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言葉をください38

时间: 2020-05-15    进入日语论坛
核心提示:あれは卯の花「ねえ雨の季に咲いてる花ってあの世から来たような感じがしない?」誰もあきれて答えてくれない。中にやっと「どう
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あれは卯の花

「ねえ雨の季に咲いてる花ってあの世から来たような感じがしない?」
誰もあきれて答えてくれない。中にやっと「どうして?」とたずねてくれる人があるが、こんどは私が言葉に詰まってしまう。
母が毎年のように雨期に病むからだろうか。うすくらがりの部屋に「死にたい死にたい」という母を抱えて、その目に捉える花々である。ぽたぽた落ちたり散り敷いたりの春の花にくらべるとき、雨期の花は何としぶといことか。グラジオラスにしても菖蒲《しようぶ》にしてもあじさいにしても花ごと葉ごと茎ごとしおれて、もうダメと思うころに次なる花をまたひらいてみせる。
そのくせ色もしおらしく花弁もやわらかく触れなば落ちん風情。雨の中で咲く花は雨に強い。母もまた生への執着の反語として口走っている「死にたい」である。しぶとく生きる母の血が私にもあることを、私は雨の花に会うたびに思う。
雨は私につきまとう。プラットホームで裾を濡らし、強風をともなって連絡船を止めたりもする。いつも雨、そうなると妙な愛着も出てきて、私は雨を遠い親戚か何かのように思うようになった。
出てみれば雨 手に受けて春の雨
雨に咲く花はあの世へ行きたがる
雨蛍浮いて流れて点すかな
梅雨長し指しゃぶりから骨しゃぶり
かの子には一平がいた長い雨
雨の守宮《やもり》も男恨みの赤目かよ
崇高な忍耐がある雨合羽
 私は六月の闇の匂いが好きである。今はその匂いの中から麦秋の煙が消えた。それでも六月は匂う。蛍か水か土の匂いか。そしてやっと最近になってそれが雨の匂いであることに気づいた。
梅雨が上がる。天然自然も人の身も心もあらゆる汚物を吐き出す季節。そんなとき、ふと見つける白い花の生垣。私は卯の花というのを知らない。木釘を作るに適した木、落葉低木で幹の中はがらんどう、だから空木《うつぎ》と呼ぶのだと人から聞いた。
ではあの生垣こそは卯の花であったのだと「雨の日」に思い定めた。雨は人の傘や髪に降るだけではない。屋根を通して人の心に降りそそぐ。降りこめられた屋根の下で、心も雨のその中で、私はたいていのことを決めてきた。雨は静謐《せいひつ》にして、その縞模様のわずかなすきまに人の判断を裁いてくれるような気がするのである。
あれは卯の花と定めぬ雨の日に
 まちがっていてもいい、私がそう思い定めたのだから──というわがままを、笑ってうなずいてくれるのも雨。そしてこの句の卯の花は人が人の心を問う鍵でもある。
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