私たちの感覚を目覚めさせる第一歩は、子供の時に持っていた観察の能力を再発見することである。そうするためには、自分がこれから何を見、何を感じようとしているのかを、それが実際に起こる前に予想のをやめる必要がある。そうした予想は、私たちの感じる能力を妨げるのだ。
一例をあげると、ある肌寒い夜、私は何人かの学生をつれて山にハイキングに行った。私は彼らに、これから山の小川を渡らなければならないと言った。彼らは、さぞ冷たいだろうと不満を言い始めた。私たちは小川にたどり着き、学生たちはいやひやながらも勢いよく足を踏み入れた。私が温泉に入らせたことに彼らが気づいた時、学生たちはほとんど膝まで小川に浸かっていた。あとで学生たちはみな、最初は冷たい水を感じたと言った。
私たちはまた、より多くのものを見入るために役立つ「しるし」に気づく必要があるかつて私はハイキングに出かけて、ストーキング・ウルフという名前のインディアンの友人から6メートルはど離れて歩いていた。私たちが大きな松の木の下を通った時、ストーキング・ウルフが振り向いて、「そいつの邪魔をしないように」と言った。驚いて、私はそこらじゅうを見回した。私が見落としていたシカかキツネか、それとも何か他の動物がいるのか。最後に私が木の枝をのぞき込むと、私たちから③メートルと離れていないところに美しいフクロウの姿が見えた。ストーキング・ウルフには上を見なくてもそこにフクロウがいることが分かっていたので、私はびっくりした。どうしてそこにフクロウがいるのが分かったのかと尋ねると、「ハツカネズミに聞きなさい」と彼は答えた。足元に目を向けることで、恐ろしい敵であるフクロウから逃げたハツカネズミの足跡が、彼には見えていたのだ。
今度散歩をする時は、どこであろうと、しっかり目を開けていなさい。あらゆる光景・音・感覚を意識しなさい。これまで気づかなかった多くの、美しく興味深いものに驚くことだろう。
1、「自分のまわりの世界を見る技術をもう一度身につける」ための方法として、本文の内容と合わないものはどれか。
①どこであろうとあらゆる光景・音・感覚を意識する。
②今までに身につけてきた悪い習慣をやめる。
③新しい考えや新しい状況に刺激を受けにくくする練習をする。
④これから見たり感じたりすることについて、予想するのをやめる。
2、「最初は冷たい水を感じた」のはなぜか。
①予想する練習をしたおかげで、ありのままを感じる能力が鋭くなったから。
②使っているうちに温かく感じるようになったが、最初は冷たい水だったから。
③冷たいだろうと予想していた通り、実際の小川も冷たい水だったから。
④冷たいだろうと予想をしたため、ありのままを感じる能力が妨げられてしまったから。
3、「感覚を目覚めさせる」方法として最も適切なものはどれか。
①子どものときから持っていた悪い習慣を一つ一つ直してみる。
②自分がこれから何を見たり感じようとしているのか、予想してみる。
③肌寒い夜、山の古川に冷たいだろうと思いながら入ってみる。
④自分の周りの世界を意識的に注意深く観察してみる。
4、次のうち、本文中に述べられていない内容のものを一つ選びなさい。
①子どもの時よりも、大人になってからのほうがはるかに、多くの物事を注意深く見ている。
②大人になると、新しい考えや新しい状況に刺激を受けにくくなる。
③大人になると、自分の周りにある物事の驚異が目に入らなくなる。
④より多くのものを見るために必要な「しるし」に気づく必要がある。