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【帚木篇】頭中将の女性論

时间: 2014-06-16    进入日语论坛
核心提示:◆ 頭中将の女性論  「女の、これはしもと難(なん)つくまじきは、難くもあるかなと、やうやうなむ見たまへ知る。ただうはべ
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◆ 頭中将の女性論
 
 「女の、これはしもと難(なん)つくまじきは、難くもあるかなと、やうやうなむ見たまへ知る。ただうはべばかりの情けに、手、走り書き、折りふしの答(いら)へ心得て、うちしなどばかりは、随分によろしきも多かりと見たまふれど、そも、まことにその方を取り出でむ選びにかならず漏るまじきは、いと難(かた)しや。わが心得たることばかりを、おのがじし心をやりて、人をば落としめなど、かたはらいたきこと多かり。
 
 親など立ち添ひ、もてあがめて、生(お)ひ先こもれる窓の内なるほどは、ただ片かどを聞き伝へて、心を動かすこともあめり。容貌(かたち)をかしくうちおほどき、若やかにて紛るることなきほど、はかなきすさびも、人まねに心を入るることもあるに、おのづから一つゆゑづけて、し出づることもあり。
 
 見る人、後れたる方をば言ひ隠し、さてありぬべき方をばつくろひて、まねび出だすに、『それ、しかあらじ』と、そらにいかがは推し量り思ひくたさむ。まことかと見もてゆくに、見劣りせぬやうは、なくなむあるべき」と、うめきたる気色も恥づかしげなれば、いとなべてはあらねど、我も思し合はすることやあらむ、うちほほ笑みて、「その、片かどもなき人は、あらむや」とのたまへば、「いと、さばかりならむあたりには、誰(たれ)かはすかされ寄りはべらむ。取るかたなく口惜しき際(きは)と、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数(かず)等しくこそはべらめ。人の品(しな)高く生(む)まれぬれば、人にもてかしづかれて、隠るること多く、自然(じねん)にそのけはひこよなかるべし。中の品になむ、人の心々、おのがじしの立てたる趣も見えて、分かるべきことかたがた多かるべき。下のきざみといふ際になれば、殊(こと)に耳たたずかし」とて、いと隈(くま)なげなる気色なるも、ゆかしくて、「その品々やいかに。いづれを三つの品に置きてか分くべき。元の品高く生まれながら、身は沈み、位みじかくて人げなき、また直人(なほびと)の上達部(かんだちめ)などまで、なり上りたる、我は顔にて家の内を飾り、人に劣らじと思へる、そのけぢめをば、いかが分くべき」と問ひたまふほどに、左馬頭(さまのかみ)、藤式部丞(とうしきぶのじよう)、御物忌に籠(こも)らむとて参れる、世の好き者にて物よく言ひ通れるを、中将待ちとりて、この品々をわきまへ定め争ふ。いと聞きにくきこと多かり。
 
(現代語訳)
 
 (頭中将の話) 「女で、これならば良しと難くせのつけようのない人は、めったにいないものだと、だんだんと分かってまいりました。ただ表面だけの風流心で、手紙をさらさらと書き流したり、時節にふさわしい受け答えを心得て、やってのけるぐらいは、身分相応にまあまあできると思う者は多くいると見受けられますが、それも本当にその方面の優れた人を選び出そうとすると、絶対に選に外れないという者は、めったにいないものです。自分の得意なことだけを、それぞれ自慢して、他人をけなしたりなど、はたで聞いていていたたまれないことが多いものです。
 
 親などが付っきりでかわいがり、年も若く深窓に育っているうちは、ただその才能の一端を伝え聞き、関心を寄せることもあるようです。器量がよくおっとりしていて、若々しくて家の雑事に煩わされることのないうちは、ちょっとした芸事なども人まねに一生懸命に稽古することもあるので、自然と一芸をもっともらしく仕上げることもあります。
 
 世話をする人は、劣った点は隠して言わず、まあまあといった点をさらに美化してそれらしく言うので、『それは、そうではあるまい』と、見もしないでどうして当て推量でけなしたりできましょう。ほんとうにそうかと思って付き合っていくうちに、がっかりしないというのは、まずないでしょう」と言って、嘆息しているようすも気遅れするようなので、源氏は、全部が全部ではないがご自身でもなるほどと思い当たることがおありなのだろうか、ちょっと笑みを浮かべて、「その、一つの才能もない女なんているものだろうか」とおっしゃると、「さあ、そんな女の所には、誰がだまされて寄りつきましょうか。何の取柄もなくつまらない部類の女と、素晴らしいと思われるほどに優れた部類の女とは、同じように数少ないでしょう。女が高貴な家に生まれると、家人に大切にかしづかれて、欠点も人目につかない場合も多く、自然とそのようすが格別に思われるのでしょう。中流階級の女性にこそ、それぞれの気質や、めいめいの考え方や趣向も見えて、それぞれにはっきり区別できることが多いでしょう。下層階級の女となると、特に関心もありませんね」と言って、何でも知っているようすであるのも、源氏は興味を惹かれて、「その階級というのは、どのように考えたらよいのか。どれを三つの階級に分け置いたらよいのですか。元の家柄は高貴に生まれていながら、今は落ちぶれて官位も低くて人並みには見えない人、また一方で普通の家の出の人で上達部などにまで出世して、得意顔で邸の中を飾りたて、人に負けまいと思っている人、その違いはどのように区別したらよいのですか」とお尋ねになっているところに、左馬頭や藤式部丞が御物忌みに籠もろうとして参上した。この二人は、世間で評判の好色者で弁舌が達者なので、中将は待ってましたとばかりに、これらの階級の区別の議論を戦わす。たいそう聞きにくい話が多かった。
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