幸福絶頂の二人に突然不幸が訪れたのは、結婚式の当日でした。親戚など大勢の人たちがお祝いに駆けつけ、まもなく式が終わろうとしていたとき、突然役人たちが踏み込んできて、范喜良を捕まえていってしまったのです。花婿が引っ立てられて行った後、孟家は大騒ぎになりました。孟姜女の悲しみようといったらありません。
「あの人は今頃どうしているかしら。どうして私たちはこんな目に合わなければならないの?」
寝ても覚めても夫を思い、夫からの便りを待ちわびていました。
待てど暮らせど夫からの便りはありません。春がすぎ夏になり、そして秋になり冬が近づきました。中国では昔から「寒衣を贈る」といって、家を離れている家族に冬着を届ける習慣があります。
「家でいつまでも待っていたって仕方ない。そうよ、私があの人に会いに行けばいいんだわ」
孟姜女は夫に冬着を届けるために、万里の長城に行く決心をしました。反対する両親を説得し、とうとう夫に会うために千里の道に旅立ったのです。
道中風雨に晒され、険しい山をいくつも越え、急流をいくつも渡り、女の一人旅は苦労の連続でした。お腹がすいたときは草木を食べ、靴は破れ裸足の足は傷だらけでした。それでも、「長城に行けば、あの人に会える」
という粘り強い気迫と夫への深い愛を支えに、歩き続けました。
「どんなに苦労をしても、あの人を捜してみせる。そして見つけたら絶対離れはしないわ」
と心の中で叫びながら、前に進みました。そしてやっと万里の長城にたどり着いたときには、既に雪が降り出す頃でした。