鬼が残していった金棒
昔 々むかし、ある所ところに、とても貧乏びんぼうな夫婦ふうふがいました。夫婦ふうふは毎日毎日まいにちまいにち、一生懸命働いっしょうけんめいはたらくのですが、どう頑張がんばっても貧乏びんぼうのままです。
ある節分せつぶんの日ひの事こと、節分せつぶんの豆撒まめまきをしようと思おもった夫婦ふうふは、「どうせ福ふくを呼よんでも、わしらには福ふくは来こないのだから、今年ことしはいっその事こと [1] 、鬼おにを招まねいてみようではないか。」「そうですね。来こない福ふくを呼よんでも、仕方しかたありませんからね。」と、話はなし合あって、こんな豆撒まめまきをしました。
?鬼おには~内うち、福ふくは~外そと
?鬼おには~内うち、福ふくは~外そと
さて、その夜よるの事ことです。ドンドン!ドンドン!誰だれかが家いえの戸とを叩たたくので夫婦ふうふが戸とを開あけてみると、何なんと家いえの外そとには赤鬼あかおにと青鬼あおおにが立たっていたのです。鬼おにたちは、ニッコリ笑わらって言いいました。「どうも、こんばんは。‘鬼おには~内’と、わしらを呼よんでくれたのは、お前まえさん達たちか?」夫婦ふうふはびっくりして腰こしを抜ぬかし [2] そうになりましたが、ニコニコ笑わらっている鬼おにたちを見みて気持きもちを落ち着つかせると、「はい。確たしかに‘鬼おには~内うち’と豆撒まめまきをしました」と、答こたえました。
「そうかそうか。知しっての通とおり今日きょうは節分せつぶんで、わしらはどこへ行いっても豆まめを投なげつけ [3] られて大変たいへんだった。ところが嬉 うれしい事 ことに、お前 まえさん達 たちは‘鬼 おには~内 うち’と呼 よんでくれた 。それで、ここへ逃にげて来きたんだ。…他ほかにも仲間なかまがいるのだが、入はいってもいいか?」「はっ、はい。どうぞどうぞ。大たいしたおかまい [4] も出来できませんが。」夫婦ふうふは鬼おに達たちを家いえに入いれると、とっておき [5] のお酒さけや料理りょうりで鬼おに達たちを持もて成なしました。
さて、そのうちに朝あさが来きて、隣となりの家いえの一番鶏いちばんとり [6] が、コケコッコー!と、鳴なきました。それを聞きいた鬼達おにたちは、びっくりした顔かおで登のぼってきた太陽たいようを見みると、「いかん!もうこんな時間じかんになってしもうた。では、世話せわになりました。」と、慌あわてて帰かえって行いきましたが、あんまり慌あわてていた為ためか、大事だいじな鬼おにの金棒かなぼうを忘わすれて行いったのです。
「あれ。あの鬼おにたち、金棒かなぼうを忘わすれて行いきおった。」「あら、本当ほんとうに。でもまあ、そのうち取とりに来くるでしょう。」夫婦ふうふは鬼おにがいつ金棒かなぼうを取とりに来きてもいいようにと、金棒かなぼうを大切たいせつにしまっていましたが、いつまでたっても鬼おにたちは金棒かなぼうを取とりに来きませんでした。
さて、その話はなしが評判ひょうばんになって、夫婦ふうふの家いえにはあちらこちらから鬼おにの金棒かなぼうを見みに来くる人ひとたちがやって来きました。そこで夫婦ふうふは、やって来くる人々ひとびとにお茶ちゃや団子だんごを売うったので、やがて村一番むらいちばんのお金持かねもちになったのです。もしかすると鬼 おにたちは、わざと金棒 かなぼうを置 おいて行 いったのかもしれませんね 。
[1] 「いっその事」,副词。与其……、不如……、宁可……。
[2] 「腰を抜かす」,腰节骨软站不起来,非常吃惊。
[3] 「投げつける」,动词。投掷、扔去。
[4] 「お構い」,名词。招待、款待、张罗。
[5] 「とっておき」,名词。珍藏、秘藏。
[6] 「一番鶏」,名词。头遍鸡叫。
鬼遗留的金棒
在 很久以前,有个地方住着一对十分贫穷的夫妇。虽然夫妇俩每天都拼命地干活,但无论他们怎样努力,依然一贫如洗。
在某个立春的一天,正想在春分撒豆子的夫妇俩商量说:“反正无论怎样招福,福气也不来我们家,今年我们倒不如试一试招鬼吧。”“是呀。叫福福不来,那也没办法呀。”于是他们就这样一边喊:“鬼进来,福出去。鬼进来,福出去。”一边撒豆子。
到了那天晚上,就听见“咚!咚”的敲门声。是谁敲门呀?夫妇俩打开门一看,在屋外竟然站着一个红鬼和一个蓝鬼。这两个鬼微笑着说:“啊!晚上好!喊着‘鬼进来’叫我们进来的是你们俩吗?”夫妇俩听了吓得几乎瘫在地上,但看到这两个鬼笑咪咪的,他俩的心情稍稍平静下来,回答说:“是的。的确是我们一边喊‘鬼进来’一边撒豆子的。”
“是吗?正如你们所知,今天是春分,我们无论去到哪里都被扔豆子驱赶出来,真的很狼狈。然而高兴的是,你们却喊‘鬼进来’。于是我们便逃到这里来了。……我们还有其他同伴,他们也可以进来吗?”鬼怪问道。“啊?好呀。请!请进!虽然没什么可招待你们的。”就这样夫妇俩让这些鬼进了屋,还拿出珍藏的酒和菜来款待他们。
不久,天亮了。隔壁家的报晓鸡“喔!喔!喔”地开始打鸣了。听到鸡叫声,这些鬼看了看正在升起的太阳,惊慌失措:“不好了!已经到这个时间了。承蒙关照,我们告辞了。”说罢便急忙回去了。因为走得太匆忙,把他们那贵重的金棒落下了。
“咦?那些鬼把金棒落在这就走了。”“是啊,真的呀!不过,到时他们会回来取吧。”夫妇为了让那些鬼随时都能回来取走金棒,便把金棒好好地收了起来。但是等啊等,那些鬼再也没有来取金棒。
后来这件事很快就传开了,各地的人们相继来这夫妇家参观鬼的金棒。于是,夫妇俩向前来参观金棒的人们出售茶和点心,不久他们变成了村里最有钱的人,或许是那些鬼特意把金棒留在他们家的吧。
语法详解
(1)用言の連体形+ことに
表示感叹,强调说话人的感觉或心情。相当于“令人……的是……”
* 困ったことに相手の名前はどうしても思い出せなかった。
糟糕的是,怎么也记不起对方的名字了。
* ありがたいことには、五体満足で健康な体を両親から授かりました。
值得幸庆的是,父母赐予了我端正的五官和健康的身体。
* 不思議なことに、自分の身体が椅子から持ち上がって空中に浮かんでいるような感じがした。
不可思议的是,有一种身体从椅子上被提起后漂浮在空中一般的感觉。
(2)もしかすると+用言の終止形+かもしれない表示说话者对某种可能发生的事情进行推测。相当于“也许……”“或许……”“说不定……”“可能……”
* もしかすると、彼はもう来ているかもしれない。
也许他已经来了。
* もしかすると会えるかもしれないと思って駅で待っていた。
我想也许能见面,于是就在车站等。
小知识
五穀
主食とする穀物のうち、とくに重要な5種をあげて五穀という。日本では、一般に米、ムギ、アワ、キビ、豆をさすが、時代や地域により、その種類や順位は相違する。古くインドではァ ∴ギ、コムギ、米、アズキ、ゴマをさし、中国では麻、ムギ、ヒエ、キビ、豆の5種や、麻、ヒエ、ムギ、米、豆の5種、あるいはキビ、ヒエ、豆、ムギ、米の5種をさした。このほかに六穀(イネ、ァ 、ワ、豆、ムギ、モチキビ、モロコシ)や九穀(ウルチキビ、モチキビ、モチアワ、イネ、麻、ダイズ、アズキ、ァ ∴ギ、コムギのほか、諸説あり)という場合もある。
五谷
作为主食的谷物中,最重要的5种称为“五谷”。在日本一般指米、麦、小米、黍、豆。根据时代和地域的不同,五谷的种类和顺序也有所不同。古代印度是指大麦、小麦、米、红小豆、芝麻,而中国则是麻、麦、稗、黍、豆5种,麻、稗、麦、米、豆5种,或是黍、稗、豆、麦、米5种。另外也有六谷(稻、黄粱、豆、麦、糯黍、高粱)、九谷(粳黍、糯黍、糯小米、稻、麻、大豆、红小豆、大麦、小麦)之说。