今、蹴ったね
その力、昨日と違うね
私の身体の中心でふんばってふんばって
ああ、ずっしりと重い。
日毎、せり出てくる腹を見ると
おまえという位置には驚かされる。
人は人とのつながりを
海から始めた。
人の始まりが海だとすれば
おまえが私の中の羊水にいるのも
不思議ではない。
私は私の母と同じように
私の中の海におまえを育んでいる。
私達の海図におまえをきざみこもう
風はおだやか
波はゆるやか
私達の航海の中の一起点。
航路は
途方もなく広く遠い
おまえよ
私達の芯になれマストになれ。
だが、
やがては、いつか
つなぎあったへその緒を切り離すように
別れてゆくだろう。
白き帆を張る昼下がり、
私は
眠っているだろうおまえを起こさないよう
そろりと重き身を南へと傾け
私達の海図をながめている。