 2017-12-30    进入日语论坛
核心提示: あすありと思う心のあだ桜、とか申しまして、世の中、つぎの日になにがどうなってしまうものやら、さっぱり見当がつかない。 
(单词翻译:双击或拖选)
 あすありと思う心のあだ桜、とか申しまして、世の中、つぎの日になにがどうなってしまうものやら、さっぱり見当がつかない。
 このごろのように、科学が進んだり、すごい武器ができたりすると、なおさらのこと。朝になって目がさめてみると、夜のうちにミサイルが命中し、自分は死んでいた、なんて……。
 ここにひとりの青年がいて、名は五太郎。頭はとくに悪くもよくもないという、普通の人間。ある研究所につとめている。ある朝、いささか寝坊をした。ねむそうに片目をあけ、時計を見ながら言う。
「やれやれ、つい、ねすごしてしまった。きょうは、遅刻になりそうだ。先生、怒るかもしれない……」
 ねぼけ声で、テレビをつける。交通機関のストか、大事故のニュースでもやらないかな。遅刻の、いい口実になるのだが。上司の安藤博士は、口やかましい人なのだ。
 コマーシャルの声が流れてきた。
〈やい、そのへんのおいぼれや、くたばりそこないの野郎ども。この薬を買いやがれ。この一粒をてめえの馬鹿みたいにあけた口にほうりこみゃ、からだんなかに、馬鹿力や、くそ力がわいてくるてえもんだ……〉
 五太郎はきもをつぶし、目がいっぺんにさめた。そのさめた目で画面を見ると、総合ビタミン剤とかの薬のビンがうつっている。
 なるほど、ついにこういう、ショッキングなコマーシャルも出現するようになったのか。競争が激しくなると、人目を引く奇想天外なのも出るわけだろう。
 そう考えていると、つぎのコマーシャルになった。画面に百科辞典がうつり、女の声が言う。
〈うすのろのガキを持てあましている、そのへんのおっかあどもよ。こいつのひとそろいを、買ってみやがれってんだ。そうすりゃあ、手のつけようのないうすのろも、半馬鹿ぐらいにゃあ浮かびあがらあ……〉
 五太郎はあまりのことに、しばらくぼんやりしていた。そのうちニュースとなり、アナウンサーがしゃべっている。外国の元首が来日した画面。
〈グラニア共和国の親玉が子分を引きつれ、飛行機で空港につきやがった。そして、そのいいぐさがいいや。こんないい国、見たことない、なんてぬかしやがって……〉
 五太郎は、この異変についてのなにかの報道があるかと期待して見ていたが、なんにもなかった。つづいて天気予報となる。
〈……高気圧だなんて、なまいきな野郎が、はり出していやがる。みやがれ。温暖前線はこんなざまだ。ふん。だがな、こんな高級なことは、てめえらとんちきには、わかるめえ。早くいやあ、おてんとさまカッカだが、どうかすると雲がのさばりやがる。ところにより、にわか雨なんて、ぐにもつかねえものが降りやがるかもしんねえ。てめえら、ぼろ傘でも持って出たほうが、気がきいてるってことさ……〉
 五太郎は、一日中でもふしぎがっていたかったが、つとめの身ともなると、そうもいかない。出勤することにした。そとへ出たとたん、となりの家の夫人と顔があう。五太郎は声をかけられる。
「よう、となりの、とうのたった、とんちき坊やのあんちゃん……」
 五太郎、あたりを見まわすが、ほかにだれもいない。自分が呼ばれたらしい。
「はあ……」
「ねぼけづらで、きょろきょろなんて、見ちゃいられんよ。あほたれ。まあ、しっかりやんな……」
 この奥様、いつもは上品すぎるぐらいの言葉づかいなのに、これはまた、なんという変わりようだ。男だかなんだかわからない口調だ。それでいて、かくもぞんざいな話しぶりなのに、身なりや動作はいつもと変わらず、表情はにこやか。五太郎、なにがなんだかわからず「はあ」と答えて、急ぎ足で立ち去る。
 あの夫人、気でもちがったのではないかと、うすきみ悪い。それとも、テレビの影響たちどころにあらわれ、というのかもしれぬ。女とは、テレビにすぐ毒されるものなのだ。いずれにせよ、かかわりあいにならないほうが、利口というものだ。
 駅前の交番では、品のいい老紳士が警官に道をたずねている。
「やい、そこのおまわり。区役所へ行く道を教えやがれ」
「いいか、この、くそったれ町人め。てめえの目がふし穴でなけりゃあ、あそこのうすぎたねえビルが|見《め》えるだろう。あれがそうだ。さあ、とっとと、うせやがれ……」
 あの紳士も警官も、頭がおかしいのだろうか。しかし、こう圧倒的に変人の数が多くなると、とてもたちうちできない。
 五太郎、びくびくしながら改札を通り、ホームへ出る。拡声機が告げている。
「電車は、てめえら、あくびひとつしないうちに、へえってくるぜ。ホームにうろついている、うぞうむぞうども。白線の内側に、さがっとれ。ぼやぼやしてぶっとばされたって、しらねえぞ。ドアが開いたら、乗り降りは、もたもたせずにやんな……」
 身ぶるいするような気分で、五太郎はなんとか研究所につく。足はすくむ一方。この調子だと、先生にどんなにどやされるか、わからない。
 虎の尾をふみつけるような心境で、上司の安藤敬三博士にあいさつする。
「先生、おはようございます。どうも、おそくなってしまいまして。まことに、わたくしのいたらぬところで。じつは……」
「まあ、そう恐縮するな。たまには人間、眠くて起きられないこともあるさ」
 博士のおだやかな口調を耳にし、五太郎はほっとする。ほっとしたとたん、さっきから押さえていた疑問が、わきあがってくる。
「先生、どういうことなんでしょう。きょうになってみると、世の中が一変してしまいました。だれもかれも、口のききかたが……」
「そこだよ。その原因なんだが、じつはここにあるんだ」
「ここですって……」
「きみも知っての通り、わたしはここで、各種の細菌の研究をつづけている。そのうちの一種が、きのう、うっかりして外部に流れ出してしまったのだ。ネチラタ菌という。この菌は伝染性が強く、あっというまにひろがる」
「大変なことですね。それに感染すると、どうなるんです。死にますか」
「そんな危険なものなら、もっと厳重な取り扱いをしているよ。完全に人畜無害だ。どうということもない。ただ、症状として、言葉つきがぞんざいになるだけだ……」
「なるほど、そうでしたか。事情がのみこめてきました。しかし、先生とわたしだけが、なんともないというのは……」
「前から菌をいじっているので、免疫になっているのだろう」
「そうかもしれませんね。で、このありさま、どうなさるおつもりです。もとに戻らず、このままなんですか」
「いや、もとに戻す方法はある。これと逆の症状を示す、タラチネ菌というのをばらまけばいいのだ。言葉づかいが上品になり、すなわち以前の状態に戻るわけだ」
「では、さっそく、それを……」
「なにも急ぐことはない。それは、あしたになってからにしよう。きょうのところは、いい機会だ。ネチラタ症状の、データを集めておきたい。すまんが、街へ出て観察し、調べてきてくれ」
「はい……」
 五太郎はまた街へ出た。こんどは事情がわかって、いくらか安心。お寺へ寄ると、お葬式をやっていた。モーニング姿の男が、涙にむせびながら弔辞をのべている。
「やつはいい野郎だったが、ふんづまりが悪化し、とうとう、くたばりやがった。ああ、なんてえこった。あばよ。迷わず成仏しやがれ……」
 五太郎は「なるほど、こういうふうになるのか」と感心する。
 デパートに入ってみる。エレベーターに乗ると、若く美しい案内嬢が言う。
「やあ、変わりばえもせず、きやがったな。動かすぜ。途中、何階でおりたいか、言ってみやがれ。三階にはガキどもの使う、ガラクタが並べてあらあ。ざまあみろ。四階はあんちゃんや、おっさんの……」
 四階でおりると、そこは紳士用品の売場。女の店員がお客に言っている。
「とんまめ。そんなとこでうろうろせず、手にとって見な。さわったって、減るものじゃねえ。やい、なにを売ってやろうか」
 と、頭をさげている。客の男も、ショーケースに歩み寄る。
「このおかちめんこが、このぼろ店のアマか。えい、このネクタイを買ってやる。さあ、ゼニを渡すから、手を出しな」
「ふん。ちょうどあらあ。いま、紙に包んでくれる。ここで待ってやがれ……」
  すべてこの調子。五太郎はこれらを、いちいちメモにとって歩く。そのうち、腹がへってきた。レストランをみつけ、なかに入り、テーブルにつく。ウェイトレスがやってきて言う。
「よくも、きやがったな、このでくのぼう。おい、なにを|食《く》らおうって気だ。欲しいものを、とっとと言いやがれ」
 五太郎、ネチラタ症状による現象とはわかっていても、こう言われると、恐縮してしまう。
「はい。もし、お手数でなかったら、ライスカレーでも食べさせていただきたいと思います。なにとぞよろしく、|恐惶謹言《きょうこうきんげん》。どうぞお手やわらかに」
「これはお客さま。こんなことを申しあげては、失礼のきわみでございましょうが、そのようなお口のききかたをあそばすとは……」
 ウェイトレスの口調が変わったので、五太郎はほっとした。タラチネ菌が働きだしたのだろうか。安藤博士は、あしたにするとか言っていたが……。
 なにげなく、ウェイトレスの顔をみる。すると、目をつりあげ、歯をむきだし、からだをふるわせ、ただごとでない表情をしている。ほかのテーブルの客も、五太郎に非難の視線を集中している。
 五太郎、しばらく|狐《きつね》につままれたような気分だったが、やがて気がつき、反省し、赤面する。
 ネチラタ症状になっている人にむかって、ていねいな口をきくのは、このうえなく失礼な、ひどいことなのだ。すなわち、下品きわまる悪口雑言。そして、ネチラタ症状の人から、ていねいな口調で話しかけられるというのも、また……。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%