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殿さまの茶わん(2)

时间: 2022-11-28    进入日语论坛
核心提示:けれど、殿とのさまは、毎日まいにちお食事しょくじのときに茶ちゃわんをごらんになると、なんということなく、顔色かおいろが曇
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けれど、殿とのさまは、毎日まいにち食事しょくじのときにちゃわんをごらんになると、なんということなく、顔色かおいろくもるのでごさいました。
あるとき、殿とのさまは山国やまぐに旅行りょこうなされました。その地方ちほうには、殿とのさまのお宿やどをするいい宿屋やどやもありませんでしたから、百姓家しょうやにおまりなされました。
しょうは、お世辞せじのないかわりに、まことにしんせつでありました。殿とのさまはどんなにそれをこころからおよろこびなされたかしれません。いくらさしあげたいとおもっても、山国やまぐに不便ふべんなところでありましたから、さしあげるものもありませんでしたけれど、殿とのさまは、百しょう真心まごころをうれしくおもわれ、そして、みんなのべるものをよろこんでおべになりました。
季節きせつは、もうあきすえさむうございましたから、あついおしる身体からだをあたためて、たいへんうもうございましたが、ちゃわんはあついから、けっしてけるようなことがありませんでした。
殿とのさまは、このとき、ご自分じぶん生活せいかつをなんというわずらわしいことかとおもわれました。いくらかるくたって、また薄手うすでであったとて、ちゃわんにたいしたわりのあるはずがない。それをかる薄手うすで上等じょうとうなものとしてあり、それを使つかわなければならぬということは、なんといううるさいばかげたことかとおもわれました。
殿とのさまは、百しょうのおぜんせてあるちゃわんをりあげて、つくづくごらんになっていました。
「このちゃわんは、なんというものがつくったのだ。」ともうされました。
しょうは、まことにおそりました。じつに粗末そまつちゃわんでありましたから、殿とのさまにたいしてご無礼ぶれいをしたと、あたまげておわびをもうしあげました。
「まことに粗末そまつちゃわんをおつけもうしまして、もうしわけはありません。いつであったか、まちましたときに、安物やすものってまいりましたのでございます。このたび不意ふい殿とのさまにおいでをねがって、このうえのない光栄こうえいにぞんじましたが、まちまでちゃわんをもとめてきますひまがなかったのでございます。」と、正直しょうじきな百しょうはいいました。
「なにをいうのだ、おれは、おまえたちのしんせつにしてくれるのを、このうえなくうれしくおもっている。いまだかつて、こんなよろこばしくおもったことはない。毎日まいにちおれちゃわんにくるしんでいた。そして、こんな調法ちょうほうないいちゃわんを使つかったことはない。それで、だれがこのちゃわんをつくったかおまえがっていたなら、ききたいとおもったのだ。」と、殿とのさまはいわれました。
「だれがつくりましたかぞんじません。そんなしなは、もない職人しょくにんいたのでございます。もとより殿とのさまなどに、自分じぶんいたちゃわんがご使用しようされるなどということは、ゆめにもおもわなかったでございましょう。」と、百しょうおそってもうしあげました。
「それは、そうであろうが、なかなか感心かんしん人間にんげんだ。ほどよいほどに、ちゃわんをつくっている。ちゃわんには、あつちゃや、しるれるということをそのものは心得こころえている。だから、使つかうものが、こうしてあつちゃや、しる安心あんしんしてべることができる。たとえ、世間せけんにいくらまえのこえた陶器師とうきしでも、そのしんせつなこころがけがなかったら、なんのやくにもたたない。」と、殿とのさまはもうされました。
殿とのさまは、旅行りょこうえて、また、御殿ごてんにおかえりなさいました。お役人やくにんらがうやうやしくおむかえもうしました。殿とのさまは、百しょう生活せいかつがいかにも簡単かんたんで、のんきで、お世辞せじこそいわないが、しんせつであったのがにしみておられまして、それをおわすれになることがありませんでした。
食事しょくじのときになりました。すると、ぜんうえには、れいかるい、薄手うすでちゃわんがっていました。それをごらんになると、たちまち殿とのさまの顔色かおいろくもりました。また、今日きょうからあつおもいをしなければならぬかと、おもわれたからであります。
ある殿とのさまは、有名ゆうめい陶器師とうきし御殿ごてんへおびになりました。陶器店とうきてん主人しゅじんは、いつかおちゃわんをつくってたてまつったことがあったので、おほめくださるのではないかと、内心ないしんよろこびながら参上さんじょういたしますと、殿とのさまは、言葉静ことばしずかに、
「おまえは、陶器とうき名人めいじんであるが、いくら上手じょうずいても、しんせつしんがないと、なんのやくにもたたない。おれは、おまえのつくったちゃわんで、毎日まいにちくるしいおもいをしている。」とさとされました。
陶器師とうきしは、おそって御殿ごてんがりました。それから、その有名ゆうめい陶器師とうきしは、厚手あつでちゃわんをつく普通ふつう職人しょくにんになったということです。
 
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