「デザートがまだ残っているかもしれない」
玄げん関かんホールに出る階段への道を、先頭を切って歩きながら、ロンが祈いのるように言った。
その時、ハリーはあの声を聞いた。
「……引き裂さいてやる……八やつ裂ざきにしてやる……殺してやる……」
あの声と同じだ。ロックハートの部屋で聞いたと同じ、冷たい、残ざん忍にんな声。
ハリーはよろよろとして立ち止まり、石の壁かべにすがって、全身を耳にして声を聞いた。そして、仄ほの暗ぐらい灯あかりに照らされた通路の隅すみから隅まで、目を細めてじっと見回した。
「ハリー、いったい何を……」
「またあの声なんだ。――ちょっと黙だまってて――」
「……腹がへったぞー……こんなに長ーい間……」
「ほら、聞こえる」ハリーが急せき込こんで言った。ロンとハーマイオニーはハリーを見つめ、その場に凍こおりついたようになった。
「……殺してやる……殺す時が来た……」
声はだんだん幽かすかになってきた。ハリーは、それがたしかに移動していると思った。――上のほうに遠ざかっていく。暗い天てん井じょうをじっと見上げながら、ハリーは恐きょう怖ふと興こう奮ふんの入り交まじった気持で胸を締しめつけられるようだった。どうやって上のほうへ移動できるんだろう 石の天井でさえ何の障しょう害がいにもならない幻まぼろしなのだろうか
「こっちだ」
ハリーはそう叫さけぶと階段を駆かけ上がって玄関ホールに出た。しかし、そこでは何か聞こうなど、無む理りな注文だった。ハロウィーン・パーティのペチャクチャというおしゃべりが大おお広ひろ間まからホールまで響ひびいていた。ハリーは大だい理り石せきの階段を全ぜん速そく力りょくで駆け上がり、二階に出た。ロンとハーマイオニーもバタバタとあとに続いた。
“走这边。”
他喊道,撒腿跑了起来,跑上楼梯,跑进门厅。这里回荡着礼堂里万圣节宴会的欢声笑语,不太可能听见其他动静。哈利全速奔上大理石楼梯,来到二楼,罗恩和赫敏跌跌撞撞地跟在后面。