いくら探しても
なんにもなかった
体の中に 休まず
血が流れているというのは
ほんとうだろうか
うすぐもりの空の下
どうやらあのあたりに
海があるらしい
波の音が
きこえてくればいい
耳を澄ますと
海は消えて
ただ 呼吸だけが残る
私の子ども 私の仕事……私の日常
は
心の海から
ひとつ またひとつと
連れ出していった
目をあけると
整理もできない棚のように
私の回りは
ものでいっぱい
目をとじるとあふれだしていた
あの海 波のうねり
そんなものがあったことを
ふと
思いだした
今 またひとつ年をとって 夏