それに対して、ホテルの客の迎え方はその逆、つまりクールな受け身スタイルである。フロントは、入り口から人が入って近づいて来ても、その人が何らかの意思表示をする前に、自分の方から「いらっしゃいませ」などとは言わない。相手が何らかの意思表示をした瞬間、その相手が初めて「客」となるわけであり、それまでは街の通行人と同じということなのだ。ホテルは部屋の前までが街みたいなものだから、入口は外と内を分ける玄関とは少し違うニュアンスをもっており、客が鍵を持って自ら管理する。館内で常連客に会釈をするのはいいが、勝手に名前を呼んだりはしない。客のプライバシーを侵害するのを防ぐためだ。だが、相手が何らかの要求を示したら、機敏に対応するセンスは不可欠であり、相手との距離の取り方が、旅館とは正反対の流儀である。
このように、まず自分の側から表情を表さず、相手の表情の変化に応じて態度を整えるホテルのあり方が、旅館に比べてクールであるのはたしかだ。しかし、熱心さが評価される日本という環境は、( ① )。私なども、ホテルの自動ドアを入ったとたんボーイに「いらっしゃいませ、お泊りでございますか」とバッグを取られ、「いや、バーへちょっと...」と言ったとたん、すっと表情を消されて不気味さを感じるケースがたびたびある。したがって、クールなサービスを日本のホテルで体験しようとしても、まだまだその領域が成立しているとは言いがたく、ホットなサービスを求める客に応じて、ホテルもまたホットなサービスに精を出す傾向が生きているらしい。
1、「困る」のはなぜか。
①昔の旅館に比べ、現代の旅館のサービスはよくないと感じるから。
②現代の旅館より昔の旅籠のほうがおもしろそうで、泊まってみたいから。
③勢揃いで出迎えられると、物々しく入りにくいから。
④勢揃いで出迎えられると、現代の旅館に合わない気がするから。
2、「勝手に名前を呼んだりしない」と同じ意味はどれか。
①本当の名前を呼んだりはしない。
②客の名前を間違えて呼んだりはしない。
③みんなに聞こえるように名前を呼ぶことはしない。
④軽々しく名前を呼ぶことはしない。
3、ホテルの従業員に当てはまることはどれか。
①客にいつも注意を払って、客の要求に気がづいて対応できなければならない。
②客の要求はいつあるか分からないが、それを予測するセンスは必要ではない。
③客の要求はいつもあるので、それに気が付くセンスはなくてもいい。
④客から何か要求されて、センスがないときは他の人に頼まなければならない。
4、( ① )に入る適当な言葉はどれか。
①非常にスマートにクールなサービスを成り立たせやすいようだ。
②なかなかスマートにクールなサービスを成り立たせにくいようだ。
③やっと積極的にクールなサービスを成り立たせてきたようだ。
④すでに積極的にクールなサービスを成り立たせているようだ。