道端にしゃがみ込んで結び直す
片足を少し前に出して
背を大きく空に向けたから
背中一面に
早春の光が降ってきたのがわかる
こうして
受け取る姿勢があるのだ
手の平を二つ合わせて差し出す器を
いつでも人は持っているけれど
見えない自分の背面にも
多くのものが注がれていると知った
陽光は
父の大きな手が置かれているようにも
母のほっそりとした指に撫でられているようにも思われた
もっと遡った連なりからもたらされたぬくもりかもしれなかった
懐かしい温度だ
守られて
私の背が昆虫の羽化のように開いていく
まだ温かい昨日を
潔く内側へ折り畳みながら
自分を脱ぐことができたのか
こんな浅い春の陽射しにも
生かされていること を
受け取ったのだった
巡る環の小さな一点に
靴紐を結ぶ私がいる
膝を立て
頭を垂れて
祈りの形そのままに