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九、彼方へ(7)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:十三位に浮上したといっても、十二位の新星大からは二十七秒の遅れを取り、十四位の東京学院大とは六秒しか差がない。まだまだ気
(单词翻译:双击或拖选)

  十三位に浮上したといっても、十二位の新星大からは二十七秒の遅れを取り、十四位の

東京学院大とは六秒しか差がない。まだまだ気が抜けないポジションだが、ムサの頑張り

のおかげで、寛政大にも希望が見えてきた。

「ジョータのやつ、おまえの走りを見て、張り切ってたよ」

  キングは、ずっと外にいて赤くなった鼻をこすった。

  よかった。私は、いい走りができたんですね。

  ムサは唇を震わせ、黙ってうなずいた。なにか言えば、言葉とともに涙があふれてきて

しまいそうだった。

  JR小田原駅に降り立った走と清瀬は、箱根登山鉄道に乗り換えるため、構内を歩いて

いた。

「そうか、わかった。お疲れさま」

  清瀬はキングとの会話を終え、携帯電話をぱくりと閉じた。「ムサはすぐ目を覚ました

そうだ。これから二人で、藤沢のホテルに向かうと言っていた」

「そうですか」

  走は安堵した。戸塚中継所で倒れこむムサをテレビで見て、ずっと気が気でなかったの

だ。キングも動転していたらしく、携帯を鳴らしてもしばらく出る気配がなかった。やっ

とキングから報告の電話があり、ムサの無事を知ることができたのだった。

「走るまえに、ジョータに電話してやらなくてよかったんですか」

  切符を買い、改札を通る。清瀬は電光掲示板で、電車の発車時刻を確認した。箱根湯本

まで乗り入れる小田急線が、十分ほどで来るようだった。

「双子はまあ、放っておいても平気だろう。不安があれば、自分から電話してくる性格だ

からな」

  それもそうか、と走は思った。並んで階段を下りる。ホームには、晴れ着を着たひとも

ちらほらといた。

「それよりも問題は、神童の体調だ」

  電車が来るまえにと、清瀬はまた電話をかけはじめた。「ユキさんですか」と走が聞く

と、清瀬はうなずき、電話が通じたのか、

「俺だ」

  と言った。走は横合いから清瀬の携帯に手をのばし、勝手にボタンを操作して手ぶら機

能に切り替えた。雑踏のなかだから、まあいいだろう。首をかしげる清瀬の手をつかみ、

携帯を眼前に捧げるように持ち替えさせる。

「神童の具合はどうだ」

「わからない」

  とユキの声が答えた。「顔色も見えないし、絶対に熱を計らせてくれないし。まあ、よ

くはないんだろうね」

「顔色が見ヽえヽなヽいヽというのは、どういうことだ」

  清瀬は眉を上げた。「ちゃんと神童につきそってるんだろうな」

  ユキは五区を走る神童とともに、小田原中継所にいるはずだ。すぐ近くまで来たのに様

子を見にいけず、清瀬は歯がゆさを感じているようだった。

「神童は隣にいるよ」

  とユキは言った。「でも、鼻より下をタオルで覆って、そのうえにマスクしてるんだ。

しかも風邪用マスクと、花粉用のカラス天狗みたいなマスクの、二段重ね。顔色という

か、顔自体があんまり見えてない。息できてるか、神童」

  神童はどうやら、つきそうユキに風邪を移さないよう、万全の防疫態勢を自分に課して

いるらしい。携帯電話を受け渡す気配がし、

「もしもし」

  と神童の声がした。身代金を要求する誘拐犯みたいに、くぐもって不明瞭な声だ。

「熱は何度あるんだ」

  清瀬が単刀直入に尋ねても、神童は「全然。平熱ですよ」と答えるばかりだ。

「走、そこにいるかな」

  神童に呼びかけられ、走は「はい」と携帯に一歩近づいた。

「できたら途中で、マスクを買っておいてほしいんだ。いましてるやつは、ユキ先輩に預

けちゃうからね」

「平熱なら、そこまで用心深くなる必要はないじゃないか」

  と清瀬が言い、

「なんでハイジさんに聞こえてるの」

  と神童の声が動揺を見せた。手ぶら機能なんです、と走は心のなかで説明し、

「わかりました。買っときますから、安心してください」

  と声に出して答えた。

「神童、できるだけ水分を摂っておけ」

  と清瀬は指示した。「走りながら漏らしたとしても、脱水症状を起こすよりはいい」

「どっちもいやですよ」

  神童は笑い、通話は切れた。

「便利な機能があるもんだな」

  清瀬が自分の携帯を眺める。走は手ぶら機能を解除してやり、

「知らなかったんですか」

  と聞いた。

「まったく気づいてなかった」

  じゃあ、なんのボタンだと思ってたんだろう。走は首をひねりつつ、ホームの売店に走

る。マスクを買って清瀬のもとへ戻ると、ちょうど箱根湯本行きの電車が来たところだっ

た。

  清瀬はうつむきかげんに、電車に乗りこむ。

「無理して走らなくていい、と言えないのがつらいな」

  走はマスクをポケットにしまい、清瀬のあとに黙ってつき従った。

  ジョータにとって、双子の弟のジョージは、まさに魂の片割れだった。

  ジョータとジョージの両親は、息子たちを混同することが決してなかった。双子は幼い

ころ、ジョータがジョージの、ジョージがジョータのふりをして、よく大人たちをから

かった。だが双子の親だけは、ジョータとジョージをまちがえない。

  あれは不思議だった、とジョータは思う。鏡を見ていて、たまに自分ですら、ジョータ

なのかジョージなのかわからなくなることがあったほどなのに。

  双子の両親は、息子たちを比べることも絶対にしなかった。比べようもない、まったく

べつの人間。そして、等しく大切な自分の子どもたちとして、かわいがってくれた。

  親として当然の態度だが、その当然の態度を貫けないひともいるということを、ジョー

タは成長してから知った。子どもたちを比較し、自分の所有物のようにしか考えられない

親もいる。そういうひとが俺たちの親じゃなくてよかった、とジョータは思う。

  似た顔だとしても、宿る魂はちがう。

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