日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页

五、夏の雲(4)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:「なんだか、やりにくいですね」とムサが気弱になる。緊張しがちなキングは、別荘に帰りたそうだ。「行きましょう」走はどこまで
(单词翻译:双击或拖选)

「なんだか、やりにくいですね」

  とムサが気弱になる。緊張しがちなキングは、別荘に帰りたそうだ。

「行きましょう」

  走はどこまでも強気だった。走ることで遅れをとったりしない。だれにも。

「朝からなんなの、その元気は」

  ぶつぶつ言いながらも、竹青荘の面々も走に引きずられるように走りだす。清瀬は言っ

た。

「走のことは放っておいていい。自分のペースを守れ」

  走はそれを聞き、少し笑う。放っておけと言ったのに、案の定、清瀬はすぐに走に追い

ついてきた。二人の前方では、 がちらちらと振り向いては、後ろ手に手招きしてみせて

いる。

「挑発に乗るなよ」

「乗って、追い越すこともできますけど」

「リズムを崩すな。今朝のジョッグは、五キロ二十分のペースで流す」

  走は清瀬を見た。清瀬は静かな表情で、まえを向いて走っている。自分の体の声に、

じっと耳を傾けるような顔つきだ。東体大の集団も、たまに通りすぎる自動車も、走りに

集中しはじめた清瀬にとっては、存在しないも同然らしい。湖と針葉樹林の狭間で、ただ

黙々と体を運ぶ。

「はい」

  と走は言った。清瀬に倣ならい、もう を気にするのはやめた。五キロを二十分。その

速度で走るときの、筋肉と心肺の働きだけを意識する。苦しくはないペースだ。余裕を

もって、心身に血がめぐっていくのを確認できる。

  勢いよく昇りはじめた太陽に向けて、鳥たちが澄んだ声で鳴いている。山の高いところ

から吹いてきた風が、湖面に小さな波を立てる。

  強さってなんだろう。走はふと、また思いを馳せた。たとえば、ハイジさんのこの静け

さ。揺らがず、冷静に、自分だけの世界を走っている。俺はハイジさんよりいいタイムで

走れるけれど、ハイジさんより強い自信はない。すぐにカッとしてしまうし、負けたくな

いと、そればかりを思ってしまう。

  走は、知りたいと思った。強さを、自分に欠けているものを、知りたいと。そんなふう

に思うのは、はじめてだった。これまでの走はいつも、なにかに急せき立てられるよう

に、体の要求するままに走っていた。

  個性的なメンバーを、清瀬は縛ることも強制することもなく、しなやかに導こうとして

いる。走は振り返ってみた。湖畔の道を、竹青荘の住人たちが走っている。まだ実力には

ばらつきがあるが、それでもしっかりしたフォームで、ジョッグに励んでいる。春にはあ

んなに文句を言っていたのに、三カ月のあいだ努力したことで、なんとか陸上部員らしく

見えるところまで来た。

  走は顔を正面に戻し、少し目を伏せた。地を蹴る足の指から、振り抜く腕の指先の流れ

にまで、意識を張り巡らせる。

  ハイジさんについていけば、きっとなにかを見ることができる。ずっと見たいと願って

きた、とてもきらきらしたなにかを。

  東体大の一年生たちは、 を中心に、寛政大に対してこまごまとちょっかいをかけてき

た。

  湖畔の道を走っているときに、横一列に広がって進路妨害をする。集団で走を取り囲む

ように走り、プレッシャーをかける。監督や上級生の目を盗んで、あれこれとからかって

くる。

  走は、さして気にもしなかった。高校時代までの部活動や試合で、そんないやがらせに

は慣れっこになっていた。囲まれたら振りきってまえに出ればいいのだし、行く手を阻ま

れたら対向車線にはみでるようにして追い越せばいい。

  だが、竹青荘の住人のほとんどは、初心者に毛が生えたようなものだ。走るときの駆け

引きを知らない。東体大の一年生たちのいやがらせに、すっかり萎縮し、ペースを乱され

がちになってしまった。

「おとなげないことをする」

  最初は様子を見ていた清瀬も、ついに黙っていられなくなったらしい。夕方のジョッグ

を終えた時点で、抗議をしにいった。

  東体大の一年生ばかりが二十人ほど、土産物屋の駐車場でたむろしている。そこへ清瀬

は、ひるむ素振りもなく近づく。清瀬だけを危ない目に遭わせるわけにはいかない。走た

ちも急いであとを追った。

  ひぐらしの声が、湖畔の空気にわびしく響く。「一人あたり、二人ぶちのめせばいい勘

定だな」とニコチャンが指の骨を鳴らし、ムサが足首をまわしてほぐした。東体大の一年

生たちが、会話をやめて振り向く。駐車場の真ん中で、両校の選手は対峙した。

「練習の邪魔をするのは、やめてもらいたい」

  と清瀬が静かに切りだした。東体大の一団のなかから、 が割って出てきた。

「そちらこそ、言いがかりはやめてください。俺たちが邪魔をしたっていう、証拠でもあ

るんですか」

「ある」

  とユキが言い、ポケットから携帯電話を出して突きつけた。待ち受け画面には、歩道

いっぱいに広がって走る東体大生と、その後ろで窮屈そうにしている走の姿が、しっかり

と映しだされていた。

「あとでフォームの確認ができるように、と思ってね。そうしたら、おもしろいものが撮

れたってわけだ」

「気持ちはわかるが、携帯は置いてこい」

  と、清瀬はユキに注意した。「余計なものをポケットに入れて走ると、それこそフォー

ムのバランスが崩れるぞ」

  問題とすべきなのは、そこなのかなあ、と走は思った。ユキの行為も研究熱心すぎてい

やだし、それに動じず、あくまで走ることしか考えていない清瀬も怖い。 も、あきれた

ようでも居心地が悪そうでもある表情になった。

  清瀬が再び、東体大の一年生たちに向き直る。

「話はそれだけだ。このピンぼけ写真を、きみたちの監督やキャプテンに見せにいくよう

なことは、俺もできるならしたくない。わかってもらえるとうれしいんだが」

「もちろん、わかります」

  と は薄く笑った。「東体大は真剣に練習して、箱根を目指してるんですよ。思いつき

で走ってるひとたちのことなんか、かまっていられません」

「気が合うな」

  清瀬のこめかみに青筋が浮いたのを、走は見た。「ガキくさいいやがらせで、真剣な練

習の邪魔をされるのは、本当に迷惑なものだ」

  清瀬と は正面から激しくにらみあう。ハイジさん、と走は囁き、なだめるようにそっ

と腕に手をかけた。


轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(10)
100%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: