その意味では、催し物としては大成功と言っていいだろう。東海3県以外で知名度が今一つで、入場者に占める3県居住者の比率が高かったことも確かだが、これも、地域密着と前向きに見ることもできる。ただ、時間が経過するととtもに、東京を中心とした関東からの来場者が増えたように、全国的な広がりも見せていた。
万博はその発症時から最近までは、その時代、時代の文化や科学技術を華々しく展示するという性格を持っている。20世紀の万博はそうしたものであった。ただ、21世紀に入ったいま、人類にとって持続可能な発展が最大の課題となっている。科学技術が向くべき方向もおのずと変わってきた。
愛・地球博は「自然の叡智」がメーンテーマで、サブテーマにも「循環型社会」を揚げているように、新しい型の万博を目指していた。環境をテーマにした万博としては、00年のハノーバー万博(ドイツ)があったが、従来型の殻を破ることができなかっただけに、愛・地球博が展示のみならず、施設作りや運営において、環境や自然への配慮がなされているのかが問われた。入場者に環境問題の重要性をどれだけ印象付けることができるかも注目されていた。
この点でも合格点に達したと言っていいだろう。当初、主会場に想定されていた瀬戸市の海上の森でオオタカの営巣地が発見され、急遽決まった、愛知青少年公園(長久手町)では、自然に手を加えることは最小限にとどめられた。
ごみの分別収集やリサイクルの徹底、生ごみによる発電など、環境に配慮した運営が行われた。来場者へのアンケートでも40%近い人が環境や自然を考えるきっかけになったと答えている。
問題はこうしたことをどのように継承していくのかである。
第一には、万博で展示されたり、使われた循環型社会作りに役立つ各種の技術やノウハウを、国内のみならず、海外でも実用化していくことである、省エネ、省資源が地球的課題となっているいま、先進国はいうまでもなく、途上国も今回展示された技術に注目してほしい。
第二には、10年の上海万博でも今回の路線を継承してもらいたい。上海万博は中国にとって日本で言えば大阪万博のような意味合いを持っている。経済発展の成果を内外に誇示するということだ。しかし、それだけでは、地球規模での持続的な発展はおぼつかない。中国経済を安定成長に持っていくためにも、環境重視路線は不可欠だ。隣国としてアドバイスすることは悪いことではない。
祭りとしての万博を成功と言わせるためにもこの後が大事だ。
(「愛・地球博閉幕次は循環型世界の実現だ」2005年9月26日付毎日新聞「社説」による)
1、「東海3県以外で知名度が今一つで、入場者に占める3県居住者の比率が高かったことも確かだが、これも、地域密着と前向きに見ることもできる」とはどういう意味か。
①東海三県以外の県と関係を深めるにあたって博覧会が大きな役割を果たした。
②東海三県の居住者間の関係を深めるにあたって博覧会が大きな役割を果たした。
③東海三県の居住者の人口密度を高めるにあたって博覧会が大きな役割を果たした。
④東海三県以外の県からの移住率を高めるにあたって博覧会が大きな役割を果たした。
2、「この点」は何を指しているか。
①ハノーバー万博同様、展示会のみを準備してどれだけ人々を感動させるかという点。
②ハノーバー万博同様、従来型の殻を破ることができなかったという点。
③愛知万博の施設作りや運営を通して、人々にどれだけ環境問題の重要性を訴えることができるかという点。
④愛知万博の施設作りや運営を通して、人々にどれだけ人口問題の重要性を訴えることができるかという点。
3、「大阪万博のような意味合いを持っている」とはどういう意味か。
①上海万博を通して、中国の経済的な力を誇示することができる。
②上海万博を通して、経済的な面での大阪との協力関係を築くことができる。
③上海万博を通して、中国の壮大な自然環境を自慢することができる。
④上海万博を通して、中国が万博を開くのに安全なコクであるという事を自慢できる。
4、筆者が最も重要だと思っていることは何か。
①アジアの発展のために中国経済を安定成長に持っていかせること。
②愛知万博が高利益を上げることができたノウハウを諸外国に伝えること。
③愛知万博が祭りとして成功したコツを諸外国に伝えること。
④愛知万博に導入された環境問題解決に役に立つ技術などが、諸外国でも実用化されること。