鬼子母神さま
昔 々むかし、狭山さやま(埼玉県南部さいたまけんなんぶ)に、ある村むらがありました。ある日ひの事こと、子供こどもたちが遊あそんでいると、突然大とつぜんおおきな旋毛風つむじかぜ [1] が吹ふき起おこったのです。「子供こどもはどこだ!子供こどもはどこだ!」村むらに子供こどもを攫さらう [2] 鬼女きじょが現あらわれたのです。「鬼女きじょだ!」風かぜの中なかから現あらわれた鬼女きじょは、子供こどもを一人攫ひとりさらっていきました。
それからは夕方ゆうがたになると毎日まいにちのように鬼女きじょが山やまからやってきて、子供こどもを攫さらっていくのです。「子供こどもはどこだ!隠 かくれても、匂においで分 わかるぞ !くんくん [3] 。そこだなー!」子供 こどもをどこに隠 かくしても、鬼女 きじょは鼻 はながいいので、匂 においで見 みつけられてしまいます。子供 こどもたちの声 こえで賑 にぎわっていた村 むらは、ひっそりと寂 さびしい村 むらになってしまいました 。村むらの人ひとたちは、何なにかいい方法ほうほうはないかと相談そうだんして、お釈迦しゃかさまにお願ねがいすることにしました。
次つぎの日ひ、村人むらびとたちは、お釈迦しゃかさまのいるという山やまに登のぼっていきました。やがて雲くもの間あいだから姿すがたを現あらわしたお釈迦しゃかさまに、村人むらびとたちは手てを合あわせてお願ねがいしました。「村むらに鬼女きじょがやってきて、子供こどもを攫さらっていくのです。どうかお助たすけくださいませ。」すると、お釈迦しゃかさまは言いいました。「分わかりました。私わたしが何なんとかしますから、どうぞ安心あんしんなさい。」お釈迦しゃかさまがさっそく鬼女きじょの所ところへ行いってみると、鬼女きじょに攫さらわれてきた子供こどもたちが穴倉あなぐら [4] の中なかで泣ないていました。このひどい鬼女きじょですが、この鬼女きじょにも自分じぶんの子供こどもがいるのです。それも一人ひとりや二人ふたりではなく、何なんと一万人いちまんにんもです。その子供こどもを、鬼女きじょは、「おお、私 わたしの子 こは何 なんて可愛 かわいいんだろう。」と、抱だきしめるのです。
それを知しったお釈迦しゃかさまは、鬼女きじょが出でかけた隙すきに鬼女きじょの子供こどもを一人連ひとりつれて帰かえったのです。さあ、自分じぶんの子供こどもが一人足ひとりたりないことに気きがついた鬼女きじょは、「私わたしの子供こどもが一人ひとりいなくなった!どこへ行いったの?」と、狂くるった [5] ように我わが子こを探さがし回まわります。そこへ、お釈迦しゃかさまが姿すがたを現あらわしました。
「ああ、お釈迦しゃかさま。ちょうどよいところに。実じつは私わたしの可愛かわいい子供こどもが、一人ひとりいないのです。」するとお釈迦しゃかさまは、静しずかに言いいました。「それは可哀かわいそうに。…ところで鬼女きじょよ。お前まえは一万人いちまんにんも子供こどもがいるが、一人ひとりでもいなくなるとそんなに悲かなしいのか?」「はい、それはもちろんでございます。」「そうであろう。親おやとはそういうものだ。しかしそれなら、お前まえに子供こどもを攫さらわれた人間にんげんたちの気持きもちも、分わかるのではないか?」「…あっ!」「そうだ。子供こどもがいなくなったお前同様まえどうよう、人間にんげんたちも子供こどもがいなくなって悲かなしんでいるのだ。すぐにその子供こどもたちを帰かえしてやりなさい。」お釈迦しゃかさまはそう言いうと、鬼女きじょの子供こどもを返かえしてやりました。「お許ゆるしください!私わたしが悪わるうございました!」すっかり心こころを入いれかえた [6] 鬼女きじょは、子供こどもたちを村むらへ帰かえしたのです。それから鬼女きじょはお釈迦しゃかさまの弟子でしとなり、鬼子母神きしもじんとなって、安産あんざんと子供こどもを病気びょうきから守まもる神かみさまになったという事ことです。
[1] 「つむじ風」,名词。旋风。
[2] 「攫う」,动词。抢走,夺取。
[3] 「くんくん」,副词。哼哼。
[4] 「穴倉」,名词。地窖。
[5] 「狂う」,动词。发狂,发疯。
[6] 「心を入れ替える」,洗心革面,重新做人,脱胎换骨。
鬼子母神
很 久以前,在狭山(琦玉县南部)有个村庄。有一天,孩子们在玩耍的时候,突然刮起了一股巨大的旋风。“小孩在哪里?小孩在哪里?”村里出现了一个抓孩子的女鬼。“女鬼!”人们恐惧地叫喊,眼看着乘风而来的女鬼抓走了一个小孩。
从那以后,每当夕阳西下时,女鬼就下山来抓小孩。她不断叫喊:“小孩在哪里?即使藏起来我也能闻到他的气味哦!哼哼!在那里吧?”因为女鬼的鼻子很灵敏,无论人们把小孩藏在哪里,她都能靠嗅觉找出来。那曾经因孩子们而热闹的村庄,开始变得十分凄凉。对此,村里的人们商量着看是否有什么好办法。于是,大家决定向释迦牟尼佛祖祈祷求救。
第二天,村民们便去爬那座据说住着释迦佛祖的山。不久佛祖出现在天空云上,村民们便双手合十祈祷说:“村里来了个女鬼抓小孩。请您一定要救救我们呀。”于是,佛祖说:“我知道了。我会帮你们的。请大家放心吧。”
佛祖立即去那女鬼所在的地方,一看被那女鬼抓来的孩子们正在地窖里哭。这个可恶的女鬼,她自己也有孩子,而且并不是只有一两个,竟然有一万多个小孩。那女鬼正紧紧抱着她的孩子说:“啊呀!我的孩子多可爱呀。”
了解了这一切,佛祖趁女鬼出去的空隙,带走了一个鬼孩子。发现自己的孩子少了一个,那女鬼发疯似地一边四处寻找,一边叫喊:“我有一个孩子不见了。去了哪里啊?”就在这时,佛祖出现了。
女鬼说:“啊!佛祖啊。您来得正好。是这样的,我那可爱的孩子有一个不见了。”佛祖安然地说:“那真是可怜啊!不过话说回来,女鬼呀!你有一万多个孩子,即使没了一个也那么伤心吗?”女鬼回答:“是的。那当然会伤心啦。”“是啊!做父母都是这样吧。可是,既然这样,你能理解那些被你抢走孩子的父母的心情吗?”“啊?!”那女鬼被问得哑口无言。
“是啊,和丢失了孩子的你一样,那些没了孩子的人们也很伤心的。快点把那些孩子们还给人家吧。”释迦佛祖说完,把女鬼的孩子还给了她。女鬼道歉说:“请原谅我吧!是我不好。”
完全洗心革面的女鬼把孩子们都送回了村里。传说从那以后,那女鬼便成了佛祖的弟子,后来变成了“鬼子母神”,即保佑母亲平安生产和保护孩子远离疾病灾难的守护神。
语法详解
(1)体言+で
表示动作行为的方式、手段、工具等。相当于“以……”“用……”
* 皆で一緒にやろう。
大家一起来干吧。
* 電話か手紙でお知らせいたします。
用电话或书信通知您。
* 筆で飯を食う。
靠笔杆子吃饭。
(2)なんて+体言+だろう
表示强烈的惊讶并含有判断的语气。相当于“多么……啊!”
* 大国は武力で小国の自由を圧迫するのは何て横暴なことだろう。
大国以武力限制小国的自由,多么霸道啊。
* 彼女の気持ちが理解できなかったなんて、俺は何て馬鹿だったのだろう。
我没能理解她的心情,我真蠢啊。
小知识
鬼
民話や郷土信仰に登場する悪い物、恐ろしい物、強い物を象徴する存在。「鬼」という言葉には「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」という意味もあり、各地で様々な呼び名があり、角があったり、みのを着ていたり、全身泥だらけなど姿も様々である。また、近年ではテレビゲームなどにおいても、鬼をモチーフにしたキャラクターが登場するなか、必ずしも「悪」の存在ではなく、「強い」や「神に近い存在」といったイメージで扱われる事も少なくない。日本の鬼は「悪」から「神」までの非常に多様な現れ方をしておりある特定のイメージでかたることは困難である。
鬼
“鬼”是民间传说或是地方信仰中出现的象征邪恶、恐怖、强大的存在。“鬼”这个词在日语中有“强大的”“邪恶的”“恐怖的”“厉害的”等意思。在各地有各种叫法,样子也各异,如长着角、穿着蓑衣、浑身涂满泥巴等。
另外,近年来,有些电子游戏中,也出现了一些以“鬼”的形象设计的角色,不一定是“邪恶”的化身,也有不少代表着“强大”“神一般的存在”等形象。所以,在日本,“鬼”的形象从“邪恶”到“神”,多种多样,难以概括出一个特定的形象。