「ああ、喉が渇いたな。どこかに、水はないかな?」
辺りを見回すと、一軒の家の前に水の入ったおけが置いてありました。
それはとても汚い水で、蚊(カ)の幼虫のボウフラがたくさんわいていましたが、
「もう、我慢できん!」
と、酒飲みはおけの中に首を突っ込んで、その汚い水をガブガブと飲んだのです。
「あー、喉の渇きが治まった」
ところがお腹の中のボウフラがウヨウヨと動くので、気持ちが悪くなって家に帰っても寝る事が出来ません。
「弱ったなあ」
酒飲みが青い顔で寝転んでいると、友だちがやって来ました。
「どうした? そんなに、気持ちの悪そうな顔をして」
酒飲みが訳を話すと、友だちが言いました。
「それなら、金魚を飲めばいい。ボウフラは金魚のエサだから、金魚がみんな食べてくれるさ」
「そうか、その手があったか」
酒飲みはさっそく、金魚を一匹飲み込みました。
ところが、お腹に入った金魚がボウフラを追い回すので、酒飲みは余計に気持ちが悪くなりました。
「ちえっ、つまらん事を教えやがって」
酒飲みが気持ち悪そうに寝ていると、別の友だちがやって来て言いました。
「それなら、鳥を飲めばいい。鳥なら、ボウフラも金魚も食べてくれるさ」
「そうか、その手があったか」
酒飲みは、さっそく鳥を飲み込みました。
鳥はボウフラも金魚も食べてくれましたが、食後の運動にお腹の中でバタバタと暴れるので、酒飲みはお腹が痛くてたまりません。
「ちえっ、つまらん事を教えやがって」
酒飲みは青い顔で、鳥が暴れない様にお腹を押さえていました。
するとそこへ、また別の友だちがやって来て言いました。
「それなら、おれのおじさんを呼んでやろう。おれのおじさんは、鳥を捕まえる名人だ」
「そうか、その手があったか」
そこで酒飲みは鳥を捕まえる名人のおじさんに、お腹の中へ入ってもらう事にしました。
おじさんはいつもの様にかさをかぶり、鳥を捕まえるさおを持って酒飲みのお腹の中へ入って行きました。
さすがは、名人です。
あっという間に鳥を捕まえると、外へ出て来ました。
ところがうっかりかさを忘れてしまったので、酒飲みのお腹はガサガサして、ますます気持ちが悪くなったという事です。