職場における多忙な日を描写してみよう。電話は鳴り、電子メールは溜まり、同僚たちから質問攻めに遭って自分の仕事が中断され、上司は土壇場で指示を出してくる・・・。
それでも家庭での1日に比べれば、職場はピクニックに来ているように思われるかもしれない。家庭では雑用や使い走りをさせられ、食事の支度があり、子供の世話に追われる。幸福な家庭生活を営んでいる人々でさえ、家庭はしばしば職場以上に煩わしく感じられることがあるのだ。
社会科学者たちは過去数十年間、会社の職場を調査し、それを改善する研究を続けてきた。だが今や専門家たちは、職場で働くことはわれわれの健康に良いと言っている。そして、われわれが家庭で見倣いたいと望むかもしれない諸相が職場に存在しているという。
米ペンシルベニア州立大学の研究者チームは先月、「Social Science & Medicine(社会科学と医学)」電子版に掲載された最新論文で、被験者の大半について、職場にいる時のコルチゾール値(ストレスに反応して副腎皮質から出されるホルモンの分泌量)が家庭にいる時よりも恒常的にかなり少ないことを発見したと発表した。これは男女を問わず、子供を持っているか否かにかかわらず、当てはまるという。
研究者チームは米国北東部の中堅都市で被験者122人を無作為に抽出して実験協力を依頼した。大学の研究プライバシー指針により都市名は公表されていない。被験者はいずれも18歳以上で、自宅以外で週5日間就労している。就労時間は午前6時~午後7時の間だ。
研究チームは被験者たちに対し、ほおの内側をこすって自らコルチゾール値を検査するよう教え、1日に6回実施するよう促す装置を配布した。検査時に被験者がどこにいたのか、どれほどストレスを感じていたか、あるいは逆にどれほど満足(充足)していたかも報告してもらった。研究チームは、被験者のコルチゾール値のみを測定し、他のホルモン値は測定しなかった。
その結果、被験者の大半のコルチゾール平均値は、職場にいた時のほうが家庭にいた時よりも低かったことが判明した。被験者の職業の違いや、既婚か独身かで相違はなく、仕事を好きかどうかも関係なかった。ひとつ興味深い発見は、職場でのコルチゾール値が低くなくて、家庭でのそれと同じだった被験者たちの年収がいずれも7万5000ドル(約750万円)以上だったことだった(研究者たちは、もっと生活水準が高い都市では、この年収の水準は一層高かっただろうと考えている)。
研究チームはまた、子供のいる被験者といない被験者はいずれも職場でストレスを家庭ほど感じていなかったが、子供のいない被験者のほうが家庭での数値との差が大きかったことを発見した。研究者たちは、これは、子供のいる被験者が家庭でのストレスを職場に持ち込むためか、あるいは子供たちが被験者の家庭でのストレスを和らげるのに一役買っているからかもしれないと述べている。
男性も女性も、家庭よりも職場のほうがストレスが少なかった。しかし女性は職場のほうが充足感を強く感じる傾向が強く、男性は家庭にいるほうが充足感を感じる傾向が強かった。研究者たちは、これは女性が依然として家事や育児をより多く担っており、自由な時間が少ないと感じているからかもしれないと述べている。
専門家たちは、多くの人々にとって、家庭よりも職場のほうがストレスが少ない他の理由があると述べている。今回の研究のリーダーであるペンシルベニア州立大学のセーラ・ダマスク准教授(労働と雇用関係、社会学、女性問題専攻)は「有償の仕事は社会でより大きな価値がある」とし、「家庭の仕事は退屈で、それほど報いがあるわけではない」点を指摘した。
難しい言葉:
【コルチゾール値】肾上腺激素水平。
【一役買う】主动承担任务,主动帮忙。