プロボクサーなども試合直前には、ひどい恐怖にとらわれるという。「オレは強い。世界一強い」とひたすら自己暗示をかけ続けることでどうにか耐えるらしい。ゴルフのある女子プロは、パターではボールが必ず穴に入ると信じて打つことが大事で、入ればいいなと思っているようでは、絶対に入らないと語っていた。
客観的に自己を見つめ分析するなどということをしていたら、まともな人間は早晩、自身を喪失し潰れてしまう。スポーツに限らず、組織の指導者の最大任務は率いる人々の志気を高め、勇気と楽観を与えることなのだと思う。そして、この勇気と楽観こそが、人間の能力を開花させる絶対条件なのである。
(藤原正彦「古風堂々数学者」より)
1、「一抹の不安を感じないわけにいかなかった」とあるが、どうして筆者は監督の発言に不安を感じたのか。
①一勝一敗引き分けというのは妥当な目標ではないから。
②選手たちが自信をなくし、戦う意欲を失ってしまうから。
③選手たちの志気を高め、勇気と楽観を与えるような言葉ではないから。
④選手たちの心に一敗ぐらいしてもいいという気持ちが生まれるから。
2、筆者がこの文章で取り上げた中心テーマは何か。
①勇気と楽観の大切さ。
②ワールドカップの予選リーグ
③組織の指導者の役割
④人間の能力を開花させる条件