沖縄は冬でも暖かですが、この年の冬だけは特別に寒くて、誰もが寒さに震えていました。
しかしぺークーは火ばちを持っているので、この寒さでも平気です。
ある日の事、村のお金持ちの旦那がペークーの家にやって来て、火ばちを見つけました。
「ほほう。火ばちとは、珍しい物をお持ちですな」
旦那はしきりに火ばちをながめて、とても欲しそうにしています。
それを見て、ペークーは考えました。
(こいつはうまくすると、旦那にたかれるぞ)
ペークーは、旦那に言いました。
「よければ、火ばちを差し上げましょうか?」
「本当ですか?」
「ええ、もちろんです。ただ、この火ばちは不思議な火ばちで、誰にあげてもじきに戻って来るのですが」
ペークーは意味ありげに言いましたが、旦那はそれに気づきません。
「いやー、この寒さに困っていたんだ。それでは、ありがたくいただきますよ」
旦那が火ばちを持って帰ろうとすると、ぺークーが言いました。
「旦那。大事な火ばちをあげたのですから、わたしが遊びに行った時には、ごちそうしてくださいよ」
「もちろんですよ。ごちそうしますから、いつでも遊びに来てください」
旦那はそう答えると、喜んで帰りました。
さて、ぺークーはその日からさっそく、旦那のお屋敷へ出かけました。
「おおっ、良く来てくれたね。まあ、ゆっくりしてくれ」
旦那は約束通り、ペークーをお酒や料理でもてなしました。
しかしそれから一日に三回、ご飯の時間になるとペークーは旦那のお屋敷へ出かけて行って、飲んだり食べたりするのです。
これにはさすがの旦那も、困ってしまいました。
「ペークーのやつ、遠慮もせずに毎日毎日来やがって。
このままでは、屋敷がつぶされてしまうぞ。
・・・もったいないが、火ばちはぺークーに返そう」
旦那はぺークーの家に、火ばちを返しに行きました。
するとペークーは、わざとらしく言いました。
「本当に、この火びちは、誰にあげてもすぐに返ってくるな」。