大王製紙がおむつ交換の仕方など介護職員向けに行っている勉強会の様子。介護する側もされる側も快適になる製品が求められている(写真:産経新聞)
高齢化の進展に伴い、紙おむつや軽失禁用吸収パッドを使う人が増えている。メーカー各社は最新の研究結果や技術を取り入れ、利用者や介護者が使いやすい商品の開発に努めている。(兼松康)
◆不純物で目詰まり
大人用紙おむつや吸収パッドの国内最大手、ユニ・チャーム(東京都港区)は昨年7月までの約4年をかけた研究調査で、寝て過ごす時間の長い要介護高齢者の尿成分に、吸収パッドを目詰まりさせやすい成分が混入していることを発見した。
同社などの調べによると、寝て過ごすことの多い高齢者の尿は健康な成人に比べ、濁りが多かった。寝たままでの排尿だと腹圧がかけにくく、尿を出しきれないケースが多い。残尿の栄養分により菌が繁殖することで、リン酸マグネシウムアンモニウム結石などの不純物が生成されるためだ。
「不純物が吸収パッド表面で目詰まりし、吸収スピードが3~10倍悪化することで、尿漏れにつながっていた」と同社グローバル・マーケティング本部の池田あゆみアシスタントブランドマネージャーは説明する。
同社はパッドの表面に凹凸を持たせ、その厚みで不純物をとらえ、尿を透過させる空間を確保する新技術を開発。その技術を採用した夜用尿とりパッド「ライフリー 一晩中安心さらさらパッド」を昨年11月下旬に介護施設や病院、介護用品店向けに発売した。
◆男性特有の漏れ
「アテント」ブランドを展開する大王製紙(東京都中央区)は、「男性の漏れの方が女性より率が高い」という点に着目した。
男性の尿漏れは、紙おむつの前側からが圧倒的に多い。同社が鳥取大学の中山敏准教授と共同で、紙おむつの中で尿がどういう動きをするのか、CT(コンピューター断層撮影)スキャンを使って解析した結果、男性器が尿の流れをせき止めていたことが分かった。その結果、背中側の吸収部分が使われず、前側の吸収力がオーバーしていたのだ。
背中側に尿を流すため、溝を設け、尿を背部に拡散する構造にしたところ、漏れが少なくなった。
当初は病院や施設向けの販売だったが、昨年9月に一般向けの発売も開始した。
商品名には「男性に1枚安心 巻かずに使えるパッド」と性別を明記。ホーム&パーソナルケア事業部の山本秀樹部長代理は「本来は女性も使える商品なのに、男性に市場を絞ることはリスクが高い。しかし、漏れの多い男性やその介護者に漏れを防ぐ効果が高いことを徐々に広めていきたい」と狙いを話す。
◆アクティブシニアも
「アクティブシニア」と呼ばれる活発な高齢者層にとっては、軽失禁も悩みの種のひとつだ。
「リフレ」ブランドを展開するリブドゥコーポレーション(愛媛県四国中央市)は、業界でも最薄クラスの吸収パッドを発売。同社ライフケア開発マーケティング本部マーケティング部の中岡健次部長によると、同社の「安心パッド」は脱臭シート、銀イオン、消臭ポリマーという3つの消臭機能を採用し、「あらゆる消臭機能を入れた吸収パッドが出ているが、3つをそろえたのは他にない特長。特に臭いに敏感な女性に好評を得ている」という。
軽失禁用の吸収パッドは各社ともに力を入れている。活発な高齢者層の拡大とともに、需要もさらに広がりそうだ。
■1600億円規模、年5%成長続く
衛生用品、医療用具、介護用品などの生産・販売企業などが加盟する日本衛生材料工業連合会の調べによると、大人用紙おむつやパッド類などの生産枚数は、平成19年に約45億枚だったが、高齢者人口の増加とともに年々、増え続け、25年には約65億枚となった。
生産枚数としてはパッド類が最多で、25年には約49億枚、パンツタイプの紙おむつが約13億枚などとなっている。
ユニ・チャームの調べでは、大人用紙おむつなどの市場規模は25年で約1600億円。年率5%程度で成長を続けているという。