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破戒1-3

时间: 2017-05-31    进入日语论坛
核心提示:       (三) 鷹匠町の下宿近く来た頃には、鉦(かね)の声が遠近(をちこち)の空に響き渡つた。寺々の宵の勤行(おつ
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        (三)
 
 鷹匠町の下宿近く来た頃には、鉦(かね)の声が遠近(をちこち)の空に響き渡つた。寺々の宵の勤行(おつとめ)は始まつたのであらう。丁度下宿の前まで来ると、あたりを警(いまし)める人足の声も聞えて、提灯(ちやうちん)の光に宵闇の道を照し乍ら、一挺(ちやう)の籠が舁がれて出るところであつた。あゝ、大尽が忍んで出るのであらう、と丑松は憐んで、黙然(もくねん)として其処に突立つて見て居るうちに、いよ/\其とは附添の男で知れた。同じ宿に居たとは言ひ乍ら、つひぞ丑松は大日向を見かけたことが無い。唯附添の男ばかりは、よく薬の罎(びん)なぞを提げて、出たり入つたりするところを見かけたのである。その雲を突くやうな大男が、今、尻端折りで、主人を保護したり、人足を指図したりする甲斐々々しさ。穢多の中でも卑賤(いや)しい身分のものと見え、其処に立つて居る丑松を同じ種族(やから)とは夢にも知らないで、妙に人を憚(はゞか)るやうな様子して、一寸会釈(ゑしやく)し乍ら側を通りぬけた。門口に主婦(かみさん)、『御機嫌よう』の声も聞える。見れば下宿の内は何となく騒々しい。人々は激昂したり、憤慨したりして、いづれも聞えよがしに罵つて居る。
『難有(ありがた)うぞんじます――そんなら御気をつけなすつて。』
 とまた主婦は籠の側へ駈寄つて言つた。籠の内の人は何とも答へなかつた。丑松は黙つて立つた。見る/\舁(かつ)がれて出たのである。
『ざまあ見やがれ。』
 これが下宿の人々の最後に揚げた凱歌であつた。
 丑松がすこし蒼(あを)ざめた顔をして、下宿の軒を潜つて入つた時は、未だ人々が長い廊下に群(むらが)つて居た。いづれも感情を制(おさ)へきれないといふ風で、肩を怒らして歩くもあり、板の間を踏み鳴らすもあり、中には塩を掴んで庭に蒔散(まきち)らす弥次馬もある。主婦は燧石(ひうちいし)を取出して、清浄(きよめ)の火と言つて、かち/\音をさせて騒いだ。
 哀憐(あはれみ)、恐怖(おそれ)、千々の思は烈しく丑松の胸中を往来した。病院から追はれ、下宿から追はれ、其残酷な待遇(とりあつかひ)と恥辱(はづかしめ)とをうけて、黙つて舁がれて行く彼(あ)の大尽の運命を考へると、嘸(さぞ)籠の中の人は悲慨(なげき)の血涙(なんだ)に噎(むせ)んだであらう。大日向の運命は軈(やが)てすべての穢多の運命である。思へば他事(ひとごと)では無い。長野の師範校時代から、この飯山に奉職の身となつたまで、よくまあ自分は平気の平左で、普通の人と同じやうな量見で、危いとも恐しいとも思はずに通り越して来たものだ。斯(か)うなると胸に浮ぶは父のことである。父といふのは今、牧夫をして、烏帽子(ゑぼし)ヶ嶽(だけ)の麓(ふもと)に牛を飼つて、隠者のやうな寂しい生涯(しやうがい)を送つて居る。丑松はその西乃入(にしのいり)牧場を思出した。その牧場の番小屋を思出した。
『阿爺(おとつ)さん、阿爺さん。』
 と口の中で呼んで、自分の部屋をあちこち/\と歩いて見た。不図(ふと)父の言葉を思出した。
 はじめて丑松が親の膝下(しつか)を離れる時、父は一人息子の前途を深く案じるといふ風で、さま/″\な物語をして聞かせたのであつた。其時だ――一族の祖先のことも言ひ聞かせたのは。東海道の沿岸に住む多くの穢多の種族のやうに、朝鮮人、支那人、露西亜(ロシア)人、または名も知らない島々から漂着したり帰化したりした異邦人の末とは違ひ、その血統は古(むかし)の武士の落人(おちうど)から伝(つたは)つたもの、貧苦こそすれ、罪悪の為に穢れたやうな家族ではないと言ひ聞かせた。父はまた添付(つけた)して、世に出て身を立てる穢多の子の秘訣――唯一つの希望(のぞみ)、唯一つの方法(てだて)、それは身の素性を隠すより外に無い、『たとへいかなる目を見ようと、いかなる人に邂逅(めぐりあ)はうと決して其とは自白(うちあ)けるな、一旦の憤怒(いかり)悲哀(かなしみ)に是(この)戒(いましめ)を忘れたら、其時こそ社会(よのなか)から捨てられたものと思へ。』斯う父は教へたのである。
 一生の秘訣とは斯の通り簡単なものであつた。『隠せ。』――戒はこの一語(ひとこと)で尽きた。しかし其頃はまだ無我夢中、『阿爺(おやぢ)が何を言ふか』位に聞流して、唯もう勉強が出来るといふ嬉しさに家を飛出したのであつた。楽しい空想の時代は父の戒も忘れ勝ちに過ぎた。急に丑松は少年(こども)から大人に近(ちかづ)いたのである。急に自分のことが解つて来たのである。まあ、面白い隣の家から面白くない自分の家へ移つたやうに感ずるのである。今は自分から隠さうと思ふやうになつた。
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