こんな話を想像してみましょう。ある中学生がお父さんやお母さんから毎月もらうお小遣いが、今までの②000円から一気に②0万円になったらどうするでしょうか。彼の欲望はとどまるところを知らず、前から欲しいと思っていたものを全部手に入れようと、お小遣いを持ってお店に飛んでいくに違いありません。
しかし、地球上の子どもたちが全員、②0万円もお小遣いをもらって、好きなものを買うとしましょう。そんなことは可能でしょうか。欲望が無限にあるのは、実は大人だって同じです。大人も買いたいものを何でも買うとしたらどうでしょうか。でも、そんなことはしようと思ってもできっこない話なのです。なぜかというと、地球上に存在する全工場をフル稼働しても、たくさんのものを限りなくつくることはできません。人間の技術はまだそこまで進んではいません。
労働者の数だって限られています。機械設備も限られています。農産物を作るにも、農地には限りがあります。みんなが大きな家に住みたくても住めないのは、土地が足りないというだけでなく、そんなことをすればたちまち、地球上の森林から木が切り出されて、あっという間に地球は丸裸になってしまうからです。
つまり、最も大事なことは、私たちの欲望は無限だけれど、工場や機械設備、労働力、森林、農地、住宅地、石油など、商品を生産するための経済資源は有限だということです。経済資源は有限だから、私たちの欲望のうち、つまり欲しいもののうち、一部分しか手に入られないのです。別の言い方をすると、経済資源が有限なので生産されるものも有限ということになります。だから、私たちの手に入る「所得」も有限。すなわち、商品を買うための予算も有限ということになります。
このことを説明するのに、経済学では「稀少性」という言葉を使います。「稀少性」とは、人間の欲望をすべて満足させるだけの経済資源は地球上には存在しないという厳しい現実を示す実に簡潔な言葉です。
稀少な経済資源を使って、人間の生活をどうやって豊かにすることができるのか。このことこそ、経済学の最も大きな目標です。
1、「こんな話」とは、どんな内容の話か。
①人間の欲望は宇宙と同じだという話。
②人間は欲望のかたまりであるという話。
③小遣いをたくさんもらいすぎて困った話。
④中学生の①カ月にもらう小遣いが増える話。
2、「お店に飛んでいく」とあるが、どうするつもりか。
①欲しいものを全部買うつもりだ。
②お店のものを全部買うつもりだ。
③友達より早く行くつもりだ。
④大人より早く行くつもりだ。
3、「そんなことはしようと思ってもできっこない」とは、どのような意味か。
①②0万円で欲しい物を何でも買うことができるわけがない。
②大人でも欲しい物が何でも買えるということはありえない。
③大人は欲しい物を自由に買うお金をもらうわけにはいかない。
④子どもならできるが、大人は②0万円では欲しい物が買えない。
4、「人間の技術はまだそこまで進んではいません」とあるが「そこまで」とは何を指しているか。
①人間の欲望を抑えること。
②ものを限りなく作り出すこと。
③ものを早く安く作り出すこと。
④世界中の工場を一斉に動かすこと。
5、「みんなが大きな家に住みたくても住めない」とあるが、それはなぜか。
①土地が足りない上に、家を建てる労働者の数や機械設備も十分にはないから。
②土地が足りないというよりむしろ、家を建てる木そのものが不足しているから。
③土地が足りない上に、みんなが大きな家を建てたら、材料の木もなくなるから。
④土地が足りないというよりむしろ、農産物を作る農地をつぶすことになるから。
6、筆者によると、経済学とはどのような学問か。
①有限な経済資源を無限にして人間の欲望を満足させる方法を考える学問。
②人間の欲望が有限であることを「稀少性」という見方から考える学問。
③限られた経済資源を有効に使って生活を豊かにする方法を考える学問。
④限られた資源から何を優先させて生産したら経済的かを考える学問。
7、「このこと」とは何か。
①経済資源が限られているから、物を作り出す工場や農地も不足しているということ。
②経済資源が限られているから、欲しいものをすべて手には入れることはできないということ。
③人間の欲望は限られているから、欲しい物をすべて手には入れようとは思わないということ。
④人間の欲望は限られているから、物を作り出す工場や農地も無限に必要ではないということ。