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中国怪奇物語006

时间: 2019-05-28    进入日语论坛
核心提示:  柏 (このてがしわ)の森 洛陽に盧涵(ろかん)という学者がいて、万安山(まんあんざん)の北に荘園を持っていた。開成(
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   柏 (このてがしわ)の森
 
 
 
 
 洛陽に盧涵(ろかん)という学者がいて、万安山(まんあんざん)の北に荘園を持っていた。開成(かいせい)年間のある年の夏、麦が実(みの)り果物も熟したので、一人で小馬に乗ってその荘園へ出かけて行った。
 二里ほど行ったところに大きな柏の森があったが、その傍に新しい家が建っていて、茶店を出しているのが見えた。ちょうど日も暮れかけてきたので、盧涵はそこに立ち寄って馬を休ませることにした。茶店には髷(まげ)を左右に結(ゆ)いあげた色っぽい女がいた。
「あなたのお家ですか」
 と盧涵がきくと、女は、
「はい。わたくしは耿(こう)将軍さまの墓守りをしている侍女です。家には父も兄もおりません」
 といった。盧涵はそこで気をゆるめて四方山(よもやま)話をしだしたが、女は如才なく受け答えをした。話しぶりも巧みであり、気持もさっぱりしているようであった。ときどき盧涵に向ける眼(まな)ざしが色っぽく、物腰もなまめかしい。そのうちに女は、
「家で作ったお酒が少しあるのですけれど、二、三杯召しあがってくださいますか」
 といった。盧涵が、
「いただきましょう」
 というと、女は奥の部屋から古い銅の酒壺を持って来て、いっしょに飲んだ。そのさまはいかにも楽しそうであったが、やがて酔いがまわってきたのか、席をたたいて拍子をとりながら歌を口ずさみだした。
 その歌は、意味はよくわからなかったが、物がなしい調子で、盧涵は酒の席にはふさわしくないような気がした。そのうちに酒がなくなると、女は、
「もう少し、おかわりを持ってまいりましょう」
 といい、手燭を持ち酒壺をさげて奥の部屋へはいって行った。盧涵が足音を忍ばせて近寄り、そっとのぞいて見ると、その部屋には大きな黒蛇がぶら下げてあって、女が刀を突き刺すと血が壺の中へしたたり落ち、それが酒に変るのだった。盧涵はそれを見て身ぶるいをし、さては妖怪だったのかと気づいてあわてて戸口から飛び出し、馬の手綱をほどくなり飛び乗って逃げだした。すると女の声が追ってきた。
「今夜はあなたを一晩お泊めしなければならないのです。戻って来てください」
 盧涵はその声をふりはらうようにして逃げた。すると、つづいて女の叫ぶ声が聞こえてきた。
「方大(ほうだい)! すぐに追いかけてあの人をつかまえておくれ」
「承知しました」
 という大声とともに柏の森の中から大男があらわれ、盧涵を追いかけてきた。どしんどしんという足音がたちまちのうちに迫ってくるのだった。ふり向いて見ると、その大男は大きな枯木のような姿をしていた。
 盧涵は馬に鞭をあてつづけて必死の思いで逃げた。やがて小さな柏の森にさしかかった。するとその森の中から大きな真っ白な怪物があらわれて、追って来る大男にどなるような声でいうのだった。
「今夜のうちにあいつをつかまえなくてはならんぞ。もしつかまえそこなったら、あしたの朝、おまえがひどい目にあうんだぞ」
 盧涵はそれを聞いてますますふるえあがった。
 ようやく荘園の入口に着いたときには、もう真夜中になっていた。荘園は門をとざして、中はひっそりと静まりかえっていた。門をたたいて作男(さくおとこ)を呼びおこす暇はない。盧涵は馬を乗りすてて、門の前に置いてある数台の空車(からぐるま)の一つの下にもぐり込んだ。そしてそっと眼を上げると、大男が地面をゆるがせながら駆けつけて来るのが見えた。荘園には高い塀がめぐらしてあったが、大男には腰のあたりまでしかなかった。大男は矛(ほこ)を持って荘園の中をのぞき込んでいたが、やがてその矛を中へ突き入れた。大男が引きもどしたその矛の先には子供が突き刺されていた。子供は手足をばたつかせていたが、声はたてなかった。盧涵がおそろしさのあまり気を失いそうになるのを、ようやく堪えていると、大男は子供を突き刺した矛をかついで戻って行った。その足音が遠ざかってから、盧涵は車の下から這い出して、門をたたいた。しばらくすると、
「誰だ、こんな真夜中に」
 という作男の声が門の内側から聞こえた。
「わたしだ。盧涵だ。早くあけてくれ」
 というと、作男はあわてて門をあけるなり、せき込んで、
「どうなさったのですか、旦那さま」
 とたずねたが、盧涵は、
「わからん、夢を見ているのかも知れん」
 としかいわなかった。
 盧涵はその夜、まんじりともしなかったが、明け方になって、作男とその妻が声をあげて泣きだしたので、起きて行ってみると、三歳になる男の子が寝たままでつめたくなっていて、いくらさすってもあたためても生きかえらないという。
 夜があけてから盧涵は、小作人を十人あまりつれ、刀や弓矢を持たせて、大きな柏の森の傍の茶店へ行ってみた。ところがそこは新しい家ではなく、逃亡した小作人がもと住んでいた小さな廃屋(はいおく)で、人影一つ見えなかった。そこで森の中をさがしてみると、高さ二尺あまりの大きな明器(めいき)の侍女がころがっており、その傍には大きな黒蛇がいたが、刀で刺された跡が二つあって、すでに死んでいた。また、その森の東の方には大きな方相(ほうそう)(葬式のときに墓地を守るために造る張子の人形で、矛を持っている)の骨組みだけがあった。そこで明器の侍女はたたきこわし、黒蛇と方相の骨組みとは焼いてしまった。
 小さな柏の森の方をさがすと、人間の白骨があった。昨夜、大男に呼びかけた真っ白な怪物は、それらしかった。その白骨は斧でたたいたがこわれないので、堀の中へ投げ込んでしまった。
 盧涵には痛風の持病があったが、黒蛇の酒を飲んだためか、このことがあってからはすっかりなおってしまった。
唐『伝奇』
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