丙辰中秋, 1076年仲秋
欢饮达旦, 夜明けまで大いに飲み
大醉, 酔い痴れて
作此篇, この詞を作り
兼怀子由。 弟の 「蘇轍/そてつ」 を思う
<但愿人长久 千里共婵娟>
明月几时有?
名月は、いつのころから姿を現したのか?
把酒问青天。
酒杯を掲(かか)げ、天に問う
不知天上宫阙,
天上の月の宮殿では、いったい
今夕是何年。
今夜は何年の何月なのであろうか
我欲乘风归去,
ああ、風に乗って帰っていきたい
又恐琼楼玉宇,
ただ、あの煌(きら)びやかな玉殿は
高处不胜寒。
あまりに高くて、寒いのではあるまいか
起舞弄清影,
月影に舞い踊る地上の人影
何似在人间。
(寒宮より)この世のほうがいい
转朱阁,
朱塗りの豪華な楼閣をめぐり
低绮户,
低い華麗な窓から月影が差し込み
照无眠。
眠れない私を皓皓(こうこう)と照らす
不应有恨,
月に人への恨みなどあろうはずもないのに
何事长向别时圆?
なぜ人の長き離別のときに限って円く輝くのか?
人有悲欢离合,
人にはうれしい出会いと悲しい別れはつきもの
月有阴晴圆缺,
月も顔を出しては雲に隠れ、満ち欠けもある
此事古难全。
昔より完璧なものなど存在しない
但愿人长久,
願わくば、愛する人の久しく恙(つつが)なきことを
千里共婵娟。
千里離れても、今宵の月、共に望めんことを
注:
「嬋娟/せんけん/」 は、ここでは中国の伝説上の 「嫦娥/じょうが/」 です。